2、彼は旅立った
「僕は行かないといけないんだ」
「どうぞご自由に」
15歳くらいの頃、深刻そうな顔で彼はそんな事を言い始めた。
妄執に近い何かが瞳に見えた。何に憑かれているかは私の知った事ではない。
彼は私に何を求めているかなど私にはどうでもいい。
「君はいつだってそうだよね」
あなたに触れるの面倒くさいもの。ヤンデレを感じるというか。
見ているだけで触ったら重くて大変になりそうだと感じるし、私には私のしたい事があるから。
あなたみたいな重たい人を抱え込みたくないわ。
少しは寿命が伸ばせる魔女でも時間は限られているの。
むしろやりたい事が出来る手段がある分、どんどん時間がなくなっていくというか。
物語のお姫様みたいに、ただ王子様を待っているだけでいい何もできない子供なんていやだわ。
本物のお姫様は色々人付き合いで内部を統制したりで忙しい。
田舎の娘、商家の娘、どこの娘さんもそれぞれにやる事があって忙しい。
遊んでいる余裕なんてどこにあるのだろう。
「狩人のおじさんくらいのイケメンになってから出直してください」
この果ての魔女の屋敷に訪れる数少ない人物。
短く切りそろえられた髭や鍛えられた体がとても魅力的だ。
動物の脂の臭いがワイルドさを強調してとてもいい。
仕事に誇りを持っている男性、その渋さが立ち居振る舞いに表れていていいの。
身なりも整えられていて、目鼻立ちもとてもよく、浮ついたところがない!
寡黙さの中に優しさがあって! ごつごつした手で撫でてくれると何だか落ち着くの!
おばあちゃんに勧められてお酒を飲むと、時折少し悲しそうな表情をしているのがミステリアス!
おばあちゃんも一緒に少し悲しそうな表情をしているから何か事情を知っているのかもしれない。
男はこう陰があるくらいがいいの! 陽気過ぎたら陽気に負けて疲れちゃうから!
「……お前って本当におじさん趣味だよな」
陰って言ってもじめじめしているのは良くない。彼にはキノコが生えそうなジメジメを感じるから嫌だ。
闇はあってもいいが、病みは関わると面倒くさい。見る分ならどちらも楽しいのだけど。
過去に何か傷を負ってそれを抱え込み、もう二度と傷を作らない様に慎重に行動する人が好み。
傷を知った分だけ人は強くなれるなんて臭い言葉があるけれど、傷を知らない青臭い理想論って食えたもんじゃないし。
……初代様と話しているとこういう方面に頭が行ってしまう。
こういうのを毒されているというのだろうか?