最終話、魔女は死に呪いは終わる
彼の瞳はどこまでも私に執着していた。
火に焼かれる私を見て初めは憎しみすら感じる睨みを利かせていたが、徐々に泣きそうな顔に変わり、最後には泣いた。
なお私は屋敷に本体を安置しているので、この体が焼かれようが何しようが問題ない。死ぬつもりで作った体だから痛覚もつけていないし、痛くも痒くもない。
ぶっちゃけ死んだふりである。
彼も死んだと思えば私に対する執着も落ち着く事だろう。執着の矛先は死んで天国だかに向かう私だ。
代わりのモノもいるのだ。これで全ては丸く納まるに違いない。
まさか殺されるとは思っていなかったが、目の前で自殺するという手間が省けたのでよし。
そして霊体になった事で見える様になった。
「初めまして。お母さん」
黒い髪は艶やかに。
白い肌には黒い紋様が。
青い瞳は憎しみに揺れ。
あの子の背後で母さんは周囲の人達を睨み佇んでいた。
私は母さんに何があったかは知らない。
魔女の修行を途中で放り出し、外の世界に自由を求めたその先で何があったかなんてどうでもいい。
赤ん坊であった私をおばあちゃんの元に置いて、どっかに行った無責任なヤツなんて知らない。
ただ私に迷惑をかけてくれるな。妹にも迷惑をかけるな。
親は親でしかない。親と子は近い存在であれど、子は親の一部ではない。
自分のしたい事は自分で決める。自分の責任を人に押し付けるな。
「さよなら。お母さん」
もう二度と会わないけど。




