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1、ベラドンナ

 その子は私が8歳前後の頃この魔女の家にやってきた。

 亡くなった母親の死骸に縋り付き、彼は泣き崩れていた。

 おばあちゃんはそんな彼の頭を彼が泣き止むまで撫でていた。


 彼は酷くわがままで泣き虫で何もできない子だった。

 彼がワガママを言う度私が「何でも人にやってもらっていたんだね」と言えば顔を真っ赤にして怒っていた。


 おばあちゃんの教育方針は「最低限は面倒をみるが後はその働きに応じて分け前を増やす」というモノだった。

 私は幼い頃は積極的におばあちゃんの手伝いをして自分の分け前を増やしていた。

 早く魔法を覚えたいという目論見も多少あった。


 手伝いの最中よく口頭で問題を出された。

 間違えると正答を教えて「まだまだだね」と頭を撫でられた。

 彼も気づくとおばあちゃんに問題を出されていた。


 おばあちゃんの手伝いをし、しばらくして魔法を習う様になった。

 私は彼があまり好きではなかったので、その頃になってもろくに話した記憶がない。

 そんなある時おばあちゃんが私に鏡を見せてくれた。


 鏡の縁の宝石におばあちゃんが触れるとそこには若い女の人の顔が映っていた。

 鏡に映った若い女の人、おばあちゃんはその人を初代様と呼んでいた。

 私を見ると初代様はクスッと笑いながら手を振った。


「次代の魔女、あなたのお名前を教えて?」


「ベラドンナと申します。初代様」




 おばあちゃんは私が12歳になった頃体調をよく崩す様になった。

 おばあちゃんの薬を作る時、私は初代様に色々聞きながら調合する様になった。

 初代様は何でも知っている。鏡に見本を映し、分かりにくい部分はゆっくりとやってみせる。


 おばあちゃんがあの時初代様に会わせたのは自分の体調が思わしくないのに気づいていたからかもしれない。

 おばあちゃんはたまに魘されて「まだ早い……あの子みたくなってしまうのでは」と言う。

 起きた時に聞くとすっとぼけてはぐらかされて応えてはくれない。何を隠しているのだろう。


 あいつはこの頃こそこそと初代様の前に行く。

 初代様はきれいだから惚れたのかもしれない。

 鏡の中の初代様は初代様の魔法で作られた記憶でしかないのに。


 尋ねれば何でも教えてくれるけれど、初代様は記録なのだ。

 鏡は新しいモノは作れない。歴代の魔女様が自身の記録を刻んだけれどそれだけだ。

 追加で色々な機能を足しているので、遊ぼうと思えば遊べるがそういう方向で使うものではないとおばあちゃんに言われていた。


 何でも過去にずっと遊んで身を持ち崩した弟子さんがいたらしい。

 半端に知識を持ち、いたずらをしかけ、世相までも崩し、魔女のイメージを悪化させたという。

 

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ドロップアウト転生。~俺はもう後悔したくない。~


サモナーさんはギルドに入ってもボッチでした

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