心砕けろよ!
男→安藤昌は槍を片手で呆然と立ちつくしていた。
何気ない一言ではじまった狩り。
数日前追いかけられた獣相手に。
正直な話無理だ。
男は心の中でそう思っていた。
ダメなら美人のエルフから獲物を分けもらうため口説くとか。
「でも、ここは異世界だから、もしかしたらイケるかもしれない」
男の無駄な自身がやる気をかきたてる。
「そう、ここは異世界。
ダメダメだったあの場所とはなにか違うかも」
気持ちが高まると体もそれを呼応するかのように槍をブンブン回してみた。
第三者からみたら恥ずかしい光景。
男は連れてこられた方向とは逆の方向へと歩みだした。
サーベルタイガーが現れるまでゆっくりと周りを見渡す。
木がぽつりぽつりと生えている。ただ広い草原。
遠くから誰かが歩いてくる。
特徴的なとんがった耳。胸は…数日前で会った巨乳の女生とは違うが服からでも分かる豊満である。
緊張が走る。
思わず手が震えてくる。
近づくにつれだんだんと心臓が飛び出るほど鼓動が激しくなる。
「やばい…何を話していいものか」
男は目を血走って美女をガン見する。舐めるのように。
全身緑の服装で身を包んでいる。
男のほうはよれよれ汚い服装。
はぁはぁ。
もうお互い顔が分かるぐらいの距離まで近づいた。
「今日は天気いいですね」
ぼそっと声をかけた男。
しばしの間が続く。
手の震えが激しくなってくる。
心臓の鼓動がさらに加速する。
「え?」
美女は声が聞こえないのか手を耳のほうへあて、聞こえないジェスチャーする。
やばい、やばい。
男はおどおどするしかない。
これ以上のネタがない。
女性はほめるとうれしがる生き物。
「おっぱい大きいですね」
男の一言が終わるよりはやく美女の平手打ちのほうが早かった。