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脳筋お父さんと、食肉採取

 そういえば、お父さんのステータスボードを見せて貰った。冒険者活動を再開するに当たって、自分の力を確認したかったらしい。


 フレイド ボルトス(30)

 人族   準爵

 レベル 121

HP 3011 MP 507 力 821 精神 298

 敏捷 627 幸運 57


 特殊スキル

 強人化


 アクティブスキル

 火魔法 身体強化 投擲 解体 瞬脚 縮地

 威圧 魔法防御壁 気配隠蔽 忍び足 追跡

 立体起動 火炎纏


 パッシブスキル

 状態異常耐性 物理攻撃耐性 怪力 気配感知

 超速回避 必中 体術 槍術 剣術 大剣術

 盾術


 戦神ゴードンの祝福


 称号

 限界を越えし者 ボルドーの英雄


 凄いの一言。そして思った。脳筋。

「凄いね!お父さん」

「そうだぞ、レベル100超えはなかなかいないんだぞ!」

「でも、何で祝福なの?」

「いや、普通はそうだからな?加護は珍しいんだから」

「へえ…そうなんだ」

「やはり、力等が落ちているな。前はもう少し高かった気がする」

 充分な気がするけど。


 学校は、初等学校が8歳から2年間。中等学校が10歳から2年間。高等学校が12歳から3年間ある。初等学校は、授業料も安いので、平民でも入る者が多い。中等学校からは試験がある。平民でもある程度の財力がある者が入る。高等学校は王都に1校しかなく、財力だけでなく、学力も必要だ。別に全てに入らなければならない訳ではなく、試験に受かれば初等学校は入らなくても大丈夫なのだ。


 馬車から飛び出してきたのはこの街にある初等学校に通う次男のマティスだ。大きな街なので、町外れに立つ領主の館から通うのには遠いので、寮で暮らしている。

「父さん、母さん、ただいまー!あ!アレックス、久しぶりだなっ!あと、ルーナ?大きくなったなー」

「あの…私」

「あれ?覚えてない?んー、あの時はアレックスとばっかり遊んでいたからなー。ルーナはマリー伯母さんにずっと抱っこされてたし」

「次男のマティスだ。マティス、ルーナは妹になったからな?」

「へー。よろしく!ね、フレイド伯父さん!後で剣術を見てよ。俺、強くなったんだぜ!」

「マティスはまた、そんな喋り方をして。やめて頂戴」

「だって、友達みんなこんな喋り方だし。お上品とか苦手」

「…全く。来年から中等学校に通うのに、勉強は大丈夫なのか?」

「中等学校上がらなきゃだめなの?俺、この街から離れるの嫌だよ」

「高等学校までは期待していない。が、中等学校には行くんだ」

「だってフレイド伯父さんだって初等学校しか行ってないんだろ?跡継ぎには兄ちゃんがいるし。俺、冒険者になりたいんだよ!」

「試験を受けなさい、マティス。お母さんも許しません」

「ちぇっ…ねえ、ご飯まだ?」

「なあ、マティスはギルドに登録しているのか?パーティー組んで依頼やらない?」

「いいけど、ランクは?」

「この間まで怪我してたから、仕事してなかったんだ。だからHだよ。ルーナに先越されちゃったんだ」

「え?ルーナも戦えるの?」

「ルーナは魔法の天才なんだ。それに従魔もいる」

「え?これ犬じゃないの?すげーな。魔法使える奴がいる方がバランスもいいしな。俺はFランクだからまだ大丈夫だぜ」

 2ランク以上離れると、パーティーが組めないのだ。

「週に三日間家庭教師が来る。マティス、お前も勉強に参加するんだ。それ以外は好きにしていい」

「折角の夏休みなのにマジかよ」

「試験まであと半年しかないからな」

 この世界では、始まりは春ではない。12月には卒業なので、新年からのスタートなのだ。因みに夏休みは2カ月位ある。

「因みに今日だ。四刻半には来るから、学校の教科書を出しておくんだぞ」

 一刻は二時間で、大体の人が一刻で起きて九刻で眠る。ルーナは子供なので、八刻には眠ってしまう。刻を知るのは鐘の音で、時計は貴族と、鐘の塔の番人位しか持っていない。

 次の日にはギルドに行けると思ってたけど、思ってたよりもマティスの勉強が出来なかったので、今日はお母様が付きっきりで勉強を教えるらしい。

 びっくりしたのは、初等学校で教える算数は、足し算と引き算だけで、ルーナにしてみれば、躓く意味が分からない。日本の教育舐めんなって所だろうか?

 中等学校が、かけ算と割り算。高等学校がそれを複合した四則演算で、割り算を前世で習わなかったルーナだけど、かけ算は暗記していたので、すぐに理解出来た。

 式に混ざっていても、かけ算や割り算を優先すればいいし、かっこ閉じすらない。もう、算数に関しては余裕だ。魔法も大丈夫だし、教養や歴史も何とかなりそう。

 不安なのは剣術だけど、向き不向きがあるので、試験といっても実力を見るだけのものらしい。

 そんな訳で今日は食肉採取の仕事だ。てっきりホーンラビットを狩るのかと思ってたけど、ボアを狙うらしい。

「お兄ちゃん、腕は大丈夫なの?」

「心配ない。力も随分戻ったし、ボアなら父さん達と狩った事があるから」

 途中出て来たゴブリンは、魔石だけを取って燃やした。ゾンビ化するゴブリンは、必ず燃やすか埋めるかしないといけない。モモの火魔法はかなりレベルが高く、あっという間に燃やしてくれる。

 ヒスイも、数が多いと木魔法で拘束してくれるし、たまに出て来るホーンラビットは、エアカッターで首をはねてくれる。脚を持って水を強制的に抜くイメージで、一気に血抜きをして、角は安いけど一応素材なので、それを取ったら残りの頭は燃やしてしまう。

「おいルーナ、今日はボアを狩るって言っただろう?ホーンラビットは向かってこない限りは無視しろよ」

「何言ってるの、狩れなかったら依頼失敗になっちゃうでしょ。保険だよ」

「マジックバックを持たせてくれたから、その方がいいのかな。でも入りきらなければ、捨てるからな」

「それでもいいよ」

アイテムボックスなら、無限に入るし。


 森の中を探して回るけど、見つからない。

「ねー、ホーンラビットでいいんじゃないの?」

「ホーンラビットじゃ、小遣いにしかならないだろ、もう少し探そう。ルーナも採取ばかりしてないで、探してくれよ」

「薬草だって、常設依頼にあるんだから、少しずつでもやっていれば、ランク上がるんだよ?」

「うう…これ以上ランク差付けられたくないしな。せめてレベルだけは勝ちたいな」

 それはごめんなさい。もう勝っているから。お兄ちゃんのレベルはまだ5だから、ツノウシの時点で勝ってる。私はもうレベル17だから。

「お兄ちゃん、待って…何か強いのがいる」

 隠れてそっと覗くと、体長10メートル近い蛇がいた。

 鑑定 フォレストバイパー ランクC 肉はとても美味。皮は素材としても優秀。


 うーん。いい防具が作れそう。欲しいな。肉も美味しいらしいし。

「ルーナ逃げよう、あんなの絶対敵わない!」

「でも、お肉が美味しいって」

「何言ってるんだ!ルーナなんてひと呑みにされちゃうよ!」

「お兄ちゃんは離れてて、風の上位魔法を使うから…ウインドエッジ!」

 強い魔力を込めた風の鎌が、蛇の首を刈り取った。

『レベルが上がりました。レベルが上がりましたレベルが上がりました。レベルが上がりました。サファイアのレベルが上がりました。ヒスイの………』

 沢山のレベルアップコールを聞きながら、ルーナは木魔法で近くの木にバイパーをつるし上げる。血抜きをして、二メートル位に切り分ける。魔石の入った部位だけをこっそり複製してアイテムボックスに入れる。

(るー、しんかしそう。かげにいれて)

(ヒスイなの?)

(うん。はやく)

 ルーナはヒスイを陰に入れた。

 アレックスはあ然としている。

「お兄ちゃんのマジックバックにも入れてよ」

「あ、ああ…」

 見た感じ、マジックバックの中には二つ分の部位しか入らないみたいだ。怪しまれないように、一つはアイテムボックスにしまう。呆然としているお兄ちゃんならごまかせるだろう。ホーンラビットは後で出せばいいし。複製する必要なかったな。…旅に出た時の食料って考えよう。


 街に戻る間中、アレックスはじっと考え込んでいた。

「ルーナ、今回の報酬は全部ルーナが貰ってよ。」

「でも、お兄ちゃんがいなかったら、食肉採取の依頼は受けられなかったよ?」

「けど、倒したのはルーナだから、共同依頼にしてくれるだけありがたいっていうか、申し訳ない」

 素材を出して、依頼完了処理を行う。

「こりゃまたすげーの狩って来たな!…ふむ。一匹分には足りないが、マジックバック二つ分でも入り切らないだろうから、仕方ねーな。綺麗に倒せてるし。ちょっと待ってろ」

 皮を剥いで肉の重さを量っている。

「よし、魔石が銀貨20枚、皮が金貨一枚と大銀貨一枚、肉が金貨2枚と大銀貨一枚と銀貨10枚、薬草が銅貨12枚だ。全部買い取りでいいな?」

「はい。全部で金貨4枚と銀貨10枚、銅貨12枚ですね?」

「おお?…えーっと…ああ、嬢ちゃんすげーな!で?カードでいいか?」

 因みに、依頼料は大銅貨一枚だった。薬草採取は常設依頼なので依頼料はないが、達成回数にカウントされる。

「金貨だけカードでお願いします」

「はいよ。傷口が綺麗だったけど…まさか一撃で殺ったのか?」

「風魔法です」

「鱗含めて切断しちまうなんて、凄腕の魔法使いなんだな」

「えへへ。ありがとう」


「お兄ちゃん、フォレストバイパー倒した事は黙っておいてね?」

「分かってるよ。僕だって怒られる」

「なら、口止め料」

 ルーナは、銀貨10枚を出す。

「こんなに貰えない。お金はもっと大切に使わないと」

「でも、全部ルーナは駄目だと思う」

「なら、これだけ貰う」

 アレックスは銀貨一枚を手に取った。

「次からはちゃんとやる」

 真剣に言う兄に、ルーナは黙って頷いた。


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