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ギルドの仕事と、ぷにぷに従魔

 ボルドーの街に住み始めてから約一ヶ月。やっと依頼を受けてもいいとお許しが出た。

 ただし、家庭教師が来ない日だけ。街の外に出る依頼はお兄ちゃんとパーティーを組む事。

 それも街の周囲のみで、薬草採取だけ。後は街のお手伝い依頼で、やりたかった討伐依頼は駄目。ほんっとに過保護。サファイアだっているのに、柴犬サイズだから強そうに見えないのかな?

 ヒスイは一度も戦った事がないのに、サファイアのお陰でレベル4に上がった。いいんだ。ヒスイは可愛いから。

 翌日、早速ギルドにお兄ちゃんを誘ったのに、宿題があるから駄目と言われた。たかが足し算でつまずかないでよ。仕方ないから、お手伝い依頼をしようと思う。

 そういえば、冒険活動をする前に、マジックバッグを貰った。私のはポーチ型で、左側に剣帯を、グレルフロッグの皮で止めてある。一度手前に引っ張って抜くので、逆手になるけど、回して構える動作にも慣れた。

 ポーチは右横側になるけど、それほど邪魔にはならないと思う。時間停止機能は付いていないから、薬草なんかはアイテムボックスの方がいいと思う。ポーチから取り出すように見せかければいいだけだしね。

 でも、高価なマジックバッグは、逆に目立つと思うんだけど、その辺は伯爵家の威光ってやつに頼ればいい。

 お弁当のサンドイッチと果実ジュースを貰って、朝の混む時間帯を避けてギルドに行く。

 出来そうなのは、庭の草むしりと、下水掃除。臭そうだけど、クリーンを沢山使えば出来るかな?

 とりあえず、草むしりなら慣れているからそっちをやろう。受け付けを済ませて、地図にあるお家に行くと、お婆さんが出て来た。

「あらあら?うちの庭は結構広いのよ?大丈夫?」

「うちの畑の草むしりをいつもやっていたので、大丈夫です」

「じゃあ、お願いね」


(ヒスイも土魔法で土を柔らかくするの手伝ってね)

「ぴぴっ!」

(ふふっ、任せろって?なら、建物の横の細い所お願い)

(サファイアは、草を集めるの手伝って)

 目安で四角く区切って、土をかき混ぜるイメージで柔らかくする。サファイアは、前足で引っ搔くようにして集める。

 ヒスイは、穴を掘る魔法しか使えない。そういえば、柔らかくするのはイメージから作った魔法だった。普通に使ってたから忘れてた。

(ごめんね、ヒスイ、向こうで草を集めるの手伝って)

 こっち側も、土をかき混ぜる。草を集めて持っていくと、ヒスイが土をツンツンとつついていた。よく見るとワームがいる。

 鑑定 ワーム ランクH 食用不可 素材 なし 魔石 判別不可能

 別に鑑定しようと思ってなかったんだけどな。ミミズは異世界では魔物だった。

『ヒスイのレベルが上がりました』

 ヒスイ初めての戦闘?で得た経験値。うん。良かったね。でも食べないで、ぺってしなさい。いや…鳥にはエサなのかな?

 動かなくなったワームには興味を失ったのか、別の所をつつき始めた。

(ヒスイ、お手伝いして欲しいな)

 するとヒスイは、頭に止まって応援を始めた。うん…ちっちゃいからしょうがないよね。

 半日かけて草を集めて、燃やして灰にした。

「お婆さん、できました」

 中に声をかけると、出て来たお婆さんはびっくりしていた。

「あらまあ。すっかり綺麗になって。ありがとう」

 依頼書にサインしてくれて、飴玉も一緒にくれた。早速口に入れると、グレプ味の美味しい飴。

 お腹が空いたので、公園でお弁当を食べる。サファイア用の肉が入っていなかったので、ツノウシの肉を出してあげる。魔力水を入れて、二人に渡す。

(ルーナ、僕は一日二回食べれば充分だよ)

 そういえば、ペットは一日二食って聞いた気がする。夜中に狩りにも行っているからいいのかな?

 ギルドに依頼票を提出して、大銅貨一枚を貰う。初依頼を無事にこなせて嬉しい!

「お姉さん、この下水掃除の依頼は子供でも出来ますか?」

 ずっと張り出されていたのだろう。黄ばんでいる。

「ええと、無理だと思うわ。スライムもいるけど、沢山のラットがいるのよ。誰も受けてくれないから、ギルドとしては受けて欲しいんだけど」

「様子を見てから考えてもいいですか?」

「ええ、どうせ誰も受けてくれないから、ペナルティ無しでいいわ」

 塩付け依頼の特例措置だろう。地図で本流に入れる場所を聞いて、下水の蓋を開ける。

(臭っ!誰も受けたがらない訳だよ)

 クリーンを連発しながら進むけど、とてもスライムによる自浄作用が働いているとは思えない。

 とにかくクリーン連発!

『光魔法が最高レベルに達したので、聖魔法を覚えました』

 お兄ちゃんの為にも欲しかった聖魔法は、条件があったんだね。早速ピュアを連発する。クリーンより綺麗になるけど、範囲が狭い。

(とりあえず水で流しちゃったら?)

「キキッ(ニンゲン!)」

「キキッ!(ヤッツケロ!)」

「うええ?!」

 鑑定 ラット ランク G  食用不可能 魔石はとても小さい 皮が素材

「何で?今、喋ったように聞こえたよね?」

(僕の祝福の、言語習得じゃないかな?)

「何それー!ラットの言葉が分かっても嬉しくないよー!」

 足元に走って来てかじろうとするラットに、雷魔法を当ててゆく。

(ヒスイも手伝って!)

 ポケットに隠れていたヒスイが、ラットに風魔法で攻撃する。切り裂かれて、血や肉を飛び散らせるラットがグロテスクで、見るのも嫌だ。サファイアは、ラットを氷漬けにしている。

「キー!(ニゲロ!)」

『レベルが上がりました。ヒスイのレベルが上がりました。ヒスイのレベルが上がりました』

 そこに、溜まったヘドロまで押し流す勢いで、水魔法で流す。サファイアもヒスイも手伝ってくれた。

『ヒスイのレベルが上がりました』

 レベルアップコールを聞きながら、ピュアを連発する。

「あ…エリアピュア!」

(ルーナ、僕に乗って!)

 サファイアはひらりと反対側の通路にジャンプする。エリアピュアで、広範囲を浄化しながら進む。まっすぐ進むと、火が撃ちまくられているのが見えた。誰かが魔法を使っているのだろうか?

「誰かいますか?」

 声をかけながら魔法が撃ち出される方を見ると、赤黒いモノが、飛び跳ねながら火魔法で、ラットを攻撃していた。

 鑑定 ファイアースライム ランクD 食用不可 素材、魔石なし

 とにかくラットを全滅させなきゃ!スライムに近い所は氷漬けに、遠くは全然使えていなかった闇魔法のダークショットでやっつける。

『ヒスイのレベルが上がりました』

 後はエリアピュアで、浄化しまくる。あ!スライムにも浄化魔法がかかっちゃった!

 スライムはプルプルと震え、バスケットボール位あったのが、テニスボール位まで縮んで、羽根が生えた。色も薄ピンク色になった。

 鑑定 エンジェルスライム ランクB ルミナリアの魔力で進化した。非常に珍しいスライム

 スライムは、仲間になりたそうにこっちを見ている(多分)。だって顔ないし

「うーん、宝石で言ったらローズクオーツかな?でも呼びにくいから、モモで」

『モモの主になりました。経験値20%シェアされます』


 モモ(5) ルミナリアの従魔

 エンジェルスライム

 レベル 21


 スキル 

 火魔法 聖魔法 消化 吸収 ジャンプ 飛翔 気配感知 毒耐性 病気耐性 物理攻撃耐性


「凄い、いきなり聖魔法が使えるんだね?レベルも高いし。念話が使えないのは残念だけど」

(モモに念話は無理じゃないかな?スライムって元々知性低いし。魔法が使える精神とは別のものだよ)

「うーん、残念。モモ、とりあえず浄化しまくるよ?」

(なら、二手に別れる?支流はまだ沢山あるし、魔物の気配は今の所感じないし僕はモモを連れてあっちに行ってるよ。ルーナもマップだけに頼らないで、魔物の気配を感じるようにした方がいいよ)

(分かった。やってみる)

 エリアピュアをかけながら、辺りを探るように、魔物に見つからないようにこっそりと歩く。

『スキル 気配感知 気配隠蔽 忍び足を覚えました』

 うん、これは役に立ちそう。

 今何時位なんだろう?地下にいるせいで、時を告げる鐘の音が聞こえない。お腹が空いてきたからおやつの時間はとっくに過ぎていると思うけど。

 とにかく、夕ご飯前には帰れるように頑張ろう。

(ルーナ、そろそろ戻った方がいいよ?多分もうすぐ夜じゃないかな?)

(わ、大変!)

 すぐにサファイア達と合流して、背中に乗せて貰う。

 入り口近くで呼び声がしたので、サファイアから降りて小さくなって貰う。階段を上ろうとしたら、お父さんがいた。後ろにお父様もいる。

「遅いから心配したよ。ギルドに問い質したら、下水掃除の依頼を受けたと聞いて、慌てて来たんだ」

「ギルドの職員には、小さな子供にやらせる依頼ではないと、厳重注意しておいたからな」

「お父様、ギルドのお姉さんは悪くないよ。様子見て出来そうだったら、やろうと思ったの」

「兄上、とりあえず戻ろう。ルーナもお腹空いただろう?」

 ルーナは、お父さんに抱っこして貰って屋敷に戻った。

「ラットはいたけど、サファイアとヒスイに手伝って貰って、魔法で倒したんだよ。クリーンでいっぱい綺麗にしたら、ファイアースライムだったモモが進化したんだ」

「ピンク色で、一部形が変わって羽根みたいに見えるな。テイムしたのか?」

「うん、モモはエンジェルスライムなんだよ。聖魔法が使える凄いスライムなんだ」

「聖魔法?!スライムが?まさか」

「俺の知ってる冒険者にも、光魔法を使えるスライムをテイムしてた奴がいた。エンジェルスライムなら不思議じゃないな。もし聖魔法のスキルレベルを上げられれば、アレックスの腕も治るかもしれない」

「明日も潜ってモモに沢山エリアピュアかけて貰うよ」

「救護院でキュアをかけてもらうのもいいんじゃないか?」

「そんな事をしたらルーナが目立つだろう。フレイド、少しは考えろ」

「そうか。従魔に命令するなら近くにテイマーが必要か」

「アレックスも治るまで外に出す訳にはいかないな。何とかモモが、エクストラキュアまで覚えてくれたらいいが…幸い、アレックスの腕の事を知っている人間は少ない」

「そうだな。ルーナ、モモを育てる事は出来るか?」

「うん、大丈夫。この家の人に疲れを取る魔法かけていいかな?」

「屋敷の者なら心配ない。兵士達も呼ぼう。頼めるか?」

「うん、大丈夫だって」

 早速ルーナは、お父さん達と自分に魔法をかけた。だって加護を持ってる自分の方が、早くエクストラキュアを覚えられると思ったから。それにモモは、まだピュアとキュアしか使えない。同じ日に聖魔法を覚えたのに、ここまで差がでるなら、私が頑張った方がいい。

 リカバリーと、ちょっとでも怪我してた人には、途中で覚えたハイキュアをかける。でも、今日の疲れもあったのか、途中で眠ってしまった。

 次の日、午後は先生が来るので、午前中だけの約束で、下水道に潜った。出て来たラットは毒魔法や麻痺をかけてからダークショットで倒して、サファイアに乗って移動しながら、エリアピュアをかけていく。睡眠魔法を覚えた所でコールが来た。

『闇魔法のレベルが一定に達したので、光魔法、四属性魔法と統合され、スキル 属性魔法になりました』

 うん。スキル欄がスッキリするかもしれない。

(モモもやりたい?いいよ。ピュアかけてね)


 一週間頑張って、下水道は綺麗になった。これからは各家庭の下水施設にスライムが生きているかを確認して、大量のスライムを確保して下水道に放つ。 

 そして定期的にラットの駆除が行われる事になった。でないとラットにスライムが全滅させられてしまうからだ。私の報酬は、元は銀貨10枚だったのが、金貨一枚になった。

 領主依頼だから、元はお父様が払ってくれたんだろうけど、お小遣いとして貰うよりも嬉しい。私の仕事が認められたのだから。

 モモの従魔登録は、魔石のかけらを溶かさずに体内に入れておけるということなので、ごく小さなかけらが核と並んでみえる。

 普段の居場所は、ヒスイとは反対側のポケットに入っている。本当は従魔は影に入れておけるんだけど、私が淋しいから入れてない。

 それと、一人での薬草採取の依頼を受けるのを許してもらえた。ラットの大量討伐で、サファイア達の実力が認められたのだと思う。

 因みに植物にもキュアは効くので、暇さえあればかけていた。

 それから一ヶ月。ランクもGに上がり、レベルもいくつか上がってやっとエクストラキュアを覚えた。

 モモが魔法を使っているようにみせかけて、お兄ちゃんにエクストラキュアをかけると、腕が生えてくるように見えた。

 まだリハビリは必要なので、元のようには使えないけど、その日はお祝いになった。

 モモの扱いについて、家族全員から注意を受けた。他の人には聖魔法を使わせない。本当は使ったのは私なんだけど、将来的に覚える可能性はある。この前、モモがハイキュアを覚えたからだ。奪われる可能性もあるし、私の従魔だから、私ごと攫われる危険もある。

 もうすぐ学校に行っているお兄様達が帰ってくる。仲良くなれるといいな。


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