アクアとシラコメ
夏野菜の収穫が終わり、陸稲が黄色に染まる頃、妹が生まれた。
陣痛が始まった時、寝ていたお母さんは、朝早くに起きた時、陣痛が5分間隔になっていて、周囲を慌てさせたが、本人はけろっとしていて、寝ていたから気がつかなかったと堂々と言っていた。
そして、その日の午前中には生まれた。
生まれた赤ちゃんは銀の髪に水色の瞳の、お母さんによく似た赤ちゃんだった。
「アクアってどうかな?」
「いい名前ね。それにしましょう。ありがとう、ルーナ」
およ?名付けたら私の加護がついた。まあ、元々付けるつもりだったからいいんだけど。
産着にくるまれたアクアを抱っこさせてもらった。ちっちゃくて柔らかくて、可愛い。
「お姉ちゃんだよー」
つぶらな瞳が可愛い。
夏休みが終わったばかりのお兄ちゃんだけど、週末には帰ってくるらしい。
父様がラースからシラコメの種籾を輸入したので、見に行った。古い種籾も混じっていたので、再生をかけた。来年から栽培する農家は決まったらしい。
父様に栽培方法から全て教えてほしいと言われたので、発芽から栽培方法をまとめて、食べるまでの方法を紙に書き出した。一応炊飯器を使わないで炊く方法も書いた。
「本当に凄いな、ルーナは。神でなければどこに出しても恥ずかしくない、立派な伯爵令嬢なのに」
「私の事は諦めて下さい、父様」
私の身長は、生命神になった時から止まっている。それを知った時には愕然としたけど、どこか納得もした。もう人とは違うものなのだ。
陸稲の収穫が始まった。新米は涙が出るほど美味しかった。やはり私のソウルフードは米なのだ。
家族のみんなも気に入ってくれて、来年も畑の一面は陸稲を育てる事になった。
約束通り、リリーにはおにぎりにして持って行ってあげた。
初めて食べるシラコメの味にリリーもすごく驚いていた。ボルドーの街で栽培する話をしたら知っていたようだ。
「エレインの港から輸入してボルドー領に届けたんだよ?」
あ、そういう事なのか。
「腹にも溜まるし、何より美味しい。絶対普及するよ、これは」
「もちろん。ああそうだ。バートの奴にも持って行ってあげようかな?」
「ふうん、なら、私も連れて行ってくれない?同じくルーナを好きな同士なら、気が合うかもしれないし」
「いいけど、看破されても怒らないでね?」
「生憎と、知られて困るような生き方はしてこなかったつもりだからいいよ」
うん。友達になれたらいいな。亜空間移動だから、移動は一瞬だし。
「その前に、私の亜空間にリリーを招待するよ。良かったら泊まっていく?」
「なら、今日はルーナはうちに泊まる事にして、実際は亜空間でお泊まりだね!楽しみ!」
リリーのお父さんにもシラコメのおにぎりを渡してお礼を言ったら、逆にお礼を言われた。
ボルドーの領主と話してから、ずっと気になっていたらしい。実際にシラコメを食べて心を動かされたようだ。
「これなら我が領でも育ててみたいな。ルミナリアさんは栽培方法を知っているかな?」
「はい。父にもマニュアルを作ったので、良かったら同じ物をお渡ししましょうか?」
「是非頼むよ。来年からでも試験的に育ててみたい」
おおう、シラコメ大流行の予感?一応父様にも話しておこう。
もし大丈夫なら、精米道具だって複製しなきゃならないね!
父様に話したら、快く応じてくれた。エレインはまだ試験的に育てるという所がポイントらしい。
私が作成したマニュアルを一旦預かり、数冊複製した。バートも興味を持つかもしれないからね!
今日は亜空間のベッドでお泊まりだ。いくら黒竜で眷族でもリリーと一緒のベッドにオニキスを寝かせるのは気が引けたので、今日だけは別に寝てもらう事にした。
後で埋め合わせするからと言うと渋々ながら了承してくれた。ラグの方で竜に戻って眠るらしい。
同じ亜空間内なのでリリーが怖がったけど、同じオニキスなのにな。
でも、怖がりながらも竜の姿が見たいのか、チラ見しているんだよね。
その日はミミも加わったもふもふベッドで眠った。
出産の話は実話だったりします




