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罪と罰

「聖女ルミナリア、か。本当に魔物を連れていやがる」

 兵士は憎々しげにそう言い放った。

「一緒に王城に来て頂く」

「拒否したら?」

「この国ではテイマーは魔物は影に入れるのが決まりだ。それが為されていない場合、魔物は問答無用で殺処分としていい事になっている。が、例え魔物に与する聖女といえど、聖女に対してはそれは適用されない。王に直接申し開きをして頂く」

「それも拒否できないのですか?」

「何もやましい所がないなら、拒否する理由がないだろう?それとも聖女というのが偽物なら、こちらとしても問答無用で終わらせる事が出来て良いのだがな」

(主、こいつら殺っていいですか?)

(だめだよ、オニキス。本当に悪いのは命令した奴だから。みんなも大人しくしてて。こっちから手出ししちゃだめ)

「分かった。その代わりみんなにちょっとでも手出ししたら、許さないから」

 

 ルーナは馬車に、他のみんなは、オニキスまで檻の付いた馬車に、乗せられる。

 オニキスが竜になったら簡単に壊れる大きさだけど、その前にみんなが潰れてしまう。

 ということは、こちらの情報は筒抜けと思っていいだろう。オニキスはどう見ても人間にしか見えないからだ。


 お城の中なんて一生入る事はないと思ってたけど、まさかこんな形で入る事になるなんて思わなかった。

 頭なんて下げない。何も悪い事はしていないもん。

「ほう?余に頭を下げぬか。聖女といえど、少々思い上がっておらぬか?」

「聖女は権力に屈しない。それは歴史が証明している」

「国の法律では、テイマーは従魔を影に入れぬと従魔は殺処分だ。

 それを余の恩情で法を曲げているのだぞ?元々魔物は人間に危害を与える憎むべき存在。

 テイマーであるそなたには聖女の資格すらないのではないか?」

「魔物だって世界の1要素だもの。その証拠にハザード様がいる」

「我が国では五柱の神々しか信仰していない。

 魔物に滅ぼされた街の話は昔からよく聞く。そなたがその気になれば、黒竜をけしかけて国すら滅ぼすのも可能かもしれない。

 しかも聖女である事を利用して、お前は何を為すつもりなのか?

 お前のせいで歴代の聖女や聖人の偉業が地に落ちるだろう」

「私には、そんな事をするつもりはない。あなたこそそうやって、私を言いくるめて何をするつもりなの?」

「世界を手にするつもりがないなら、聖女の偉大さを落とすつもりがないなら、従魔を処分せよ。それでこそ聖女と言えるのではないか?」

「それはこの国だけの言い分だから、私は聞かない。

 みんな私の大切な家族だから」

「くっ…本当にお前は聖女なのか?神に認められた聖女なら、ステータスボードに称号が与えられているはずだ」

「称号を見せろって事?」

「全てだ。やましいスキルがあれば、聖女を偽装する事も出来るかもしれないからな」

「それは個人の尊厳を守らない事につながる。そんな事が王の命令で為されたなら、この国は国としての信用を失う事になる」

「…っく!」

「私が子供だから言いくるめられると思った?私から従魔を取り上げて、この国こそが正しいと、ハザード様は神ではないと言いたかった?そんな事には絶対にならない。取り消しなさい!」

「魔物は悪だ!そしてその魔物を従魔とする聖女も、証拠がなければ認められない!」

「…。分かった。なら私のステータスボードを取りなさい。そして後悔するがいい。この国には私の加護はけして与えない。その愚かな王を、いつまで民が認めるか、見ていてやる」

 

 教会の神父が王の命令で進み出て、ステータスボードの発行が為される。

「な…!どういう事だ?生命神だと?」

「私は既に神の一柱で、ただガルド様の恩情で、まだ子供な私が人としての人生を送る事を許されているだけ。

 私の従魔達は、既に神の眷族だ。分かったらすぐに解放しなさい。 

 そして魔物を世界の要素として認めないなら、この国にはこれ以上の発展はない。新しい神には五人の眷族がいる事も知れるから」

「何故だ…!私は間違ってなどいない!」

「ならあなたは魔物の肉を食べた事がないと?冒険者が使う装備には魔物の素材がたくさん使われているし、便利な魔道具だって魔石が必要。その全てを無くして生活出来るかどうか、一度考えてみるといい」

 それでも檻の解放を命じない王に、ルーナは従魔召喚で皆を集める。

「その王が玉座にいる限り、私はこの国を認めない。王が変わっても、考え方が変わらない限りは同じ事だ。私が言いたいのはそれだけ」

 ルーナは、亜空間移動でこの国を離れた。


 家に戻って落ち込んでいるルーナに、眷族達が寄り添う。

(僕たちの為に神になった事を公表する事になって、ごめんね?)

「大丈夫。多分あの国はその事公表しないから。自分が危うくなるからね。噂位は仕方ないだろうけど」

(でも、るー。ならどうして落ち込むの?)

「国民の多くはきっと、王とは違う考えだからかな?」

(そうでもないと思うわよ?国に対する不満の矛先を魔物に向ければ、楽だもの)

〈別に珍しい考えではありませんね。その感情を、他国に向けるやり方もありますし。要は自国の不満を自国だけで解決できない、汚いやり口ですよ。人間は、弱いですから〉

「でもオニキスは、人間のそういう所も知っていて、人間に興味があるんでしょう?」

〈色々だから、楽しいんでしょうね。個人で付き合うなら、悪くはないですし〉

「オニキスは、女の人とも付き合った事あるの?」

〈あ、主…主はまだ子供なんですから、そういう事に、興味を持ってはいけません〉

「慌てるって事はあるんだ?」

(人化できるんだから、恋愛だって可能よ。残念ながらワタシに付き合った経験はないけど)

 それは…そういう趣味の人は少ないだろうしね?

〈コハク!〉

(オンナは小さくてもオンナなのよ。ましてやルーナちゃんには前世の記憶もあるし)

「あー、やっぱりいいよ、コハク。前の私も、子供で終わっているし」

(そう?でも好きなオトコができたらワタシに相談してね?)

 今の私はそういう事に気が回らない位なんだけどな。






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