リリーとお話
その日は当然リリーの家にお泊まりになった。
「ねえ、聖女って神になったりするの?」
「へ?…今までの聖女には神になった人はいないよ?神はずっと六柱のままでしょ?」
「そうだよね…でもルーナ見てるとそういう事もあるんじゃないかなって思うんだ」
「どうして?」
「何ていうか、懐が深い?従魔を持ってみて分かったけど、ある意味家族以上の存在でしょ?ミミの命は私次第なんだって。
そしてミミはあたしに全幅の信頼を寄せている。あたしにはミミ一人で手一杯だな」
「テイマーの中には割り切っている人もいると思うよ?例えば戦士にとっての剣みたいに」
「そうだね。でもルーナは違うと思う。あたしだってそれなりに人を見てきた。11歳の小娘に何が分かるって言われたらおしまいだけど、ルーナは一度大切だと思った人をけして見捨てたりしない」
「そうでもないよ…私が住んでいた村がなくなった話位は聞いた事あるでしょう?中には衣食住が保障されるからってそのまま隷属されたままを本気で望む人もいたけど、解放を望む人で助けられない人もいる。
犯罪奴隷として買ったからって。悪い人じゃないのは分かっていたから、何かがあったとは思うけど、水晶が赤く光ったら、何も言えなくて」
「それって元はあの老害の悪巧みって噂は聞いたけど?」
「アイツが欲しかったのは、元々お母さん一人で、それがあそこまでになったのは、その犯罪グループの計画が、大きくなった結果」
「その話さ、一つだけ分からないことがあるんだよね。
国の役人は定期的に水晶に触れる事を義務付けられている。それが、ルーナに祝福させようとするまで犯罪が分からなかったのに、その時を境に水晶は赤く光り、そいつも神の罰を受けたって聞いた」
「嫌いにならないでね?魔法神様の加護に創造魔法があるのは分かるよね?…暗黒魔法から、私がリードの魔法を…その人の体験全てを読み取る魔法を創ったの…教会は神と繋がる特殊な場所だし、私は神から注目されていた聖女だから…それで罪が発覚したんだよ」
「神から注目されているなんて、怖くない?」
「別に怖くはないよ。みんな優しいし」
「…って、え?神様に会った事あるの?」
あーあ。どうしてこう、私って隠し事が苦手なのかな。
「うん…まあ」
「凄いじゃん!やっぱりルーナは特別な子なんだよ」
「自分では普通の子供だと思うんだけど」
「普通の子は、その歳で時空魔法も暗黒魔法も扱えないよ」
「う…」
「ルーナには、人を惹きつける何かがあると思うよ?あたしも最初は可愛いから目についたけど、それだけだったらここまで親しくなれないと思う」
「でも私、友達少ないよ?必ず一線引かれるし、リリーの他にはバート位かな?遠慮なしに付き合えるのは」
「バートって、男の人?」
「兄様の親友でもある元第三王子のヒューバートだよ。第一印象は最悪だったけど、情けなさ過ぎてほっとけないんだよね」
「へえ。魔眼持ちの公爵か」
「人間不信の塊で、未だに婚約もしてないんじゃないかな?ね、もし縁があったら友達になってあげてよ」
「前に聞いたロリコン野郎?…でもまあ、ルーナがそう言うなら」
「全く。しまいには眷族にしてくれーとか言うんだよ?人間やめてどうするのって話」
「眷族って…主の為なら命も差し出すってのでしょ?確かにどうかと思うけど、それって本気で惚れられているって事じゃん?」
「本当に…困っちゃう。私がいくら子供でも、それ位は分かるよ。でも気持ちに応えるのは無理だから」
「どうして?聖女だから?」
「違う。ちゃんと言えなくてごめんねだけど、リリーの指摘通り、神だから」
「それはこの半年間に何かあったって事?以前のルーナはどこか迷ってるっていうか、否定的な部分があったけど、今は何か吹っ切れた感じがするから」
「あはは…私の周りはどうしてこう、鋭い人が、多いのかな?」
「ルーナが分かりやすいからかな?自分では分かってないかもしれないけど、すごく表情豊かだからね」
美味しい物考えている時だけじゃなかったのか…。ちょっとショック。
「腹の中で何考えているか分からない奴より余程いいよ」
「そりゃそうだけど」
「ねえ…神様になったらルーナに逢えなくなっちゃうの?」
「今はまだ、好きに生きていいって言われてるけど、私が人としていられなくなった時が、お別れの時かもしれない」
「そんなの嫌だよ!せっかく友達になれたのに、ずっと友達でいたいのに」
「私だってそうだよ。神様になってもそれは変わらないよ。大丈夫、すぐじゃないし、亜空間移動の事も教えたから、これからはもっとまめに会えるよ」
「本当?…よかった。途中から、正体ばれたらお別れだったら嫌だなと思った」
んー、確かにそういう話はよくあるよね。一昔前のアニメとか。
翌朝、ルーナ達は船に乗り込んだ。風魔法を使うといっても最初に軌道に乗るまでなので、ずっとじゃない。




