ご飯!
7歳になった。ステータス表示は相変わらず変だけど、誕生日が来たから7歳。
今年のお母さんのケーキは、スポンジ生地の上に、クリームが乗っかっている豪快なものだ。お母さんらしい。
プレゼントは、魔道具の本だ。今までは既存の魔道具を真似てなんとなく作っていたけど、この本があれば時間の変更や強弱の付け方等、詳しく書かれている。炊飯器の為には必要な本だった。
子供が欲しがるような物じゃないけど、これでいい。
子供が欲しがる物といえば、着せ替え人形が今は流行っていて、20㎝位の可愛い人形には、専用の服も売っている。関節まで動く本格派だ。
近所の子も持っているから、プレゼントを決める時少し迷ったけど、必要性を考えたら、断然本だ。
それに人形なら、芸術スキルを持っている私に作れないことはないはず?
でも、今更人形遊びってのもな…。
『補助魔法 ドールを覚えました』
…え?
『補助魔法 ドールを覚えました』
二回言えって意味じゃないー!
とりあえず作ってみよう。ちゃんとイメージして…。魔力が物質化して、小さな私を作り出す。羽根がある所まで無駄にそっくりだ。そしてこのドールは、動く。
〈おおおっ!あ、主!これを是非私にお与え下さい!〉
「ひゃうっ!」
体を掴まれた感覚に、悲鳴を上げる。いけない、触覚は切ろう。視覚と聴覚だけで充分だな。
〈あ、主?〉
「ごめん、それ、私の魔法で作り出した分体なの」
ドールは、オニキスの手から飛んで戻ってくる。
動かしているのも私だけど、並列思考のある私には、別に難しくない。
「斥候に使えると思ったんだよ」
別に人形が欲しかった訳じゃない。ないはず。
〈そうですか…〉
「何で?そんなに欲しかった?」
〈素晴らしいじゃないですか!常に主がお側にいるなんて!〉
「別に、普通に一緒にいるでしょ?」
〈そうなんですが!時々主を無性に攫いたくなってしまうのです!その…眷族化してから余計に、片時も離れ難くて〉
「僕も!」
「私、も」
「あたちもなのー」
「当然、ワタシもよ?」
抱きしめてきたオニキスに便乗するように、みんなが抱きついてくる。圧死しそう。
「し、しむる…」
「なら僕は、もふもふになるね!それならルーナから抱っこしてくれるもんね!」
…えーと、この図は何だろう?オニキスの膝に私が座ってその片方ずつにサファイアとコハクが座って、両手でヒスイとモモを抱っこしている。もふもふパラダイス?
「うーん、嬉しいけど動けないよ」
でも、たまにはこんな時間もいいかな?
種籾に再生をかけて、水に浸ける。再生をかけたのは、種籾が古くて死んじゃってたら大変だからだ。
さすがに5㎏は多いので、畑に植える分だけを分けて、あとは食べる事にする。
籾すり、精米、今回は全て創造魔法でやってしまったけど、収穫するまでには誰でも使える道具を作る事にする。
父様に気に入って貰えれば、シラコメが普及する可能性があるからだ。
炊飯器だけ魔道具にするのは、ラースの二の舞にしない為。スープの具材や雑炊じゃ、主食として見て貰えないから。
米を研いで、水が綺麗になるまで水を変えて、土鍋に入れて炊きあげる。
ちょっと味見…うま!
ふっくらつやつやに炊き上がったご飯を複製して収納庫に入れる。
「お父さん!お母さん!ちょっと来て!」
ちなみにシルキーは、黙々と洗い物をしてくれている。
「あら?これは…」
「旨いな、これがシラコメか?」
「そうだよ?秋にはいっぱい食べられるからね!」
久しぶりに食べたご飯は、おかずなしでもいくらでも食べられそうだ。
「父様達にも持っていくね!」
絶対に納得させてみせる!そうすれば何年か後には、いつでもご飯が食べられるようになるかもしれない。
結果、シラコメの輸入、栽培が決まった。
「本当にルーナには驚かされるな。新たな特産品として、大々的に栽培されるだろう。その炊飯器?の魔道具も、併せて売れるだろう。しかし、こんな知識をどこから?ラースでも主食として普及はしていないんだろう?」
「調べたんだよ?」
レコードで、だけど。
「まさか神から?」
「レレイ様は喜んでいるよ?今まで見向きもされなかった植物が普及するから」
「ルーナ、まさかとは思うが、もうすでに…」
う、どうしよう?父様は妙に鋭いから、誤魔化しきれるかな…?それとも身近な人には話しておくべきなのかな?
「ごめんなさい…眷族を得た辺りから、正式な神です。それまでは見習い神だったけど」
「…。フレイド達には?」
「まだ…何も言ってない」
「分かった。この話は一旦打ち切ろう。身内だけでも集めて、ちゃんと聞いておいた方が良いだろうから」
いつまでもこの生活が続くとは思えない。なら、どこかできちんと話しておいた方がいいんだろうな。




