遺跡での魔物討伐
モーラス国との国境は、物々しい雰囲気だった。冒険者として入国したけど、ランクが低かったので、がっかりさせた。
「何かあったんですか?」
「南の遺跡にキメラが複数住み着いたのが確認されたんだ。今は全国の高ランク冒険者に招集通知が行き渡っているはずだから、お嬢ちゃんは邪魔するなよ?」
今は眷族達も混乱を避ける為に元の姿をとってもらっている。
これでもAランクの魔物倒せる実力はあるんだけどな。ギルドの規定でこれ以上上がらないだけで。
近くの町は、冒険者で賑わっていた。そんな中、感じた覚えのある魔力波を感じた。そういえば、お父さんのアクセサリーにつけておいた付与を解除し忘れていたっけ。
「お父さん!」
「?!ルーナ!何故ここに」
「たまたまだよ。私はダンジョンに行きたいだけだから。でも、お父さんがいるなら私も参加するよ?」
「いや…しかし」
「こっちにはオニキスがいるんだよ?回復魔法だって必要でしょう?」
「あー…とりあえずギルマスと掛け合ってくる。オニキス殿、一緒に来てくれるか?」
〈主も一緒なら〉
「そりゃ、置いてかないさ」
結果はもちろん快諾してくれた。強いのはオニキスだけじゃないと知っているからだろう。
私の魔法の腕前も分かっているだろうし。
作戦としては、私も含めた数人の大規模殲滅魔法が使える者で雑魚を払い、そこから一気になだれ込むそうだ。私はもちろん、お父さんと一緒に行動する。
オニキスの事も周知されたので、竜化してブレスで戦うのもありだ。けれどそこまでにはならないだろう。こちらにはランクSの神狼や天虎もいるのだ。
そして作戦決行。遺跡には、たくさんの強い気配を持つ魔物が集まっているのが分かった。
向こうも小手調べのつもりだろうか?オークソルジャーやオーガなど、ランクB位の魔物を仕掛けてくる。そいつらを魔法で一気に殲滅し、私は空から魔法で援護する。
ヒスイには、お父さんの頭にいてもらって魔法で援護するように頼んだ。
始めは弓で戦っていたオニキスも短剣に持ち替えて、魔物を屠ってゆく。
私も負傷者が出始めたので、ダークソードで攻撃していた手をとめ、回復魔法に切り替える。
数匹ミノタンが混じっていたので、そいつらは狩って収納庫に入れた。
キメラは、ライオンの頭にヤギの体、そこに大蛇の尻尾がついたキモい奴だ。ランクが高くても、こいつは絶対美味しくない。ならば殲滅!とダークソードで切りつけたが、再生能力も高いのか、傷はすぐに塞がる。ならば、と頭を切り飛ばしたらさすがに絶命した。
遺跡の奥に進むに従ってキメラやオーガキング、オーガロードなんてのも出て来た。そいつらをヒスイを除いた眷族達と狩りながら進み、大広間に出た。
そこにはヒュドラという頭が九つもある化け物がいた。しかも一本一本が違う属性の魔法を放ってくる。魔物は無詠唱で魔法を使えるから、厄介だ。再生能力も高くて首半分切り落とした位じゃ、くっついて再生してしまう。しかも首のうち一本が回復魔法を使うので、まずはそいつを狙う事にした。
ホーリーを使って根元から焼き切り、さっさとアイテムボックスにしまうともう再生出来なかった。眷族達も同じ方法で狩った首を収納庫に入れている。首を全て落としてもまだ動いていたので、ホーリーで真っ二つにしたら、さすがに動かなくなった。
ヒュドラはランクSの魔物なので、こいつがこのエリアのボスだったのだろうと判断して、遺跡から出て残党狩りと回復魔法に専念した。
コハクを目印にお父さんの所に行くと、丁度キメラの頭を落とした所だった。
「ルーナ、悪いが回収してくれ」
キメラは素材として優秀らしい。
日が落ちる頃、やっと掃討作戦が終了した。これだけの大規模作戦で一人の死者も出なかったのは、奇跡と言えた。
また、その後で私が出したヒュドラの死体が物議を醸しだした。
最強の天使ちゃんはともかく、死の女神はやめて頂きたい。私は一応生命神なんだから。
後日談として、私がDランクなのはおかしいとして、国にも認められて一気にSランク冒険者になってしまった。ただし、私は聖女でもあるので、依頼の強制はない。
お金もちょっとしたひと財産になってしまったけど、遊んで暮らすという選択肢は私にはない。ダンジョン巡りする資金が貯まったと考えて、お父さんを亜空間移動で送りつつ、これからの予定を話した。
「ダンジョン巡りは構わないけど、誕生日には帰ってくる事。定期的に帰ってくる事」
よし!日帰り規制がなくなった!今までもダンジョンの途中とか、そういう微妙なタイミングで日が暮れそうになって煩わしい事もあったけど、これからは亜空間で寝ればいいし、そんなに長期間帰らないつもりもないので、大丈夫だ。
それに暖かくなったら、陸稲も育てなきゃね。
狩った獲物として出さなかったミノタウロスを出したらお父さんはびっくりしていたけど、食べたいから出さなかったと言ったら、笑われた。




