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プリンと転生神

 この世界は、蒸す料理がない。ルーナは金型で鍋の中に入れるタイプの網を道具屋さんに作ってもらい、プリンと茶碗蒸しを作る事にした。


 とりあえず料理長さんの所に行くと、久しぶりなので泣いて歓迎されてしまった。

 材料は全部あったので、まずはプリンから。卵と牛乳と砂糖をよく混ぜて、布で丁寧に濾す。

 適度な器がなかったので、陶器のコップに多めに作る。カラメルがちょっと煮詰め過ぎちゃったけど、味は許せる範囲内だ。

 鍋に水を網の下に来るように張り、火を点ける。

「この網は何ですか?こんなのあったら茹でられませんよ?」

「これは蒸すという調理法で、蒸気の力で火を通します」


 火加減が難しいけど、そっちは料理人さんに任せて、茶碗蒸しを作る事にした。魚を一匹分けてもらって、あとは余り物を適当に切る。


「こっちのには具材を入れるんですかい?」

「さっきの甘い方はデザートで、プリンて言います。今のが茶碗蒸しで、おかずの一品ですね。こっちは熱い方が美味しいですけど、プリンは冷たい方が美味しいです」


 ルーナは自分の家の分を収納庫にしまってゆく。


 銀杏はないけど、滑らかな舌触りに出来て、大満足だ。料理長さん達も、スプーンを握りしめて感動している。 

「さすが俺達の天使ちゃん!最高っす!」

「彩りを良くすればもっといいな」

「あとは工夫して、色々入れてみて下さい。プリンの方は、冷えたら味見して下さいね」

「うー、早く食べたいっす!甘い香りが堪んないっすよ」

「どれ、ちょっとだけ…!うまっ!」

「料理長!ずるいっす!俺も…!はあ~疲れがとれる味っすね。この下のカラメルが味にアクセントを加えて」

「もう少しカラメルを煮詰める時間短くてもいいかな?じゃ、頑張って下さいね」


 もう父様にもばれてしまったから、完全に自重は捨てた。美味しいもの食べたいもん!


 亜空間内の冷蔵庫にプリンをしまい、家に戻って一息つく。

 私が料理を作っている時は眷族達は生暖かく見守っててくれるので、遠慮なく次のメニューを考える。

 蒸して作るといえばお饅頭かな?けど、あんこがない。大豆はあるのに小豆はないのだ。普及していないのはダンジョン産だったりするから、オニキスが買ってくれた本を、読む。


 近い所でこの赤豆かな?大きさはささげだけど、行ってみる価値はありそうだ。モーラス国は、隣の国だけど、丁度ボルドーの反対側、西隣になる。

 エレインの街から北西に行くのが近いかな?


 小豆の事で頭がいっぱいな私に、ガルド様から呼びかけられた。

「ちょっと神様の所に行ってくるね。茶碗蒸しとプリン、先に食べてもいいけど私の分残しておいてね」

「もう、ルーナちゃんたら、誰も食べないから安心して行ってらっしゃい」

「ルーナは神様になっても通常運転だね。いずれは僕達も神様の世界に行くんだよね」

「あら?僕ちゃんは怖いの?」

「だって神様だよ?コハクと違って僕は会った事ないし」

「主が神様じゃないですか」

「いや、ルーナはルーナだし」

「わたちはるーと一緒にいられるなら何でもいいかなー?」

「よく、分からない。神様の事」

「今から色々考えても無駄だよね。僕達は眷族なんだから」


 神界に行ったら、転生神様がいた。


「生命神就任おめでとうございます!」

「うにょっ?!」

「あははー。まさか本当に転生神になってしまうとは、不思議な巡り合わせを感じますねぇ。転生神の仕事は、これで結構奥が深いんですよ。何しろ一人として同じ人生を歩んだ者はいないのですから。という事で先輩として少しアドバイスを出来ればと思ったんですよね。ルミナリアさんは再生の力も持っていらっしゃるので、きっと優秀な転生神になれますよ。私のように。なんて、あははー」

 ツッコミハリセン、欲しいかも。

 

 二人で転生の間に移動した。

 お手並み拝見とばかりにニコニコ笑顔で見ている山田さんの前で、魂を分類していく。

「うんうん。人の世界は、いろんな人がいてこそ成り立っているものですからね。あ、これ、取りこぼしてますよー」

「山田さんは、転生神になられて長いんですか?」

「あ、その日本語の響き、いいですね。軽く100年は経ってると思いますけど、いちいち数えていないので、忘れてしまいましたね。私も眷族がいれば淋しくなかったんでしょうけど、あの世界、魔物がいませんからね」

 確かに。

「仕事に慣れたら他の世界にも連れてって差し上げますよ。あと、ここまで欠けた魂は、再生をかけた方が早いですね」

「何でこんな風になっちゃうんでしょうね」

「気になるならリードを使ってみては?」

「…。本当に必要じゃなければ使いたくないですね」

「あなたは色々知る必要があると思いますけど、まああせらなくてもいいでしょう」

 そうかもしれないけど、他人の人生を知るのは怖い。

「では、お互い頑張りましょうね」

「ありがとうございました」

 ここにいるのは、楽だな。煩わしさもないし、向けられる視線を気にする必要もない。

 …。戻ろう。ここにいると時間を忘れそう。


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