神々と、ギルド
シスターに案内されて、神様の像の前に立つ。教えられた通りにボードに手を乗せたら、強い光がルーナを包んだ。
見渡す限りの白い空間に、髭のお爺さんと、綺麗な女性。学者風なお兄さんと、金色のドラゴンがいた。
「いらっしゃい。儂は創世神ガルドじゃ。主神とも呼ばれておるな」
言いながらお爺さんは、手に持ったごつごつした杖を振った。目の前に座卓が現れ、テーブルの上にはマグカップに入ったお茶と、お茶菓子が置かれていた。
「私が加護を与えただけあるわね。とても可愛いわ。私はルルティアよ」
「とりあえず座りたまえ。私はログウェルだ」
金色の竜は鱗のついた人型になり、黙って座る。
「加護を与えてくれてありがとうございます。転生神様はいらっしゃらないのですか?」
「彼はこの世界の神ではないからの。それと、敬語じゃなくて構わんよ…本来なら今日、この場で色々と説明するつもりじゃったが、どうやら中途半端に思い出したようだの」
「そうね。だからステータスボードも戻ったらきちんと確認してね。特殊スキルは私の自動回復と、創造魔法以外は消した方がいいわね。ガルドは滅多に加護を与えないし、ハザードは国によっては差別の対象になるのよ」
「俺も神の一柱なんだが、魔物の神とも呼ばれている。魔物も世界の1要素なのだが。自分たちが何の肉を食べているのか分かっているだろうに」
ハザードは不満そうに呟いた。
「ルミナリア、フェンリルは神獣だ。種族を聞かれたら、雪狼とでも答えておけ。それとヒスイは、クルーバードの幼体で通じる」
「後はアイテムボックスだな。空間魔法にもそれがあるから、覚えたら秘密にしなくても大丈夫だ。だが、子供のうちは隠した方が賢明だろうな。あの方の加護で、スキルレベルも上がりやすくなっている」
「そうですよね。考えただけでスキル貰えるなんてないですよね。あの…私どうしてこんなに良くして貰えているんですか?」
「本来なら天寿を全う出来る筈が、母親に置いていかれたせいで、父親に殺されるという最悪の結果に繋がってしまった。しかもスキルのない世界で状態異常や精神、身体的苦痛のスキルを取れる程の生活を送る羽目になった。神からすると、許せない状況だ」
「儂らも、自分の所の魂ではなくとも、話を聞いて可哀想に思ったのだ。儂らの手で幸せにしてあげたかったのじゃよ」
「私はちょっと違うわね。元から好かれやすかったでしょう?父親はクズだったけど。だから後押ししてあげたかったの」
「君の事は、我々だけでなく、レレイやゴードンも注目している」
「そうね。レレイは料理の神でもあるから、前世でもあった珍しい料理を広めてくれると喜ぶわ。ゴードンは、あの剣の使い方が面白いって言ってたわね」
いや、スキルだけで既に使いこなせなくなっているのに、これ以上なんて無理。
「そう?まあいいけど、今度こそ幸せになってね」
「あの…お母さんの事分かりますか?」
「マリーは私が加護を与えているから、生きている事は判るが、場所までは分からない。せめて教会に立ち寄って貰えれば把握出来るが」
「そんな所かの。あまりこちら側に留め置くと影響が出るかもしれん。困った事があったらまた相談に乗るよ」
視界がぼやけ、気が付くと教会にいた。
「凄い光でしたね。神から愛されている程強く光るとも言われています。あなたに神のご加護がありますように」
ルーナは、すぐにボードに目を向ける。
スキルと加護、消さなきゃ!
「何を表示させておくかはこれから家族と相談なさいませ。こちらへどうぞ」
え、ちょっと待ってよ。お父さんにも知られたくないのに!
幸いにも、指で触れると文字が消えた。歩きながらスキルや加護を消していく。
「ルーナ!どうだった?見せてくれ」
「…はい」
ルミナリア ボルトス(5)
人族?
レベル 13
HP 238 MP 3200 力 40 精神 1080 敏捷 29 幸運 118
特殊スキル 超速回復 創造魔法 経験値20%シェア
アクティブスキル
四属性魔法 回復魔法 魔力操作 身体強化
投擲 鑑定
パッシブスキル
家事 記憶力向上 算術 魔力感知 命中
テイム
魔法神ログウェルの加護 愛の女神ルルティアの加護
サファイアの主 ヒスイの主
称号
転生者 神々に注目されし者
お父さんに見せたのがこれ。ていうか人族の後ろの?って何?!
「人族?…母さんが精霊の血を引いているから、先祖返りかもしれないな。鑑定のスキルもあったのか。商人が欲しがるスキルだな。けどルーナ、人は鑑定してはいけないよ?大概弾かれるが、敏感な人は気づくからね。おお…ログウェル様だけでなく、ルルティア様の加護もあるのか。…?転生者?」
「え?」
「ほら、称号の所に」
「わ…分かんない」
「そうか。分からないのは消しておいた方がいいね。指でこすると消えるからね。別に誰に見せるかは自分で決めていいけど、貰ったら破棄しちゃう人もいるからね。ただ発行には、銀貨二枚かかるからね」
「そうなんだ」
ステータスオープンで良いんじゃないかな?
「冒険者になると、定期的に発行する人もいるよ。何もなければ、後は結婚の時位かな?このボード、兄上に見せてもいいかな?」
「いいけど、私結婚なんてしないよ?」
「ははは。大丈夫。無理に結婚させる事はないから」
お父さんとお母さんの子供で充分なんだけどな。称号まで見てなかったから焦ったー。この世界で死んでこの世界で生まれた人は、転生者って呼ばないのかな?お父さんが知らないんだからないんだろうな。
「従魔登録だけど、ギルドか役所で出来るんだ。違いはないけど、ルーナはどっちがいい?」
「ギルドがいい。魔石を売りたいから」
「そうか。お父さんも行きたかったから、丁度いい。首輪も買わないといけないね」
先に雑貨店に寄って青い石の付いた首輪を見つける。
「ヒスイはどうしたらいいの?」
「足に付けるしかないかな?見える所に付けるのがルールだからね。サイズ自動調節機能が付いてないと駄目かな…ああ、これなら大丈夫だね。
グレルフロッグの皮を使っていて、ゴムのように伸びる。そこに本当に小さな石が付いていた。
「あとは、戦いの途中で石が取れちゃったりするから、貼り付ける糊も買っておこうか」
「このゴム欲しいな。髪の毛を結ぶのに使いたいの」
本当はサファイアの首輪用だけど。大きくなったら苦しいもんね。
「この色で良いかな?」
全部で金貨一枚もした。この世界では、金貨一枚あれば一カ月は生活出来るのに。
「お金いっぱいかかっちゃってごめんなさい」
「大丈夫だよ。サファイアもヒスイも家族だからね。この石が魔石だから高いんだ。この石に魔力を流して従魔登録するんだよ」
次が冒険者ギルド。H~SSまでランクがあって、Sランクは複数のギルドから認められた人。SSランクは国から認められた人だけど、今はいないらしい。
「従魔の種族は何ですか?」
「雪狼と、クルーバードの幼体です。サファイアとヒスイです」
「登録完了です。何か質問はございますか?」
「大丈夫です」
「冒険者業を復活したいんだが、今どのランクか確認してくれ」
「Aランクは長期間仕事をしなくてもランクダウンしませんよ?もし体が訛ったと思われるなら、下位ランクのお仕事でも大丈夫ですよ」
「そうか」
次は買い取りカウンターに行ってゴブリンの魔石四つとツノウシの魔石、火袋を出す。
「角と皮はお持ちでないですか?」
「皮はうまく取れなくて…ごめんなさい。角もないです」
まだ肉が付いてるし、こんな小さなリュックに入るはずないからね。
「大丈夫ですよ。ゴブリンの魔石は銅貨1枚、ツノウシの魔石は銀貨20枚、火袋は銀貨35枚。合計で大銀貨1枚と銀貨五枚、銅貨四枚になります。現金になさいますか?カードに振り込みますか?」
「じゃあ、大銀貨だけカードで」
「かしこまりました」
残りを受け取って、魔石の入っていた袋にお金を入れる。
お父さんは、バックから大量の魔石を取り出して、カウンターの人が顔を引きつらせていた。査定待ちということになったようだ。
「冒険者の仕事するの?」
「村がなくなってしまったからね。アレックスも来年から学校だし、ギルドの仕事をしていれば、違うツテを辿ってお母さんを探せるかもしれないから」
「ルーナも冒険者のお仕事する!」
「うーん、雪狼に、ルーナの魔法があれば何とかなるかな?ただし、剣の稽古もして、お父さんが認めてからだな。それと、その日のうちに帰れる仕事をする事。いいかな?」
「うん…分かった」
過保護過ぎるよ。お父さん。