モモ
家に戻ったら、シルキーがプレゼントをくれた。新しいワンピースで、華やかなデザインで、ドレスとしても着られそうだ。
よく見ると、縦糸にミスリルカイコの糸が使われている。横糸はシルクで、普段使いには勿体ない位。ていうか、少し大きいかな。あともう少し、身長130㎝位になれば丁度いいかも?
ミスリルが使われているので、付与もかなり付けられそうだ。自動修復と温度調節、クリーン…あとは防御強化かな?
「エレインのダンジョンはどうだった?」
「魚がいっぱいいた!ソードフィッシュが美味しかったよ」
「うん。あれは美味しいね」
「お土産にいっぱい採ってきたよ!」
「じゃあ今晩は焼き魚だね」
「それでね、リリーからシラコメを貰ったの。来年育てたいから、畑の一面を使っていい?」
「シラコメ?お母さんは育て方を知らないよ?」
「私が分かるから大丈夫。冒険しながらでも育てられるし」
「そう。ならいいよ。ただ、適度に休む事」
「はーい!」
シルキーが紅茶を入れてくれたので、蜂蜜を入れて飲んだら美味しかった。
ルーナはポケットからモモを出す。ここ数日間、元気がない。新技を編み出すので無理したのかな?
「モモ、無理しちゃだめだよ?」
モモは、ぷるんと震える。やっぱり、元気がない。
畑に植えられているのは、大根とネギ草と白菜。ただし、白菜は微妙に赤い。赤いのに白菜とは如何に?
丸い大根をすりおろして、魚に添える。お兄ちゃんがもうすぐEランクになるんだと自慢気に話していた。お父さんは今日は仕事で帰らないけど、しばらくぶりの日常だ。
暖炉の前で丸くなっているコハクは、本物の猫のようだ。
(ね、コハク、モモが元気ないんだけど、どうしたらいいかな?回復魔法は効いてないっぽい)
(モモちゃん?…そうね、疲れたというより体力が…モモちゃんて、何歳なの?)
(私とほぼ同じ歳だよ)
(うーん。それは寿命ね)
(えっ…)
(上位種は多少長生きするけど、普通は2~3年よ?モモちゃんは分裂もしていないでしょう?ルーナちゃんと会ったのが5歳の時だったら、その時点でかなりの老年ね)
(そんな…やだよ!お別れなんて!)
(ワタシみたく神の使いでもないし、ドラゴンみたいに長生きの種族でもない。むしろ6年以上生きたのが奇跡よ。ルーナちゃんと一緒にいたくて頑張ったのね)
(そんな…モモ、死んじゃうの?)
(ルーナちゃん、生きている以上、いつかは死ぬものよ)
(それは、分かるけど…嫌!まだ1年半しか一緒にいないのに!)
「ルーナ?どうしたの、泣いちゃって」
「お母さん…モモが死んじゃうの!コハクが寿命だって…どうしよう!」
「残念だけど、仕方のない事よ?スライムの生態はよく分かっていないけど、そう長生きしないんじゃないかしら?」
「うう…」
ずっと一緒にいてくれるのだと思っていた。コハクやオニキスが長生きだから特に。
でも、長生きな種族にだって寿命はあるし、人間だって同じだ。それでも、こんな急な別れが来るなんて思わなかった。
「嫌だよ…モモ」
私には、何もすることはできないの?見習い神様なんて言っても特別に何かできる訳でもない…自分の大切な従魔ひとり助ける事も出来ないなんて。
私は、モモを抱いて亜空間に入った。
いつの間にか眠ってしまったらしい。モモはまだ生きているけど、昨日より元気がない。触った感じも弾力がなくて、袋に入れた水のようだ。
(主、朝食をお持ちしたので入れて下さい)
オニキスを入れてやると、テーブルの上にお盆に乗ったパンとスープを置いた。
「ごめん、オニキス。モモと二人にして」
〈ご家族も心配なさってます。無理はなさいませんように〉
もし私がちゃんとした神様ならモモを助けられたのだろうか?神の力はどうやって使うのだろう。
魔封じの首輪を外した時、私はどうやった?思い出せないよ…モモ…モモともっと一緒にいたい。お願いします!神様!
モモが強い光を放つ。その中でモモに変化が起きた。ルーナはそれを見届ける前に、意識を手放した。
ルーナそっくりな姿。髪と瞳が桃色だ。自分と瓜二つなルーナをベットに寝かせ、亜空間から出た。
「コハク、リンゴ、ある?」
(やだあなた!モモちゃん?)
モモは、頷いた。
「私、眷族、なった。主様、危険」
(分かったわ!神様に頼んで来る!)
出て行ったコハクと入れ替わるように、他の従魔達が寄ってくる。
(うわあ!眷族にして貰えたんだね、いいなぁ。でもどうやって?モモは死ななかったの?)
「死んだ。主様のお力、再生と転生。私のまま、主様の元へ、戻れた」
(あんでっとー?)
「違う。私、生きてる」
〈何と羨ましい。モモは主の愛の力で眷族化したんですね!〉
「前以上、主様大切。愛して、いる。望んだ力、得られた」
(るーの姿、望んだのー?)
「話した、かった。そして、主様のお役に、立ちたかった」
コハクがリンゴを咥えて戻ってきた。
(でもモモちゃん、亜空間には、ルーナちゃんのスキルの中には入れないわよ?)
「大丈夫」
モモは亜空間の中に入っていった。
(えー!モモずるい!)
(眷族化の影響かしらね?羨ましいわ)
モモは、自分の指から斬糸を出して、リンゴを薄く切った。
「主様、お許し下さい」
このリンゴを食べたくないのは分かっていたけれど、今は尽きかけている力を、回復させるのが優先と判断した。
眷族化したから、魔力が足りなくなればモモの魔力が行くはずだけど、今足りないのは神の力だ。
収納庫にリンゴが入っていれば、モモにも出せた。けれどアイテムボックスは神の力だから、モモにはどうする事も出来なかった。
主様に、収納庫の力を祝福で頂こうか?眷族化して頂いた恩に報いる為に、もっと強くなろう。私は主様の為にあるのだから。
モモ(ー) ルミナリアの眷族
神聖スライム
レベル112
スキル
火魔法 聖魔法 消化 吸収 ジャンプ
高速飛翔 気配感知 人化 念話 斬糸
インパクトウイップ 状態異常耐性
苦痛耐性 結界
見習い神ルミナリアの加護




