再会と親戚
(ルーナ、僕に乗って。方向教えてくれればいいから)
「その前に、ゴブリンの死骸焼かないと、アンデットになったら嫌だから」
サファイアの背中に乗って、倒したゴブリンの所まで行く。油がないけど、火魔法だけでいけるかな?因みにヒスイは私のポケットが気に入ったみたいで、寛いでいる。
死骸を火魔法で焼こうとするけど、今まで殆ど使った事のない魔法だからか、強くイメージしても、火力が上がらない。
ポケットから飛び出したヒスイが、頭の上に止まる。
「ぴっぴっ!」
ヒスイの鳴き声に合わせて火力が上がる。応援のスキルかな?何とか燃やし尽くす事が出来た。
(ルーナ!また来たよ!)
そのまま三匹のゴブリンにファイアーボールを当てるけど、倒れない。
「ガウッ」
サファイアの咆哮で、ゴブリンの動きが止まる。私は双剣で首筋を狙って振り抜いた。
『ヒスイのレベルが上がりました』
ゴブリンのべとべとの血がべったりと付いた。二度、三度とクリーンをかけるけど、まだ気持ち悪い気がする。魔石を取ってくれたサファイアにも、思いっきりクリーンをかける。
火魔法でゴブリンを焼き払おうとして、もう一段階上の火魔法が使えそうな事に気がついた。
応援するつもりなのかヒスイが頭の上に止まるけど、そこはどうなんだろう…。まあ、可愛いからいいか。
魔石をしまって、お母さんの手作りリュックを背負う。ちょっと小さくなったみたい。
サファイアの背に乗り、村を目指す。風当たりが強いので、結界を自分の身に纏わせるようにイメージして使ったら、楽になった。
ヒスイは勿論私のポケットの中で、飛ぶ気は無いようだ。まだ生まれたてだから仕方ないよね。
遠くに村が見えて来た。マップのレベルがいつの間にか上がったのか、村の中に光点が見えた。倍以上に範囲が増えてる気がする。
(サファイア、気を付けて、村に誰かいる)
村に入る前に、サファイアには小さくなってもらった。村の中は酷い有様だった。焼け焦げて誰か分からなくなった遺体を見つけた時は、足が竦んだ。殆どの家が焼け落ちていて、途方に暮れたけど、マップに映る光点に気が付いて、はっと顔を引き締める。
「ルーナ!良かった。生きていたんだな」
懐かしい声に駆け寄る。
「お父さん!お母さんが…みんなが、攫われたの!」
抱きしめられて、頭を撫でられて、ルーナは緊張の糸が解けたように沢山泣いた。
「村の方から煙がみえて、急いで駆けつけた時には遅かった。火事場を荒らしていた奴らを捉えたが、下っ端には何も知らされていなかったのか、行き先は分からない。だが、必ず見つけ出す。領主様にも知らせて、直ぐに捜索に当たってもらっている」
「ルーナも探す!」
「落ち着きなさい、ルーナ。アレックスは今、ボルドーの街にいる。無事な姿を見せてあげないと。それと、ルーナはどうやって助かった?」
街道を外れ、森のそばを通った時に魔物の囮として投げられた事を伝えると、父は顔をしかめた。
「そうか。怖い思いをしたんだな。よく頑張ったな。向かった方向も分かったし、報告しないといけないな。所でその犬は?」
「森で気を失っている時に私を守ってくれたの。あと、この子も仲間になってくれたの」
ポケットからヒスイを出す。
「そうか。ルーナは動物に好かれるからな」
「ううん、テイムしたんだよ」
「!テイムだと?じゃあこの大人しそうな犬も、小鳥も魔物なのか…よく懐いているから、従魔で間違いないんだろうな」
ヒスイは違うけど、まあいいや。
「サファイアと、ヒスイなの」
「そうか、良かったな」
普通は、幼い子は自分の魔力を制御するので精一杯なのだがな…マリーの言うとおり、魔法神の加護持ちなのか?
「フレイド様!生存者ですか?」
「俺の娘だ。奴らがどっちに行ったか分かった。報告に戻るぞ」
近づいて来るのは見たことない人達。
「ボルドーの街の兵士達だ。大丈夫だよ」
いや、何でその兵士の人達に指示出してるの?村長だから?
馬車に乗り、サファイアを抱っこして父にもたれかかると、安心感からルーナはすぐに眠ってしまった。
領主の館があるボルドーの街はとても大きく、レンガ敷きの道路に沢山の店、建物。ルーナはすっかり興奮してしまって、馬車から身を乗り出して父に腰を支えられている。
「アレックスが5歳になった時も来たんだが、ルーナは小さかったから忘れてしまったかな?」
幼児の記憶力に期待しないでほしいな。
「あれ教会だよね!行きたい!」
漆喰の塗られた白い建物は、ひときわ目を引いた。
「本当なら今日、行くはずだったものな。だが明日でもいいだろう」
「うん。明日教会」
馬車は大きなお屋敷に入っていった。お父さんに手をつながれて屋敷に入ると、執事服のおじさんが来た。
「お帰りなさいませ、フレイド様。おや?そのお嬢さんは…!ルミナリア様ですか!ご無事だったのですね!」
「落ち着け、セバス。兄上は?」
「執務室にいらっしゃいます。あの、その犬は?」
「従魔だ。心配ない」
フレイドは、ルーナの手を繋いだまま、階段を上り、扉をノックして開き、中に入った。広い部屋に、大きな机。本棚にはぎっしりと本が詰まっている。
顔を上げた部屋の主は、父と同じ怜悧な紫の瞳をしていた。私は、髪の毛は母さん似で、目の色はお父さんと同じ紫色。
「フレイド、早かったな」
「レグルス、ルーナが見つかったんだ!」
「何?!ルーナ!良かった…無事だったんだな。昨日は見つけられなかったのか?」
目元が緩むと、とても優しい表情になった。
机を離れて、応接テーブルの向かいに座る。すぐにメイドさんが入ってきて、お茶とお菓子を出してくれた。
凄い美味しい!蜂蜜の香りがするその焼き菓子は、口に入れるとほろほろと崩れた。思わず複製して、アイテムボックスにしまう。
父達が話しあっている間に、サファイアに念話を送る。
(サファイアも食べる?)
(肉じゃないから要らない。ヒスイの事は、このまま従魔って事にした方がいいと思うよ。それと明日、ステータスボードをもらったら、多すぎるスキルも隠した方がいいと思うよ)
(それは私も思ったよ。でも、魔法神の加護は出しておいた方がいいよね)
(無詠唱で魔法使ってたのなら、出しておいた方がいいね。後はルルティア様位かな。幸運と、人とか動物とかに好かれやすくなるから)
(私、前世でも動物に好かれてたんだけど?)
(それは分かんないよ。お祈りを沢山すると、神様の声が聞こえたり奇跡が起きたりするから、ルーナなら話せたりもするかもね)
(分かった)
「ルーナ?犬がどうかしたのかい?」
「え?犬?」
「あの、サファイアです。この小鳥がヒスイ」
「ルーナの従魔らしい」
「驚いたな。静かだから気が付かなかった。しかし、凄い才能だな。この歳で従魔とは。登録もしなければならないな」
「その前に、教会だな」
「ははは。ステータスボードを見るのが怖いな」
「俺の娘は天才なんだ」
「ねえ、お兄ちゃんは?どこ?」
「そうだな…ちゃんと会わないとな」
客間の一つが兄の部屋になっているらしい。部屋に入ると、アレックスが体を起こした。側にとても綺麗な女性がいる。
「起きて大丈夫なのか?アレックス」
「うん。熱も下がったよ!ルーナ!」
「お兄ちゃん…手が」
ルーナはがく然とした。アレックスの左肘の下がない。慌てて駆け寄り、ハイヒールと、最近覚えたメガヒールを使うが、腕は戻らない。
「ごめんね、ルーナ。ヒールじゃ腕は戻らないんだよ」
「部位欠損を治せるのは、聖王国の教皇様か、エルフの王女様位なの。お兄様に相談したけど、難しいと思うわ」
「光魔法じゃ、治らないの?」
「光魔法の上位、聖魔法の上のレベルらしいわ」
クリーンなら沢山使っているけど、メガヒールも覚えたばっかりだからな。所でこの人だれ?
「私はレグルスの妻ミーティアよ。私の兄は、アクシス王国の国王なの」
「ルーナから見たら叔母だな」
「ちょっとフレイド、おばさんはやめてよ。まだそんな歳じゃないから」
「いや、三十路はおば…ぅぐ」
元Aランク冒険者に避ける間も与えないなんて、凄い。さすが?元王女。ていうかハイスペックな親戚が凄い。
まあ、跡を継がなかったお父さんは準爵扱いだから、私は平民だけど。
「うん。ルーナちゃんは可愛いわね。やっぱり養女にすべきかしら」
「待ってくれ姉さん、ルーナは目立たせたくない。明日ステータスボードももらって、レグルスとも相談しないと」
「お父さんがいるのに、養女なんて嫌だよ」
「ああ、そういう事ではなくて、貴族の、女の子の血縁者にはよくある事なんだ。父さんの娘じゃなくなる訳じゃないんだ。ルーナにはまだ、難しい話だな」
どこぞの貴族と親戚になるとか、そういうものだろうな。ていうか私まだ5歳なんだけど。