お食事処の恩恵
酔ったバートの独身宣言に、兄様が血筋がどうのとか言い含めてたけど、公爵が独身はまずいのかな?
私は好きに生きていいって言ってくれたけど、そもそも6歳児に振る話題でもないと思う。
現王は男の兄弟がいなかったから大変な思いしたんだろうけど、バートの上には優秀なお兄さんが二人もいるのに。
前王も現王も一途な人で、奥さんは一人なんだそうだ。
バートもそんな人付き合いは上手な方じゃないから、次の人を見つけるのは少し時間が欲しいだけじゃないかな。
周りで色々言ってもこういう時は無駄だよね。
前世の記憶があっても子供のうちに死んじゃったし。
フロルさんはいい人だし、私に気を使ってくれてるのも分かる。義妹が聖女だから、余計に気を使うのかな。普通でいいのに。
そんな訳で、今は微妙にボルドー伯爵家から足が遠のいている。美味しい物を作るのは、料理長さんの所がいいんだけどな。
シルキーは言葉が通じないから、新しい料理を伝えにくい。感情だけがお互いに通じるのはモモと一緒だけど、シルキーは私の事を喜ばせたいみたいだ。家妖精のプライドもあるのかな?
(るー、精霊達からプレゼントなのー)
ヒスイが持って来たのは、小さな小瓶。
看破 白花の雫 甘い香りを付ける調味料として使われる。ニスタの町のダンジョン産
蓋を開けると、バニラの香りがした。
(精霊達っていつも私の周りにいる子達?)
(そうなのー。るーに恩返しなのー)
(嬉しい!ニスタの町って聞いた事無いけど、外国かな?)
(んー?)
ヒスイには分からないみたいだけど、あっただけで嬉しい。さすがに外には出せないけど、私と従魔達で楽しもう。
旅に出て、ダンジョン巡りも面白そう。新たな食材を求めて旅に出たい。
家の敷地内にある隊員宿舎の横に立てられた見張り塔の上から見る景色は街全体と、国境まで見える。風が気持ちいい。
飛んで来た虫をモモが触手を伸ばしてやっつける。
看破 チョッパ ランクD 鱗粉に麻痺毒を持つ
ガだね、これは。ぺたんこに潰れている。ここまで思い切り潰す事ないのに。そして私も、看破しなくていいのに…ん?モモが喜んでいる?
あ、モモが新しいスキルを覚えたみたい。
インパクトウイップか。よかったね!モモ。
モモはあまり私の役に立てない事を気にしていたのだ。役に立てなくても、ぷにぷにピンクなモモは私の癒しなんだから、気にしないでもよかったのに、のんびりした性格のヒスイと違って、モモは繊細なのだ。
そのヒスイといえば、ポケットに入れなくなったので、専ら私の頭の上にいる。重くは無いけど、微妙。
ぷるぷる震えて、モモが喜んでいる。頭を撫でてあげたら、照れていた。次は私の番とばかりに体をすり寄せてきたヒスイも撫でてやる。
うちの子達はスキンシップが大好きだ。あの図体のでかいオニキスだって、頭を撫でてあげると喜ぶ。
私も従魔達は大好きだ。要らないって言ったオニキスだって、今では欠かせない存在になっている。竜化したオニキスは、鱗がひんやりして気持ちいい。そして何とも言えない安心感がある。
サファイアとコハク、ヒスイのもふもふ三人組は、手触りが最高だ。
従魔達は、私にとって欠かせない家族だ。




