お父さんの実力と、私の夢
庭でストレッチを始めたら、お父さんも始めたので、久しぶりに一緒にやった。
「ルーナも大きくなったなー!」
軽々と抱っこされちゃう位には小さい。
「昨日は何の仕事受けたんだ?」
「ミノタウロスの角を取って来たんだよ。オニキスの住んでいた山に飛んで行って来たんだけど、疲れて寝ちゃったから、今日納品に行かないと」
「おい!あそこの山は危険なんだぞ!ミノタウロスなら東南の森にいるだろう!」
「そうなの?知らないよ。今まで飛べなかったから距離が限られていて、この前みかけたから行って来たんだけど」
「ギルドの受け付けで聞かなかったか?」
「いや、見かけてたから」
「うっ…まあ、オニキス殿もいたしな」
〈確かにいましたが、多くの魔物を狩ったのは主です〉
「今まで魔法ばかりだったから、ちゃんと戦った方がいいと思って」
「…ギルド行くぞ?ルーナ」
「ええっ?」
「朝ご飯の用意できてるよ」
お母さんとシルキーが、一緒に洗濯物を持って出てきた。
シルキーは、家族に姿を見えるようにしている。お母さんは、言葉が通じないなりに上手くやっているようだ。
ギルドに行って、解体場に出したら、全部で200体を超えていた。
ミノタウロスの肉5体分と魔石を残してもらって、青ざめる解体場の人達に秘技、天使の笑みで可愛いらしくお願いして、査定待ちの札を受け取る。
受け付けで依頼完了の手続きをしていると、
「フレイド様も一緒に受けられたんですよね?」
「いや…」
「あ、はい!ほらお父さん、ギルドカードださなきゃ!」
「…。そうだな。ではこれで」
「ご苦労様でした。本日は何か仕事を受けられますか?」
「いや!また来る」
「しかし、どれだけ収納庫に入るんだ?」
「さあ?考えた事もなかったな。普通はそんなに入らないの?」
「いや、お母さんの収納庫もかなり入ったが、あそこまではどうかな?亜空間は覚えたか?」
収納庫にはまだまだ余裕があった。でも、お母さんも加護持ちだから精神の値は高いと思う。
「うん。入ってみる?」
私の亜空間は、王都位ならすっぽり入っちゃうと思う。その内の50メートル四方位を部屋にしてある。
オニキスが竜のまま入ってもまだまだ余裕がある。
今は棚でなんとなく仕切っているけど、お風呂もあるし、衝立があった方がいいかな?私達以外の人を入れるなら、別にゲストルームを作ってもいいし。
家に戻ってお父さんとお母さんを入れてあげたらすごく驚いていた。お母さんの亜空間は、この10分の1もないし、加護を持ってない人のスペースは、一部屋分位のようだ。それも覚えるまでに何十年とかかるらしく、本当に信用できる人以外は入れちゃダメだと言われた。
お母さん達を入れた時に亜空間異動の魔法を覚えた。
単に異動出来る訳じゃなくて、亜空間を開いた所に異動出来るようだ。行った所ではなく、亜空間を覚えてからの所だから、王都なら行けるけど、海やダンジョンの町は無理。あとで飛んで行ってゲートを開いておこう。
どうやらお父さんは模擬戦をして私の実力を知っておきたかったようだ。双剣は鞘があるけど、棒は物干しざおをかける棒を借りた。念の為に強化をかけて折れないようにする。
お父さんは木剣を構えた。私は棒で長く持って払い、手を滑らせて中央を持ち、打ち払う。
やっぱり私はまだまだだ。数字では勝っていたとしても、技術が追いつかない。しばらく打ちあって、痛感する。武器を双剣に変えても、結果は同じ。お父さんには追いつかない。
「たった一年で、こんなに伸びるのは凄い事だぞ?正直甘く見ていた。しかも得意な魔法を使わずにだ。6歳で既に大人顔負けの冒険者だな」
「まだまだだよ。お父さんやオニキスには通じない。私はまだ弱いと思う」
「そう簡単にAランクの冒険者に勝てては困るよ。まだ体も小さいから、充分に戦えないだろうしな。でもこれからが楽しみだな。下手な所に嫁に出せない分、自活出来るようにならないとな」
「私ね、ラース国に行って陸稲を手に入れたいんだ。ダンジョン攻略も、途中で終わっちゃってるし、行きたい所がいっぱいあるの!」
「そうか。陸稲は分からないけど、ラースには昔行った事がある。頼りになる従魔もいるから、ルーナなら行けるだろう
…しかし、少し淋しいな。ルーナはまだこんなに小さいのに、お父さん達の手を離れてどんどん遠くに行ってしまう気がする。その上神になったらお父さん達はどうしたらいいんだ」
「やめてよお父さん。私には変わりないんだから。私にはお父さんとお母さんが二人ずついるとっても幸せな子供だよ」
因みに私のレベルは85まで上がっていた。あまりにも急激にレベルアップしたから体が対応しきれなかったのだろう。上がった能力に対して体に違和感もあるし、自分の感覚が慣れるまではしばらくレベルアップしない方がいいだろう。
ギルドに収めた魔物の買い取り額は、全部で白金貨5枚と金貨28枚にもなった。
因みに山に棲むミノタウロスはAランクの魔物だった。
森に棲むミノタウロスより強いらしい。
魔石と肉も戻してもらって、私は次に欲しい魔道具の事を考えていた。
やっぱり冷蔵庫だろう。冷蔵庫の魔道具はあるけど、冷凍庫はない。そろそろアイスの美味しい季節だし、是非作りたい。また父様の屋敷の料理長さんに協力してもらおう!
バニラは見つかっていないからただのミルクアイスになっちゃうけど、フルーツを混ぜたらいろんな味も楽しめるし、果実水に乗せてフロートにしてもいい。
因みにミノタウロスのステーキは、大変美味でした。




