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シルキー

 六歳になった。お父さんからの誕生日のプレゼントは、あの時吹き飛ばしたオニキスの鱗から作った腰から下の防具。特注品だ。

 上半分はがら空きになるけど、父様がくれたミスリルのネックレスにオニキスが、絶対防御の付与をパスを通して伝えてくれたので、付ける事が出来た。

 一つしか付かないけど、かなり強力な力なので、それ以上を付ける余裕がなかったのだ。私の瞳の色と同じ紫の輝石の付いたネックレスは、普段使いには勿体ないけど、私にとっては防具なのだ。

 お母さんはケーキを焼いてくれたけど、干し果実入りのパウンドケーキは硬過ぎて、アゴが疲れた。

 ちょっと?おおざっぱな所もあるけど、お母さんの料理は大好きだ。…もうちょっとだけ焼き加減にこだわってくれたらいうことはない。

 それと、ギルドランクが二つ上がった。何故Dランクまで上がったかと言うと、食肉採取の依頼で高ランクの魔物肉をたくさん出していた事かららしい。

 Cランクに上がるには試験が必要だけど、最低でも10歳からしか受けられない。子供に無理な依頼をさせない為と、護衛依頼をこなせない事が理由らしい。

 仕方ないと思う。私が依頼主でも、こんな子供に守れるのかって思うし、パーティーを組んでいないから。

 オニキスはAランクまで行ったらしいけど、その時のギルドカードは使えない。怒ってたけど、200年も前のカードじゃ仕方ないと思うんだよね。

 またHランクから始めるみたいだ。4年もあればオニキスなら余裕で高ランクまで行くだろうけど、私は旅に出たい。

 それと、近いうちに引っ越すようだ。ボルドーの街で探しているけど、なかなか難しいみたい。と、思っていたら、父様から私に指名依頼が来た。

 屋敷からは離れているけど、ユグル共和国へと続く道沿いの街外れの一軒家で、今は絶えてしまった前領主のお屋敷。

 街の防衛拠点ともなるため、おじいちゃまのお父さんが領地を受け継ぐ事になった時に、ここに住もうとしたけれど、家妖精に追い出されてそれ以来、ここを買い取りたい人が現れても、誰も住む事が出来なかったようだ。

 ヒスイの祝福の精霊視がある私に、依頼が来たのだ。

 誰にも姿は見えないし、幽霊だったら怖いな。

 時々いる勘のいい人には、ほんのりと光る球が窓の外から見えるらしい。

 念のために私は、ヒスイだけを連れて行った。万一他の従魔を連れて行って、へそを曲げられても困るから。


 屋敷を囲む塀には蔦がびっしりと生い茂り、広い庭は草木が無節操に伸びている。それを何とかかき分けて屋敷に行くと意外にもちゃんとしていた。

 大きな屋敷は50年以上ほったらかしとはとても思えない。壁にも蔦の一本もないし、レンガの崩れもない。ヒスイに飛んで確認してもらったけど、屋根もちゃんとしているようだ。

 鍵を使って扉を開けると、中にはチリ一つ落ちていない。精霊視のスキルをオンにすると、私は前以上の電飾人間になっていた。

 エントランスの右側の扉が半開きになる。ヒスイを頭に乗せたまま覗くと、長く続く廊下の左側のドアが半開きになっている。

 中は応接室になっていて、立派な革張りのソファーが目についた。

 もちろんソファーにも前に置かれたテーブルにもホコリがついていない。幽霊はそうじしないから、家妖精で間違いないだろう。

 そういえば私、普通に入っているけど、大丈夫なのかな?

 なんとなくソファーに座ると、ミルクティー色の髪の綺麗な女性が、紅茶を淹れてくれた。

「あの…?」

 シルクのドレスを纏った貴婦人は、私に穏やかに微笑みかける。

 香りの良い紅茶を飲んで、さてどうしよう?住めればここは私達家族が住んでいいらしい。報酬が家だなんて破格の依頼だけど、今まで放って置くしかなかったし、街道の要所だから父様としては押さえておきたい所だろう。

「あの、ここに住んでもいいですか?」

 頷く様子を見て、大丈夫だと思うけど、話せないのかな?

(しるきーはお家の妖精だから、ヒスイには分からないのー)

「シルキーさん?家族とここに住んでいいですか?」

(るーの魔力をあげればいいと思うのー)

 魔力譲渡でいいかな?

 私の意図を察したシルキーが、しゃがんで私を引き寄せた。と思ったら、唇を奪われた。魔力が抜かれる感覚がして、従魔とはまた違うパスがつながった感じがした。

 シルキーは喜んでいるみたいだ。感情が伝わってくる。

「ありがとう。また来るね」

 今度来る時にはきっと、庭も綺麗になっていると思う。長い間誰からも魔力をもらえなかったシルキーは、屋敷を維持するので精一杯だったのだ。

 命に関わるのに他の住人を受け入れなかったのは、シルキーのお眼鏡にかなう人がいなかったから。

 とりあえず依頼完了かな。…ファーストキスは奪われたけど女の人だし、妖精だからノーカウントだよね。



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