王都 5
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お母さんが元気になるまで傍にいたかった私は、教会に来てくれる人を待たせるのも嫌なので、モモを行かせる事にした。
ただ、モモは魔力が少ないので、短時間だけだ。
朝送り出して間もなくモモの怠さを感じとったので、慌てて従魔召喚をモモに使う。お母さんは急に私の手にモモが現れた事を驚いていたけど、今はモモが先。
どうやらハイキュアを何人かに使ったらしい。
私の豊富にある魔力を分けてあげられたらいいのに。
あ、補助魔法の魔力譲渡を覚えた。
早速使ったら、モモはすぐに元気になった。レベルアップや経験で覚えるんじゃなくて、必要に駆られると覚えるものらしい。変わってる。
そういえば羽根は相変わらずそのままで、普通の服も着られない。今は背中の大きく開いたワンピースを着ている。
皮のベストも着られないから、防具をどうしようかと思っている。お金がないから、もうすぐ来る誕生日のプレゼントにねだってみようかな?ウォーターベアの皮が余っているから、それで作ってもらってもいいし。
その前に、羽根を何とか出来ないか、神様に相談してみようかな?
「お母さん、ちょっとだけ出掛けてくるね」
とりあえず教会へ。時間をかけたくないから、治療はごめんなさい。
気配隠蔽と忍び足を使うけど、強い気配感知を持っている冒険者には見つかっちゃうんだよね。姿が見えなくなる訳じゃないから。
神々の像の前に立って祈ると、久しぶりの浮遊感。
いつもの白い空間に、六柱の神々。
「お母さんが戻って良かったの。ルーナ」
「はい!すごく嬉しいです!」
「あ奴には、しっかり神罰を与えたからの。ルルティアの罰は、もう誰からも信頼されんし、愛されなくなる。
儂からは月並みだがスキルの封印と、殺された者の追体験。悪夢じゃな。あやつが直接手を下した訳ではないが、ルーナがあ奴の心を読んだから、明るみに出た。
他にも加担した貴族らに、相応の罰を与えた」
うわ。神罰って本当に怖いんだな。この世界はスキルが全ての所があるから、法的にあの人がどうなるか分からないけど、これからの生活でずいぶん困るだろう。なんせ魔法さえスキルなんだから。
でもあんな酷い事をしてたんだから、当然とも言える。あの時私は、あの人の全てを読んだ。思い出したくもない記憶。あの魔法は、あれ一度きり、二度と使わない。絶対に。
「それで、羽根の事なんですけど」
「うん?神気がルーナの望んだ形をとったのだが。光るのが嫌なのじゃろう?」
「はい…確かに光らなくはなりましたけど、消したりは出来ないんですか?」
「無理じゃな。既に神気はルーナの物だから、儂らが取り上げる訳にもいかん。ルーナは空を飛びたいのだろう?丁度よいではないか」
そういう問題じゃないけど、仕方ないのかな。幸い、畳めばマントに隠れるし。
「神気の使い方は色々あるが、慣れんうちは程々にな」
その前に、神気が良く分からないけど。
「そうじゃな。魔封じの首輪を壊したのがその力じゃな。儂らにとっては何でもない小さな力でも、慣れないから一日寝込んでしまったのじゃな」
「コハクの守護の力で人体に影響を及ぼさないようにしてあったのだから、後で鍵を壊すなりすればよかったのだ」
ごもっともです。ログウェル様。
「お母さんを早く助けたかったのよね、ルーナちゃんは」
「まあ何にせよ、そう急ぐ必要はない。儂らの仲間になるのもな」
それって決定なのかな?
「あなた次第だけど、もう魂はこっち側なんだから、遅いか早いかの違いね」
俗にいう、棺桶に片足突っ込んでる状態か。
「嫌ね。縁起でもない。言葉はアレだけど、意味としては合ってると思うわ」
「はあ…ありがとうございました」
「では、またの」
「あら天使様、いらしてたのですね。よろしければ本日も癒しをお願いします」
呼び方が聖女から天使になってる。
「じゃあ、エリアハイキュア。今日はもう、帰ります」
前に会った、バンさんのお店を覗く事にした。武器だけじゃなくて、防具も扱っているようだ。当然だけど、背中が空いた防具はない。あるとすれば防御力の怪しいビキニアーマーだけど、恥ずかし過ぎて無理。それ以前にぺったんこなんだから、ないわ。
「おう、どうしたい?天使の嬢ちゃん。この前はありがとな。おかげで若い頃に体が戻ったみたいだ」
「えっと、皮のベストが着られなくなったので、何かないかなと思いまして」
「うーん。難しいな。まだちっちゃいからマントだけで済ます子も多いが、腹がガラ空きになるからな。防具は専門じゃないけど少し考えさせてくれ」
「アイデアだけでもいいのでお願いします」
それにしてもお父さん、遅いな。随分先に、連絡は行ってると思うんだけど。




