王都 3
お母さんの魔力を思い出して、魔力感知を使って何度も探しているけど、王都は広いし、人も多くて探しきれない。
そういえば、マスクメロンだと思って買ったのは、モロンという名前で、味は桃だった。
桃味のフルーツは他にもピーモっていうスモモ位の大きさの物があるけど、食感はしゃりっとしている。モロンの方が果肉が柔らかくジューシーで、美味しい。
王都にある教会でも、お手伝いする事にした。キュアだけだけど、私のキュアは普通治らない古傷とか腰痛、膝の痛みなんかも治るらしい。
何が違うのか分からないけど、噂を聞きつけてたくさんの人がやってくる。
王都は広いから、教会も三カ所ある。
私が行っているのは、一番近いけど、平民も行く教会。最近はコハクが抱っこしなくても、十戒のように人が割れる。歩くのを邪魔しない為の配慮なんだろうけど、少し恥ずかしい。
聖人のおじさんはどうやって発光を羽根に変えたんだろう?羽根でも目立つけど、マントに隠せるかもしれない。
あ、でもそうすると、防具の皮のベストが着られなくなるのか。そして服も、制限されると思う。
自由に出し入れ出来ればいいけど、そう簡単にはいかないと思う。
今日もキュアをかけていたら、見覚えのあるおじさんが来た。武器屋のおじさんで、私の下げていた双剣が気になって、見せてあげたらすごく良いものだと褒めていた。肩が痛くて武器を打つのが辛いって言ってた。
「昨日の武器屋さんですよね?まだ肩、痛いですか?」
「ごめんね、実はそうなんだ。長年槌を振るって来たから、仕方ないのかもしれないけど」
「診せて貰えますか?」
肩は、治っている。カチカチだった筋肉もちゃんとほぐれているし。…これ、首から来てるのかな?キュアは一部分しか治さないし、私も流れ作業の感覚でやっていたから、全く気がつかなかった。念のためにハイキュアをかけて、腕を回して貰う。
「今度はすっかりいいみたいだ。ありがとう。お礼に今度店に寄ってくれ。サービスするから。もう一本向こうの通りのバンの店だ」
おじさんは募金箱にお金を入れて帰っていった。
少し申し訳なく感じる。流れ作業でキュアをかけるだけじゃダメなんだ。原因が別の所にあったら、キュアだけじゃ治らない。
今度からは、ちゃんと話を聞いてからキュアをかけるようにしよう。
「次の方どうぞ」
入って来たのは身なりのいい壮年の男で、貴族なのだと一目で分かる。変な匂いの香水や、高価そうなアクセサリー。
「どうされましたか?」
「子供を授かりたいので、祝福を受けたい」
「それは神父様のお仕事なので、私には」
「神父では無理だから言っている!」
被せ気味に言われて、びっくりした。
「それに過去の聖女はそういった祝福を授けられたから、出来るはずだ」
「はぁ…私、つい最近聖女と呼ばれるようになったばかりなので、よく分からないです」
レレイ様の加護の祝福とは違うと思うし、本当に分からない。
「神父がやるようにやってくれればいい。男子が授かるように祝福してくれ」
「分からないので、神父様に教わらないと…ちょっと聞いてきます」
神父様にお話を聞いていたら、アシル叔父さんが来て、今日の所は中の人に帰って貰うように言われた。どのみちそういう祝福は、夫婦に授けるものなので、今は無理だ。
衝立の向こうの人に説明すると、出張してほしいと言われた。でも動けない人でもないだろうし、兄様の許可なく他の貴族に関わるなと言われているので、アシル叔父さんに言われた日にちを言って、それまでに祝福の仕方を教わります。と言って帰ってもらった。
何でアシル叔父さんがいたのかとか、どうしてそんな事を言ったのか気になったけど、もう夕方なので一緒に帰る事にした。
食後に、兄様とアシル叔父さんに今日の事について話があると、呼ばれた。
「ルーナは呪いを解除する事は出来る?」
「うん。ディスペル使えるよ?」
「魔道具を一時的にでも効果をなくすことは?」
「そういう魔法はないけど、人に効果を及ぼす物なら、コハクとヒスイの持ってる守護のスキルで何とかなると思う…ね、さっきの貴族の家にお母さんがいるの?」
「そう。黙っていてごめんね。でも絶対に行動を起こすと思っていたし、違法奴隷を借金奴隷と偽って所持していた事の証拠も見つかった。他の捕縛の為の証拠も粗方揃っているし、王に許可も頂いた。三日後、決行する」
「お母さんは、魔法を封じられているっていう事?」
「そうだね」
「私…ずっと疑問だった。お母さんがあっさり捕まった事。…本当は奴隷にしたかったのは、お母さんだけ?」
兄様が、頭を撫でてくれた。
「本当に頭がいいね。ルーナは。気がつかなければ、嫌な思いもしなくて済んだのに」
知ってたから、余計に私に関わらせたくなかったんだね。
「大丈夫…今は、お母さんの事だけに集中する」
「変に怪しまれないように、普通に過ごしてね?」




