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コハクの人化と王都

 真っ白な草原を、風のように走る。

(どれ位で着くの?)

(休憩を入れても夕方迄には着くかしらね?)

(凄いね!馬車だと三日かかるのに。時速何キロ位出てるの?)

(なあに?それ)

(あ、ごめん。どれ位速いのかなって)

(ルーナちゃんが大丈夫なら、もっと速く走れるわよ?怖くない?)

(怖くないよ。凄く快適)

(わたちも速く飛べるようになったのー)

(うん。ヒスイは頑張っているよね。モモも。コハク達は毎晩何やっているの?)

(ふふふ。もう少しだけ待ってね)

(少しか…はぁ)

 一体サファイアは何をさせられているんだろう?無理はしないで欲しいな。

(そろそろご飯にしましょう?)

 最短距離を走っているので、道ではないここは、人目を気にする必要がない。亜空間に入る時は、人が消えていくように見えるので、注意が必要だ。

(コハクも肉でいいって言うけど、猫は魚じゃなくていいの?)

(小さくなっている時は猫っぽくしてるけど、私は虎なのよぅ)

 まあ、本人がいいなら、それでいいんだけどさ。

 ご飯を終えてしばらく走ると、王都の城壁が見えて来た。そして、門の前に長蛇の列。

(王都は、門に入る前に犯罪者チェックされるんだね?)

(そうみたいだね。時間かかりそう)

(それはいいんだけどさ…本当に今更なんだけど、子供一人に従魔だけの私達、入れて貰えるかな?)

(本当に今更だね。でも家出とか、そんな風に見られるかも)

(補導されるかな?)

(ん?ルーナって、たまに分からない言葉使うよね?)

(あ、保護者が来るまでちょっと待って、みたいな)

(るーは聖女だから、一人で歩かせて貰えないかもー)

(あーもう!仕方ないわね!私が護衛になってあげるわよ!)

(コハクが私を守ってくれてるのは分かるけど、猫の姿だし)

(本当はきちんと出来るまで、見せるつもりなかったのに…仕方ないわね)

 コハクが人になった!ていうか獣人?…いや、それ以前に、明らかに男性にしか見えないのに、フリフリのワンピースって、どうなんだろう。〈ごめんなさい!見せるつもりは無かったから、人化のスキルは隠しておいたの!〉

「いや、それはいいんだけど、ちゃんとスキル使えてるよ?」

〈全然駄目よぉ。耳と尻尾が!これじゃ獣人じゃないのよ!〉

「え…問題はそこなの?」

〈大ありよ!ワタシは常に完璧を目指しているのよ!さ、これで問題ないわね。王都に入るわよ!〉

 問題、ないのかなぁ?

 長い列の一番後ろに並んだら、光ってる私が聖女だとばれて、どんどん前に送られる。希望者にはヒールやキュアをかけてあげて、一番前まで来た。

「聖女様、ようこそ王都に。伯爵様はご一緒ではないのですか?」

「はい、コハクが護衛してくれてます」

「こっ…こちらの男性が?」

 ほら、やっぱり思いっ切り引いてるじゃん。

〈アタシはオンナよ!失礼ね!〉

「えっと…心は乙女らしいです」

「では、水晶に手を」

 あー、かなり疑ってるな。当然普通に光るだけだけど、他の門番さんと、何やら相談している。

「一応、真偽官に会って頂きます。聖女様に何かあったら大変なので」

〈失礼ね!アタシのどこが怪しいのよ!〉

「何も無ければ、すぐに済みますので」

「コハク、仕方ないよ」

 だって実際怪しいし。これで男の服を着てたら怪しまれなかったんだろうけど、完全に自業自得だよね。

 門の隣にある物見の塔に連れて行かれて、ヒスイ達従魔もチェックされた。真偽官はフードを深く被った人で、ここの隊長さんらしき人と一緒にいる。テーブルの向かい側にコハクが座り、私はサファイア達と、違う椅子に座っている。

「お前が聖女様の護衛というのは本当か?」

〈だからそう言ってるじゃない!ワタシがルーナちゃんを守っているのよ〉

「嘘は言っていません」

「脅して護衛してるんじゃないのか?」

〈違うわよ!ルーナちゃんはワタシを信頼しているのよ!〉

「嘘は言っていません」

「はぁー。分かった。だがせめて、目立たないように男の格好をしてくれ」

〈ヒドイわ!乙女に男の格好をしろだなんて!〉

「あの、コハク?私からもお願い。王都にいる間だけでいいから」

〈分かったわよ。ルーナちゃんがそう言うなら、仕方ないわね〉

 やっと解放された私達は、とりあえずコハクの服を探す事にした。

 王都はぎっしりと建物が並んでいて、そして広い。お城も建っているはずなんだけど、ここからじゃ見えない。

 人通りも多くて、人波に呑まれそうになる私を、コハクがお子様抱っこしてくれた。


〈まさかこのワタシがズボンをはく羽目になるなんて!恥ずかしい!〉

 目についた古着屋で無難そうなシャツとズボンを渡してあげたんだけど、コハクは恥ずかしいのか、顔を手で覆って体をくねらせている。

「似合ってるから大丈夫だよ」

〈イヤ!似合っているなんて言わないで!〉

 あー、面倒くさいなぁ。

「すみません、これ買います」

 本当はポニーテールも何とかして欲しいんだけど、仕方ないか。従魔のゴム入りリボンを、シュシュにしている。

「あれ?ワンピースは?」

(ワタシ、収納庫使えるわよ?時空魔法のスキル持っているじゃない)

 言われてみればそうだっけ。レベル高いし、超年上でした。

 サファイアは、影に入れた。人混みで見えなくて、蹴飛ばされても可哀想だし。


「お、いたいた。よかった」

 お店を出たら、騎士の人に声をかけられた。

「兄貴から今朝、ギルドを通して手紙もらってさ、さっき門番から連絡もらってすぐに駆けつけたんだ。初めましてだな、フレイドの兄のアシルだ」

「叔父さんですね?初めまして。ルミナリアです」

 そういえば、騎士をしてる兄弟がいるって話、聞いたな。お父さんに似てる。これで目の色が紫だったら、本当にそっくりさんだ。

「叔父さんか…俺、まだ独身だから、その言葉は応えるなぁ。まあいいや。アルフォンスの所に連れて行ってやる」

 あー。きっと兄様に叱られるなぁ。

「ところでそちらは?護衛雇ったのか?」

〈コハクよ。うふふ、ちょっとワタシ好みのいいオトコね〉

「!!な、なんだ?背筋がぞわっとしたぞ?」

「ごめんなさい。コハクは、心は乙女なの」

「そっ…そうか。姪が世話になった。護衛はここまででいいので」

「叔父さん、コハクは従魔だから、一緒なの」

「…マジか?…ええと、とにかくアルフォンスの所に行くか」

 叔父さんは、考える事を放棄したようだ。可哀想。

「ていうか、速すぎないか?連絡もらったのは、今朝なんだけど」

 ギルドの手紙はダンジョン産の魔道具で、専用のコードを打ち込む事で、距離に関係なく一瞬で届く。さらに緊急に応じて別料金を払えば、本人に知らせてくれる。

 ダンジョンの転移システムの小型版だけど、今の所量産は出来なくて、ダンジョンの宝箱から出てくるのを冒険者から買い取って使っている。

 魔法を使えなきゃ、仕組みが分からなければ魔道具にする事も出来ないから、そう簡単には普及しないのかもしれない。

 時空魔法を極めれば転移も使えるだろうけど、使えても、付与魔法で基盤書かなきゃならないから、普及はしないのかな?習得が難しい魔法を極める位の大魔導師は、そんなせこせこしなくてもいいんだろうし。

「コハクに乗って来たから、速かったの」

「そうか?まあ、人化出来る位の従魔なら、凄いのかもな」

〈そうよ?アタシ凄いでしょう〉

「おっ…おう」

 仲が悪いよりはいいんだけど、叔父さんちょっと可哀想?


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