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旅先で

 夕食前には帰ってきたアル兄様に話を聞いたけど、やはり怪しい所はなく攫われた人達は、町には入っていなさそう。

 そこから西は王都方面だけど、村から行くならこっちに来るのは遠回りだ。

 更に南にはレダノン辺境伯爵がいるレダノンの街。そこから南には海がある。

 お父様とレダノン伯爵は仲良しだから、ちゃんと調べてくれただろうけど、折角夏なんだから一週間位ゆっくりして、海水浴を楽しむことになった。

 渋る私に、焦っても仕方ないと諭された。

 安全な所しか行かせてもらえないんだろうな。

 途中、ワシタカが二羽襲って来た。私達は勿論魔法で攻撃して、ミーシャさんはナイフを投げる。落ちたのを見たら、目を貫いていた。間髪を入れずに襲って来たウォルフの群れは、鉄棒を使って攻撃。ヒスイも蔓を巻き付けて援護してくれる。サファイアも、威圧で動きを止める。ぶんっと音を立てて振るうと、狼の頭が潰れた。後ろから襲って来る狼には振り向かずに後ろ手に突く。

『レベルが上がりました。モモのレベルが上がりました』

 お兄ちゃんに襲いかかろうとした狼を、蔓で拘束して圧力をかけて潰す。まだ沢山来そうなので、範囲を広げるイメージで血液まで凍らせる氷魔法を使う。

『レベルが上がりました』

 まだ残っている数匹には、雷を落とした。

 敢えて刃を避けたのは、グロいのが嫌だから。それと素材の皮を綺麗に解体する為。そんなに高くないけど、解体に慣れる為に頑張る。ウォルフの肉は硬くておいしくないから、魔石まで取ったら、一カ所に纏める。

「ミーシャさん、シルバーウルフの解体お願い!」

 ラッキー、上位種が混じっていた。

 血の臭いで他の魔物が寄って来る前に、火魔法で燃やす。それにしても数が多い。途中からミーシャさんは、ワシタカの肉でスープを作り始めた。

 バートの奴は、解体が下手だ。まあ、いかにも不器用そうだしね。あ、モモ、ボロボロになっちゃったからって魔石取る前に燃やしちゃダメだよ。

 ちっ、ゴブリンが寄って来た。お金にならないからそのまま燃やしちゃえ。

 無詠唱で視線だけで燃やしたら、若干引かれた。

 取れた皮は32枚。魔石はワシタカ含めて41個。…ちっ。

「ルーナちゃん、怖いよー?」

「うっさい馬鹿王子」

「正直、ルーナがここまで凄いとは思わなかった」

「アル兄様は解体上手ですね」

「辺境の地を治めるには、戦えなきゃならないから、小さい頃から色々やらされたんだ」

 色々器用で頭も良くて、美青年。多少黒くても、もてるんだろうな。


 戦闘と解体で二刻程かかってしまったから、今晩は野宿らしい。もう少し南に下って比較的平らな場所に出た。近くに川も流れている。

「んー、お風呂に入りたい!」

 

 クリーンはかけたけど、沢山解体したから、お風呂でゆっくりしたい。屋敷にある魔道具式のお風呂、そのうち複製させて貰おうかな。問題は、人前じゃ使えない事。どういう条件が必要か分からないけど、早く時空魔法覚えたいな。

 という訳で、川の隣に土魔法で穴を掘って、泥にならないようにイメージして壁を固める。川から水を引いて、そこに火魔法を打ち込む。

 ぽいぽいっと服を脱いで、お風呂に飛び込んだ。

「僕も!」

 お兄ちゃんも、サファイアと一緒に飛び込んで来る。モモも、水面に入ってきた。

(ヒスイも入る?)

(魔力水がいいのー)

 傍に浅い穴を掘ってあげて、水を満たしてやると、ヒスイはそこで水浴びを始めた。モモもそっちがいいのか、移動してヒスイと一緒に入る。

 ミーシャさんが持って来てくれた石けんで髪と体を洗い、サファイアも洗ってあげる。この世界の石けんは少しギシギシする。改良出来そうなら、後で考えてみよう。

 お風呂から出て川の水を流して泡だらけの水を抜き、もう一度火魔法で温める。今度はゆっくりと浸かった。お兄ちゃんはそのまま川で水浴びして、出てしまった。

「ミーシャさんも入る?」

「いえ、私は最後に。今、夕食の支度をしていますので。着替えとタオル、ここに置きますね」

 ドライで済むんだけどな。

 ちょっとのぼせた。のぼせるのは、状態異常に入らないらしい。お風呂から上がってタオルの上でのびていたら、アル兄様が来てくれた。

「大丈夫かい?ルーナ。服を着ようか。裸を見せたくない奴がいるからね」

 そうだった。ここには変態さんがいたんだ。着替えてお子様抱っこで食事の席まで運んでもらった。


 眠る時はどうするんだろうと思っていたら、結界石というものがあった。馬車とテントを囲むように置いて、魔力を流す。

「お嬢様の結界程強くはありませんが、この辺の魔物なら、中に入れません」

 うん、便利アイテム。

 テントは軍の人が使うような大きなテントだったので、布団を出す訳にもいかず、寝袋に入って各々雑魚寝状態だ。下に撥水性の皮が敷いてあるので、快適に寝られる。

 翌朝起きてストレッチをしていたら、バートが起きてきた。

「早いな。疲れてないか?」

「うん、別に。一応魔法使えたんだ?」

 温くなったお風呂を火魔法で温め直しているのを見かけたから聞いてみた。

「一応全属性の適性はあるみたいだけど、上位魔法はまだ使えないんだ。魔法神様の祝福は頂いているから」

「ああ、器用貧乏な感じか。祝福は、どんな感じなの?」

「魔力と精神に補正が付いて、魔法名だけで魔法が発動する感じかな」

「でも、戦いの時は魔法使ってなかったよね?」

「一応、物理障壁と身体強化は使っていたよ」

「それだけ?攻撃魔法も併用すれば、楽なのに」

「加護とは違うんだよ」

「どっちかっていうと並列思考のスキルじゃないかな?」

「おいおい、そんな達人級のスキルまで持ってるのかよ。他にどんなスキル持ってるか聞くのが怖いな」

 あー、スキルの話は危険かな。普通はそう簡単にスキル取れないだろうし。

「教える訳ないじゃん。並列思考は、訓練で覚えられるよ。それこそ戦いながら魔法使おうとしたり」

「よし!やってみるか」

「なら相手になろうか?私も新しい双剣ならしたいから」

「は?いくら何でも子供に剣向けられるかよ」

「そういう認識だと、痛い目見るのはそっちだよ」

「はあ…戦いながらの方がスキル取れるだろうしな。分かった。結界纏っておけよ?」

 

 鞘付きのままで双剣を振るう。バートの戦い方は、何というか型どおり?兵士が訓練した剣の動きそのままな感じ。実戦慣れしてるとは思えない。動きが単調で、私にだって見切れる。

『スキル 見切りを習得しました。魔力感知、気配感知と統合されて、スキル 直感になりました』

 簡単に取れてしまったけど、これは普通じゃないって覚えておこう。

「結構レベル高いのに、その割には戦えてなくない?」

「げ。そこまで見られたのかよ。私のレベルは冒険者のそれとはまた違う方法だからな」

「何それ。魔物倒す以外に、レベル上げる方法なんてあるの?」

「あー。それ聞いてくるのかよ。…まあいいや。ルーナなら。…前に誘拐されたりとか殺されそうになった話はしただろ?その時…生き残る為にそいつらを殺したんだよ。殆どその時のレベル」

「犯罪者は殺しても罪にならないんだから、いいんじゃない?」

「そういうセリフは、人殺した事がないから言えるんだぜ」

「それはそうかもだけど、そしたら村襲った人達は、すごくレベルが高いのかな」

「いや、犯罪者にはマイナスの称号が付くんた。レベルが上がりにくくなったり、それ以上人殺しをしても、経験が入らなくなったり。仮に加護や祝福を持っていても、即座に取り消されるな」

「凄い世界だね。神様が身近に感じる」

「ん?当然だろ?」

「そうだね」

 前世では、神様は遠かった。信じてない人のが多いんじゃないかな。私もそうだったし。だから今、こうして沢山の加護を貰って戸惑っているのかな。

「よし!休憩終わり!もう一度挑戦だ!」

「の前に朝ご飯だよ。いい匂い」

 ミーシャさんはお料理も得意なスーパーメイドだね。


 その日のうちに、レダノンの街に着いた。宿泊先は領主の館だった。うん、普通の宿屋じゃない気はしてた。海の側の高台に立てられていて、眺めがいい。先にギルドに寄って皮を売る事にした。

「魔石は全部で大銀貨1枚、皮は銀貨2枚って所だな。傷物も結構あるし。シルバーウルフの皮は銀貨10枚だ。ワシタカの爪と嘴は、全部で銀貨10枚だな。全部売るか?」

「はい。現金でお願いします」

 私一人で倒した訳じゃないからね。特にミーシャさんは守りながらも大活躍だったし。

「という訳で、どうやって分ける?」

「私はいいよ。一番活躍したのはルーナだからね」

「ならミーシャさんは?沢山活躍したからどれ位がいいかな」

「いえ、お守りするのが私の仕事ですし、既に旦那様から充分なお金を頂いています」

「僕はあんまり戦えなかったけど、少し…銀貨2枚貰ってもいいかな?剣を整備したいから」

「なら3枚で」

 ルーナは袋の口を閉じて、アイテムボックスにしまった。

「あれ?私には声掛けてくれないのかい?」

「は?皮駄目にしておいてそれ言う?しかもミーシャさんや兄様に守ってもらいながらだよね?」

「あ…いや、最初から冗談だったから」

「そうだな。むしろ足引っ張ってた奴のセリフじゃないよな?それでもらったら、むしろ自分が情けないよな」

「うう…だから冗談だって」

 そういえば、依頼に海産物の採取があったな。魚も全部じゃないけど魔物で、海草まで魔物だった。そしてここから西の、国境を跨ぐ呪いの森には鉱山があるが、森自体が危険地帯なので、犯罪奴隷が多数働いているらしい。






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