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冒険の始まり

 新連載始めました。よろしくお願いします。

 アクシス王国の外れ、マイラの村は人口100人足らずの、小さな村だ。ボルドー辺境伯の治める土地で、西にあるユグル共和国と国境を接している。

 そこに暮らしているルーナは先日、5歳の誕生日を迎えた。この世界では、5歳で教会の祝福を受ければ国民として登録され、ステータスが見られるようになるので、三日後には乗り合い馬車で半日かかるボルドーの街に行く予定だ。

 朝早く起きたルーナは、日課のストレッチをして、水魔法で畑に万遍なく水を撒く。

 お母さんが魔法が得意なので、ルーナは村の子達よりも早くから魔法が使えていた。

 お母さんは銀色の珍しい髪色の美人で、お父さんは、藍色の髪の元Aランク冒険者で、村のまとめ役的存在。

 7歳の兄アレックスは、父の影響か、剣ばかり振るっている。

「お兄ちゃん!草むしり手伝ってよ。お母さんに言われてたでしょ」

「分かってるよ!」

 面白くなさそうに言って木刀を置き、ルーナが土魔法で柔らかくした所から、雑草を集める。

 一時間程かけて綺麗にすると、ルーナの手をつないだ。

「今日はバドと剣の修行だ!ルーナも行くぞ!」

「ルーナ、絵本がいい」

「明日にしろよ。明日は俺、父さんと狩りに行くんだから」

 仕方なく付いて行くと、同じ年頃の子供達が集まっていた。中でも体の大きなバドが、木刀を持って走ってくる。

「今日は負けないぞ!」

 アレックスは剣を流して受けて、身体強化をかける。バドの方は、なかなか上手くかからない。アレックスは構わず打ち込んだ。

「ずるいぞ!待っててくれてもいいじゃんか!」

「魔物は待ってくれないからな!次ルーナ!」

 ルーナは木刀を拾い、仕方なく身体強化をかける。アレックスに打ち込まれる前に何とか避けて、木刀を振るうが、届いていない。横なぎに振るわれた木刀を後ろに下がって避けるが、転んでしまった。

「痛いよー!」

「悪い。魔力残ってるか?」

 ルーナは頷いて、擦り傷にヒールをかける。

 その間に別の子が木刀を拾い、乱戦になる。

 広場のすみに避けると、村の野良猫ミーちゃんが寄って来た。撫でると、ルーナの足に座り、喉をならす。が、女の子達が花を持って現れると、ふいっとどこかに行ってしまった。

「ミーちゃん行っちゃった。いいな、ルーナちゃんには懐いてて」

「何にもしてないんだけどね。お花、どこに飾るの?」

「髪飾りを作るのよ。ルーナちゃんも一緒に作ろう」

 次の日、村の男達と一緒にアレックスが狩りに出掛けると、絵本を開く。主神ガルドと、五柱の神。愛の女神ルルティアと、豊穣の女神レレイ。戦の神ゴードンと、魔法神ログウェル。最後が獸神ハザード。六柱の神が助け合ってこの世界を導いてくれる。

「ルーナ!ご飯の用意手伝って」

 母マリーの声に、本をしまって台所に行くと、指示に従ってネギ草をナイフで切り、それを母がスープに落とした。光魔法のクリーンでナイフとまな板の汚れを落とす。

「ルーナは器用ね。普通はそこまで上手に使うのは、時間がかかるのだけど。ステータスを見るのが楽しみね」

 その時、急に村の外が騒がしくなった。沢山の悲鳴と血の臭い。荒々しい叫び声に、足がすくんだ。

「ルーナは隠れていなさい、いいわね?」

「お母さんも、行っちゃやだよ。怖いよ!」

「お母さんは、様子を見てくる係。ルーナはスープを守る係だよ。いいわね?」

「うん…守る」

 鍋を手渡されて戸惑いながらも頷く。


 どれ位たっただろう。家に火が放たれて、ルーナは家を飛びだす。ガラの悪い男達にあっという間に捕まり、檻付きの馬車に放り込まれた。

 小さな村なので、当然見知った顔ばかりだ。ルーナは必死で母マリーを探すが、いない。泣き出したルーナに、パン屋のおかみさんが、お母さんは別の馬車に捕まった事を聞いた。


 ルーナが乗せられたのは最後尾の馬車で、幌の隙間から覗くと、燃えている村がすぐに小さくなる。

 どこに向かっているのか馬車は街道を外れ、森を掠めるように走る。

 その時、Cランクの魔物、ツノウシが後ろから猛然と追いかけて来た。

「おい!もっと早く走れ!追いつかれるぞ!」

「ちっ…何だってこんな森の浅い所にCランクが。おい!ババアかガキを落とせ!」

「畜生!」

 男はルーナをツノウシに向かって放り投げた。すぐそこまで迫っていたツノウシの角に、ルーナが引っかかる。

「だめっ!馬車が壊れたらみんなが!」

 何とか額に馬乗りになり、角をつかんで方向を変えさせようとする。大木に突っ込んだツノウシから、ルーナが放り出される。大木が倒れ、ツノウシを潰す。

『レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが…』

 大量のレベルアップコールを聞きながら、ルーナは藪に突っ込んだ。



 舞月幸子は、動かない足の代わりに腕で這いずりながら移動する。その足はあり得ない方向に曲がっていて、トイレに立つ事も出来ないから、風呂場で流すしかない。少しの移動も強い痛みの為に挫けそうになるけど、せめて畳の上に行かないと、背中の痛みが酷い。

 父の道夫は、幸子が小学2年生の時にリストラに遭い、初めは真面目に日雇いの仕事に出ていたが、仕事がない時は競馬やパチンコ店に通うか、酒を飲んで暴れた。

 次第に暴力を振るうようになり、二年後に母は4歳の弟を連れて家を出た。その頃既にまともに動けなかった幸子は置いて行かれた。

 食べるものもなかったけど、いつの間にか台所の割れたガラスから出入りするようになった野良猫のミケが、パンやお菓子の欠片を拾ってきてくれるようになった。ミケは父がいない間は側にいてくれる事が多く、人の気配を感じると出ていく。

 学校に行かなくなった私を心配して近所の人や児童相談所の人が来てくれる事もあったけど、父は私は母と一緒に出て行ったと言い、いなくなると母に顔が似ているという理由で暴力を振るわれた。

 幸子という名前が皮肉に感じる。自殺さえ出来ないまま、12歳の冬、借金取りに追われ、自分の生活さえままならない父が私の首に手をかけた。栄養失調で小さく、力もない私は呆気なく死んだ。


 覚えているのは黒い服を着た男。連れてこられたのは、異世界の神々の前。何を話したのか覚えていないけど、目が覚めたら私はルーナだった。思い出したのは、レベルアップのせいだろうか?


 ふわふわと暖かい、上質の毛皮の上に寝かされているのだろうか?…違う。生きているものの暖かさだ。

 体を起こすと、大きな犬?狼?にもたれかかっていたらしい事が分かった。それはとても優しい瞳で私を見ていた。少し離れた所にツノウシの死骸。お腹の空いた私は、それを食べようと思った。が、手をかけると、それは突然霞のように消えた。

「ええっ?!」

 あれ…でも何か、思い出した気がする。

「えっと…ステータスオープン?」



 ルミナリア ボルトス(5)


レベル 12


HP 221 MP 1560

 

力 38  精神 1072   敏捷 25 幸

 運 118


 特殊スキル  経験値習得二倍 アイテムボックスEX スキル習得難易度低下 自動回復 

創造魔法 従属EX


 アクティブスキル

 四属性魔法 光魔法 身体強化 魔力操作


 パッシブスキル

状態異常無効 精神、身体苦痛無効 家事 

 記憶力向上 算術 魔力感知 


 主神ガルドの加護 異世界神の加護 愛の

 女神ルルティアの加護 魔法神ログウェルの

 加護 獸神ハザードの加護



 ええと…教会行ってないんだけどな。


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