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ギルドと登録と

『電脳端末は異世界探訪を夢見る(略称・電脳異世探)』の更新は、不定期に心の赴くままに更新します。

 最低でも月に二回は更新しますので。

──スタスタスタスタ 

 カナン神聖教会を後にして、セツナはのんびりと異世界ギルドへと向かう。

 初めて見る街並み、中世ヨーロッパの風景の中に、何処と無く近代日本の風景が混じり合っている。

 そのひとつが、セツナの横をゆっくりと走っていく。


──ゴトンゴトン……。

 昭和初期にはよく見た路面電車が、市街地の中をゆっくりと走る。

 少し急ぎ足で走ったらすぐに飛び乗れそうな速度で、セツナの横を通り過ぎて行った。

「パンダグラフも電線もない……でもレールはある。魔法で動いているんだ」

 そう思うと、ようやく自分が異世界にやってきたことの実感が湧き始める。

 心の中にあった不安がやがてワクワク感となり、セツナの体を駆け巡る。


「馬車もあるんだ。本物の馬が引いているものもあるし、銀色のゴーレムかな? ゴーレムの馬が引いているものもある。ファンタジーというよりも、スチームパンクに近いよね?」


( ^ω^ )


 再びセツナの頭上に顔文字が浮かび上がる。

 どうやら、セツナの感情が限界を超えて溢れると、自然と顔文字が頭上に投影されるようだ。

 不可思議だった時代の擬似感情表現が、そのまんま残っているように感じる。


「ん?」

 ふと鼻腔をくすぐる芳ばしい香り。

 ひくひくと香りの大元を探して見ると、街のあちこちにある露店からの香りらしい。

──グゥゥゥゥ

 すると突然腹が鳴る。

 慌ててお腹を抑えてキョロキョロと見渡すと、通りすがりの人々が微笑ましそうに笑っているのが見える。

 カーッと真っ赤になった顔をブンブンと振りつつ、セツナは露店に向かう。

 まるで縁日の焼き鳥屋のように、その場で大量の串焼きが焼かれている。

 ちょうどセツナがやってきたとき、焼き鳥の入った袋を受け取って立ち去る客と入れ違った。


「いらっしゃい。何本かな?」

 威勢のいいおじさんがセツナに声をかけた。なら、まずはこの世界の勉強と、セツナは買い物にチャレンジである。

「一本幾らですか?」

「どれも一本銅貨二枚だよ。塩とタレ、どっちにする?」

「では!塩とタレを一つずつお願いします」

 あいよ。とおじさんは威勢のいい声で二本の肉串を焼き台に並べる。

 一本はタレの入った瓶に潜らせで焼き直し、もう一本は上から塩胡椒らしきものをパラパラとかけている。

 やがて芳ばしい香りが広がってくると、紙の袋に一つずつ入れて手渡される。


「はいよ、銅貨四枚だ」

 ジャラッと肩から下げているショルダーバッグ状の中袋から銅貨を取り出すと、それをおじさんに手渡す。

「これでいい?」

「ああ。しかしこの辺りじゃ見ない顔だなぁ。冒険者かい?それとも地球人アーシアン?」

地球人アーシアン?」

 よくラノベで表現される地球人。地球人アーシアンという単語を聞いて、思わす頭を傾げてしまう。


「ああ。なんでもここの女王さまが、200年前に、地球って言う異世界と俺たちの世界を繋げたんだよ。一時期よりは地球からくる人の数は減ったけれど、今でも交流はあるんどよ。お嬢ちゃんは地球から?」

 つまり、異世界の地球とは自由に行き来ができるということ。

 なら、一度地球に戻って、不可思議が異世界にいって見るのも……。

「伝える相手もいないか。神さまがボソッと話していたよね。ここは、私のいた世界の200年後だって」

少しだけ寂しそうに呟く。

──ポンポン

 その雰囲気に、おじさんがセツナの頭をポンポンと叩く。

「ふぁ?」

 慌てて頭を両手で抱えてしまうが、おじさんはニィッと笑っている。

「そんな悲しそうな顔するなよ。これは、この国のおまじないだよ。どんなに悲しいことがあっても、辛いことがあっても、下を向いたらダメだ。前を向いて歩きなさい……っていうことだったかな?このポンポンっていうのも、先代女王が作った風潮だよ」

 ニイッと笑うおじさんに、セツナは少しだけ勇気を貰った感じがする。

「ん、ありがと。じゃあね」

 そう頭を下げてから、セツナは露店から離れて行った。




 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「昭和初期の石造りの銀行?」

 異世界ギルドにやってきたセツナの最初の感想がこれである。石造りの3階建て、大きさは本当に大手銀行の本店レベルである。

 開け放たれた正面入り口からそーっと中に入ると、中も銀行そのものである。

 個別に仕切られたカウンターと、入って右奥にある異世界ゲートと書かれた、空港のゲートのような出入り口。

 壁には『フリーWI-FIあります』とさまざまな外国語で書かれている。

 最初に日本語があると言うことは、ここに初めてきた人が日本人なのかな?とセツナも頭を傾げる。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」

 すると、燃えるような真紅の髪のエルフらしい女性が、耳をピクピクと動かしながら近寄ってくる。

「あ、その、騎士団のゼクスさんと言う方から、ここに向かいなさいと言われました」

「ふむ。ゼクスの紹介ですか。私はここの管理官を勤めていますツヴァイ・ミナセと申します。貴方は日本人?」

 なぜそう思うのかという疑問がある。

 すると、目の前の女性がセツナの頭上を見ている。


(・ω・)ノ


 ああ、これか。

 いち早く私の心を表示してくれてありがとう。

「元・日本製です」

「はっはっはっ。日本製ですか。日本人ですね? 魂の護符(ソウルプレートは作ってきましたか?」

 そう問われて、セツナは右手から魂の護符(ソウルプレートを取り出して手渡す。

 どれどれと魂の護符(ソウルプレートを受け取ったツヴァイは、その色と表記データに目をパチクリとしている。

 そして、天井を見上げて何か思案しているかと思えば、コクコクと頭を縦に振っている。

「まあ、事情は分かりませんが、この世界に来た、神の加護を持った方という事は理解できました。では少々お待ちください。こちらへどうぞ」

 空いているカウンターに案内されると、セツナはゆっくりと腰を下ろす。

 少しして、先ほどのツヴァイともう一人の女性がやってくる。


「セツナさん、この方は貴方専属の担当官です。もしこの国にいて困った事やわからないことがありましたら、遠慮なくいらしてください。ではお願いしますね、アイシャ」

「畏まりました。初めましてセツナさん、わたしが貴方の担当官であるアイシャ・ラグナ・マリアです。まだ若輩者ですが、宜しくお願いします」

 柔らかい物腰の女性。

 セツナと同い年か二つぐらい上であろう。

「はい。宜しくお願いします。私もまだ、この世界に来たばかりで何をどうすれば良いのか分からないのですよ」


 それは半分くらい事実。

 もう半分は、那由多と二人で調べていた、さまざまな異世界転生もののラノベの知識がある。

 それがそのまま使えるのか分からないが、今現在、セツナはラノベの主人公と同じ境遇でいることに間違いはない。

 知識があるだけ、セツナは有利。

 そう思っていた時代が、少しだけありました。


「では、こちらが異世界ガイドブックになります。『一般用』と『自称ベテラン用』『こじらせ用』のどれにしますか?」

 へ?

 一般用は理解できます。

 自称ベテラン用は、恐らくは私のようにラノベの知識を持った人用だと思う。

 だが、最後のこじらせ用とは?

「あの。自称ベテラン用はどのような内容ですか?」

「はい。一般用に、さらに冒険者ギルドや商人ギルドの登録方法、初心者冒険者ガイドも付いています。因みにこちらの『こじらせ用』は、見た目は自称ベテラン用ですが、自分が選ばれた勇者だったり、チートスキルを持って生まれたなどと勘違いしている方に対して、現実を知ってもらうためのガイドブックです」


 ニッコリと笑いながら説明してくれるのは嬉しいのですが、その微笑みの奥底にどんよりとした黒い影が見え隠れしている。

 ああ、そういう人、本当にいるんだ。

 そしてそれで、かなり困ったことになったんだ。

 なら、私は迷惑を掛けないようにしよう。

「あの、自称ベテラン用でお願いします」

「はい。若い方の八割はこちらを持っていきますので、ではどうぞ。異世界ギルドには登録しますか?」


 おお、ギルドの勧誘だ。

 でも、冒険者ギルドや商人ギルドならいざ知らず、異世界ギルドとは?

「異世界ガルドに登録すると、どんな恩恵がありますか?」

「地球人でしたら、異世界渡航旅券パスカードの更新などが割引になったりしますね。カリス・マレスの人も同じですよ。それに、こちらに登録しておけば、異世界地球フェルドアースの商人ギルドと冒険者ギルドでも依頼を受けることができます」

 ふむふむ。

 つまり、異世界地球フェルドアースで仕事をするのには必要であると。

 まあ、行く予定も今のところはないのですが、ここは登録しておきましょう。


「では登録します」

 セツナがそう頭を下げると、愛車がカウンターの下から水晶球を取り出した。

「これはとギルド登録用の魔道具です。魂の護符ソウルプレートをこちらにかざしてください」

「こ。こうですか?」

 すぐさま魂の護符ソウルプレートを取り出してかざす。

 すると、水晶が淡い銀色に輝くと、中からフッと一枚のプレートが生み出される。

 魂の護符ソウルプレートとは違う、銀色の金属質のブレードてある。

「あら、初期登録でもうシルバーランクですか。なかなか磨き上げられた魂をお持ちのようで」

 驚きつつも納得しているアイシャ。けれど、セツナには何が何だかわからない。

「あ、あの、これはどういうことですか?」

 恐る恐る問いかけるセツナに、愛車がゆっくりと説明を始めた。


「まず、今生成されたものは『ギルドカード』と呼ばれています。魂の護符ソウルプレートから生み出されるもので、各冒険者ごとに登録する必要がありまして。魂の護符ソウルプレートと違うのは、あちらは水晶のプレートですが、こちらの金属プレートであります」

 ふむふむと、今生み出されたシルバープレートを眺めるセツナ。

「そして、ギルド登録者はそれぞれランクというものがありまして。冒険者の場合は受けられる以来の難易度であったり、商人でしたら扱える商品の数と店舗の大きさと、それぞれ条件が変わってきます。具体的にはですね‥‥」


 例えば、冒険者ギルドの場合、Sから始まりA、B、C、D、Eと冒険者のランクというものが存在し、それぞれのプレートの色はゴールド、ライトゴールド、シルバー、カパー、ブロンズ、アイアンと6色にわけられている。

 セツナのプレートはシルバー、つまり異世界ギルドのBランク会員として登録されたのである。


「ふぅん。Bランクって、珍しいの?」

「年間で14日間の無料渡航許可がでますね。あとは、各都市にある『異世界ギルドストア』での買い物が10%割引になります」

 なんとなく、少しだけお得。そう考えたセツナは、すぐにカードをポケットにしまおうとして。

「あ、それも魂の護符ソウルプレートと同じように右手の中に納まりますよ」

「あ、そうなのですか‥‥どれどれ」

──シュンッ

 一瞬でギルドカードが手の中に消えていく。


('ω')


 思わず顔文字が頭上に浮かぶぐらい驚く。

「では、これで登録は完了しました。こちらがパンフレットです、もしも何か困ったことがありましたら、いつでも異世界ギルドにいらしてください」  

「はい。ありがとうございました」

 丁寧に頭を下げるアイシャにセツナも立ち上がってお礼を告げる。

 これで登録は終わり、セツナの異世界を堪能する第一歩が始まる‥‥のかな?


誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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