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刹那と魂と

『電脳端末は、異世界探訪を夢見る』の更新は不定期です。なんとか一週間に一度は更新したいと頑張っています。


 カナン魔導連邦・王都カナン。

 広大な森林に囲まれた【カナン魔導連邦】の王都であり、このウィル大陸の七割の国家を治めるカリス・マレス帝国の属国の一つ。

 帝国に仕えていた勇者の一人、『賢者マチュア』によって統治されている王国であるこの国は、北のミスト連邦王国とカリス・マレス本国とを繋ぐ中継国家である。

 人口は50万人程度、王国全体からすれば30%ほどの人口比率。

 他の王国とは違い、このカナン魔導連邦は、異世界地球との国交に成功した都市であり、地球人アーシアンと呼ばれている人々が数多く移住している都市でもある。



──シュタタタ

 カナン魔導連邦・近衛騎士団隊長のゼクスは動揺していた。

 いつものように定時巡回の最中、街の中、それも公園で魔法を発動したものがあると言う。

 都市内部での魔法の行使は、回復系などを除いては全面禁止、国もしくは冒険者ギルドの許可を得たものでなくては犯罪となる。

 取り敢えず、いつものように魔獣を行使したものの身分を確認し、無許可なら騎士団詰所まで連行、のち取り調べという流れなのだが、その報告を聞いてゼクスは寒気を覚えた。


『禁忌魔術です、王家の魔術を行使した人がいます』


 それは聞き捨てならない。

 王家に伝えられてある魔術など、それこそ都市内部での行使は禁止されてある。

 それに、それらの魔術は女王であるマチュア・フォン・ミナセ以外には、女王の側近たちしか行使することはできない。

 唯一の例外は女王が賢者と認めた女性一人だが、その人もすでに没して100年以上は立つ。

 故に、現在、それらの魔術を行使することができるものは少ない。

 そしてこの都市なら、使えるものは市井のものなら知っている。

 この通報は危険なのである。


 そしてゼクスは出会ってしまった。

 見たこともない女性が、先代勇者の本名である『三三矢』の名前を語ったという事実に。


………

……


 カナン神聖教会。

 主神は正義の神クルーラー。

 副神として秩序の女神パスティが祀られている。

 因みに主神クルーラーは全身を荘厳なフルプレートで覆い、巨大なカイトシールドとハルバードを携えている男神である。

 その神の加護の下、カナン魔導連邦王国は栄華に包まれていた。


 正門からまっすぐ中央に向かって伸びている街道を駆け抜けるゼクスとセツナ。

 何故、自分が見も知らない騎士に手を引かれているのか、セツナは理解に苦しんでいる。


『分からない。何故、私は連れていかれているのだろう?』


 街道の左右には多くの店が並んでいる。

 それを横目に眺めつつ、中央にある巨大な噴水の向こうにある、これまた巨大な教会へとたどり着いたゼクスとセツナ。

 礼拝のためにやってきたのであろう人たちを横目に、二人は急ぎ中に入っていく。

 正面奥には巨大に神像。

 その少し手前にある演説を行うための演台の前に、一人の司祭が立っていた。


「ようこそ神聖教会へ。おや、ゼクス殿、これはまたご機嫌麗しく。女王陛下はお元気ですか?」

 と、両手を広げてゼクスとセツナを迎え入れてくれたのは、ファナ・スタシア神聖教会の責任者であるケビン・スターリング枢機卿。

 壮年のエルフで片眼鏡をはめている、渋い老人という言葉がよく似合う人物である。


「ああ。先代が霊廟に入られてからは、一層政務を頑張っていますよ……と、誠に申し訳ない、スターリング枢機卿、この者の魂の護符(ソウルプレートを発行してほしいのです」

 息を切らせつつ、ゼクスがそう告げる。

 なら、今聞くしかないと、セツナも目の前のスターリングに目を向ける。


「あの、魂の護符(ソウルプレートとほなんでしょうか?私はまだ、この世界に来たばかりでして、何が何だかサッパリなのですよ」

 そのセツナの言葉と同時に、ゼクスはしまった、という顔でスターリングを見る。

 だが、スターリングは優しい笑みを浮かべると、セツナの前にスッと歩み寄った。


転移門ゲートを超えない転生者ですか。200年ぶりですね……確か先代の天才勇者は……と、今はそんな話は良いですか。では、魂の護符(ソウルプレートについてご説明しましょう」

 そう告げると、スターリングはセツナに魂の護符(ソウルプレートについての説明をする。


 魂の護符(ソウルプレートとは、いわば魂から生み出した『身分証明書』である。

 そのものの名前や外見が記された、水晶のように透き通った免許証大のプレートであり、偽造することは出来ず破壊も不可能。

 盗み出しても持ち主の体から一定の距離離れたら消滅してしまう優れもので、各種ギルドに登録したり、己の身分を証明する時に必要となる。

 それは各地の神聖教会で洗礼を受けることにより発行され、手数料は無料。

 地球との国交がある現在、地球でもパスポトーのような公的な身分証カードとして扱われている。


「……と言うことです。必要ですか?」

「ん。お願いします」

 瞳を細めて頷く。

 すると、ゼクスとスターリングは、セツナの頭の上を見て驚く。

「あ、顔文字か。これほ、君が出したのかな?」

 ゼクスがそう問いかけて、セツナは慌てて頭上を見る。


(o^^o)


 確かに、セツナの頭上には顔文字が浮かんでいる。

 それはやがてスッと消えたが、なんでそんなものが浮かんでいるのか、セツナにはわからない。


「多分、そう。けど、何故出来たのかわからない」


 不可思議だった昔、自分の感情は全て顔文字で表現していた。だがら今はそんなことをする必要はない。

 スチームガールという特殊な種族ではあるが、ちゃんと表情筋らしいミスリル繊維もあるし、人間と同じように喜怒哀楽は表現できている。

 なのに?

 そんな事を考えていると、スターリングがセツナを呼んでいる声が届く。


「さて、それでは始めましょう。此方にどうぞ」

 スターリングは奥にあるクルーラーの像の前に立っている。

 セツナは慌てそちらに向かうと、スターリングの説明を聞きながら、像に向かって右手を差し出す。


──シュゥゥゥ

 すると、セツナの手の中に、銀色に輝く魂の護符(ソウルプレートが生み出された。


「ほお、初期から銀色とは。貴方の魂には、何かしらの神の加護があるようですね」

「神の加護?」

 そう告げられて、ふと思い出す。

 セツナが転生できた理由、最初にあった神。


「多分、管理神アーカムの加護。私は、あの人に導かれてここに来たから」

 そうスターリングに告げると、彼もウンウンと頷いている。

「では、これでおしまいです。此方にどうぞ、それをゼクスに見せれば、多分無罪放免となりますよ」

「そうなの?」

「ええ。銀色のプレートは、貴方の魂が純粋である事をも意味しています。魂がより精錬されていけば、プレートは更なる輝きを示すでしょう」

 ふぅんと、生成したプレートを手にとって眺める。

 そしてゼクスの前に立つと、スッと銀色の魂の護符(ソウルプレートを差し出した。


「では、確認させて……ふぁ?銀色?」

 セツナからプレートを受け取ったゼクスは、その色に驚く。まさか登録したばかりのものが、銀色のプレートを持っているなど考えても見なかった。

「スターリング卿、これは一体?」

「この方、セツナさんは、神の加護を受けています。それも、主神ではなく、管理神アーカムさまの。ならばこそ、この方の身分は保証されました。誰も、この決定には逆らうことも、異議を唱えることもできません」

 そうゼクスを諭すように告げると、ゼクスはやれやれと困った顔をした。

「アーカム様の加護が。なら仕方ありませんね……セツナさん、あなたの身元は神の名において保証されました。と言うことで、この後はご自由に。神さまから、この地に転生を許された以上、誰もあなたを束縛することは出来ません」

「つまり?」

 ゼクスに再度問いかけるセツナ。

「自由にして良いと言う事で。あ、こっちよ世界は初めてなんですよね?でしたら、第一城塞の外にある第二区画に『異世界ギルド』って言う所があるので、そこで事情を話すといいですよ。こっちの世界を旅するための簡単な小冊子を配ってますから」

 そう説明をして、ゼクスはスターリング卿とセツナに頭を下げて、教会から出て行く。

 すると、セツナもスターリング卿の方を向いて頭を下げた。


──ペコッ

「色々と教えて頂きありがとうございます。では、失礼します」

「ええ。あなたの頭上に、神の加護がありますように」

 ススッと右手で印を組むスターリング。

 セツナはもう一度頭を下げると、スタスタと教会から出て行った。



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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