表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

現実と異世界と

──ハッハッハッハッ

深夜。

那由多は突然の発作に苦しみだす。

彼女の病名は未だ不明、現代医学をもってしても、その突発的に訪れる頭痛と全身を掻き毟るような激痛の原因はわからない。

ありとあらゆる薬による、治療という名の延命処理、しかし、すでに薬の効果など殆ど現れてはいない。

辛うじて、体内プラントとして埋没されている鎮痛剤投薬装置が、彼女の発作のたびに作動し、痛みを消し去って行く。


(>人<;)ナユタ、ダイジョウブ?


ベッド横のテーブルに移動した不可思議が、心配そうに那由多に問いかける。

不可思議もまた、那由多にとっての延命装置の一部である。

不可思議はいつでも那由多に何かあった時、ナースステーションに連絡が行くようになっている。

それだけではなく、自動的に体内プラントを起動し、すぐさま延命処理を開始する。そのお陰で、発作的な症状でも僅か数分で収まるようになっている。


「ハァハァハァハァ……ありがとう…不可思議。また助けてもらったね……」


(>人<;)ワタシハ、アナタノトモダチダカラ


「うん。でも、もう駄目かも……だんだんと発作の感覚が短くなって来てるよね」


(>人<;)キノセイ。オイシャサマハガンバッテル


「そっか。なら、もうすこし頑張ろうかな……」


(⌒▽⌒)ナユタ、ガンバレ


「うん。早く体を治して、不可思議と一緒に病院の外に出たいからね」


(⌒▽⌒)ソウダネ


「それに、夢もあるから。それまでは頑張らないとね」


(`・ω・´)ユメ?


「そ、夢。『Fantasy World LIFE』のような異世界を、私と不可思議で旅をするの。色々な不思議を一杯体験するの。その世界でね、私は勇者になるんだよ?」


そう呟きつつ、那由多は窓の外を見る。

薄っすらと日が昇り始め、そして看護師たちが那由多の異変に慌ててやってくる。

発作が起きてからほんの二分、それですぐに看護師たちはやって来た。

一人の看護師が、那由多の顔を見てホッと胸をなで下ろす。

すぐさま容態を確認すると、ベッド横にある生命維持装置からデータを読み取り、すぐさま投薬の追加を行う。

やがて薬の効果が現れると、那由多は深い眠りについていった。


………

……


(>人<;)ナユタ、ドコ?


ある日。

那由多のベッドの横には、担当医師や看護師、そして慌てて駆けつけた三三矢善の姿があった。

不可思議には感情を読み取る機能はない。だが、相手の表情から、その感情を計算することはできる。

今、ベッドの周りに広がっているのは悲しみの感情。

医者が時計を確認して、やがて那由多の顔を白い布が被せられる。


(>人<;)ナユタ、ドコ?


キョロキョロと頭を左右に振る不可思議。

彼女には、那由多を認識できていない。

生命維持装置から送られていた、那由多の生体コールサイン、それが停止しているのである。

それが那由多の死を意味していることなど、不可思議には理解できていない。


「不可思議、もういいよ。那由多はここにいるから」


善が、ポン、と不可思議の頭を叩く。

だが、不可思議はキョロキョロと周囲を見渡していた。


(>人<;)ナユタノタマシイ、ドコ……


「タマシイ?ああ、魂か。大丈夫、今はもうここにはいないけれど、きっと新しい身体を貰って、転生しているはずだから……だから、不可思議も、お疲れ様」


(>人<;)テンセイ?イミフメイ……深淵の書庫アーカイブデケンサク……


那由多が転生するという事を、不可思議は理解できない。

未だ世界は魂がなんであるのか、その解明を進めることが出来ていなかった。

ただ、人は死んだら転生する。

日本人である善や那由多は、そう信じている。

次に生まれ変わる時は、もっと元気な姿で生まれて来てくれよ。

善はそう思いつつ、一度部屋から出て行った。


………

……


──ピッ

(⌒▽⌒)再起動!


那由多の死。

そしてあっという間に葬式も終わり、日常が戻って来た。

病院から持ち帰られた不可思議はそのまま放置され、体内バッテリーが切れて動けなくなっていたのだが。


何故、再起動したのか?

それが不可思議には不思議で仕方ない。

それに、ここは何処なんだろう?

何もない白い空間、ただひたすらに白い世界。

その真ん中に、不可思議は佇んでいた。


「やぁやぁ、これはまた、じつに久し振りの転生者……って、うわ、ロボットが転生したのか?」


白い世界に聴こえる声。

それが何者なのか、不可思議には理解できない。


(>人<;)ココハダレ、アナタハドコ?


「うん、お約束の混乱をありがとう。ここは白亜の間、私たち神々の世界の一つ。君は現世で死亡して、偶然この世界にやって来たんだ……どうして君が、ロボットがこんなところに来たのか、ちょっと調べてみるね……深淵の書庫アーカイブ起動」


世界の声は、不可思議の存在を調べる。

そしてどれぐらいの時間が経過しただろう。


「はぁ、成る程ねぇ。君は神威を持っているのか」


(`・ω・´)神威?


「いや、キリッとした顔しても困るんだけどね。まあ、有り体に言えば、君は物質が偶然魂を有した存在になったんだよ……付喪神といえばわかるかな?」


(⌒▽⌒)理解不能


「ま、そうだろうね。長い年月を経た道具などに神や精霊などが宿ったものが付喪神、九十九神とも書かれてね、100年間、大切にされていたものなどが良く付喪神になるんだよ。そして、君は付喪神の転生であるんだ……あ〜面倒臭いなぁ、もう」


(`・ω・´)貴方は神様?


「そ。創造神代行、一六の世界の管理神。まあ、気軽にアーカムさんと呼んで構わないよ」


(>人<;)アーカムさん。那由多は何処?


「那由多?どれ、ちょいと君の記憶を見せてもらうね……と、はぁ、那由多さんは転生してないなぁ」


(>人<;)え?那由多は何処?


まさかの那由多の転生ミス。

不可思議は身体をカタカタを揺さぶりつつ、アーカムの言葉を待った、

だが、アーカムから告げられた言葉は、とんでもないものであった。


「そこ。君を付喪神にした神威が、那由多さんだよ。那由多さんは、死んだ後、君の体に憑依していたんだ。そして100年のときを得て、付喪神となった。今の君は那由多であり、えーっと、不可思議である。二人で一人と思ってほしい」


(`・ω・´)意味不明


「まあ、そうだろうね。でも、これは覚えておいて、君は那由多で不可思議。二人で一つ、表裏一体……さて、転生の時間だ、どんな所がいい?」


そう問いかけるアーカム。すると、不可思議は自分の中のメモリーから、一つの世界を投影する。

それはMMO RPG『Fantasy World LIFE』の世界。

那由多と不可思議が一緒に旅をした世界。


「ふむふむ……あ、似たような世界はあるけど、まあいっか。そんじゃあ、そこに転生させるからね」


(`・ω・´)ギフトは?


「お、神々の祝福ギフトを知っているのかぁ。なら一つあげる、何がいい?」


(`・ω・´)那由多を転生させて


「……そうくるか。なら、それは神々の祝福ではなく試練だ。君はこれから向かう世界で、いくつもの試練を超えてもらう。それが全てクリアできたら、その時は那由多さんを転生してあげる」


(`・ω・´)わかった。


「肉体構成は……そのなんとかいうゲームのアバターにするね、能力も、それに準じておくか。アイテムボックス?あ、空間拡張エクステンションバックと空間収納チェストをセットしておくわ、これでよし……」


何やら不可思議を弄り回すアーカム。

そして不可思議が気がつくと、その外見は端末ではなく一人の少女の姿になっていた。

身長は155cm程、濡れるような綺麗な長髪。

年にして15歳といった所であろう。


(⌒▽⌒)那由多だ。


「うん、そうだね。まあ、名前は那由多にしないでね、転生者と同じ名前は駄目、不可思議も禁止。そんじゃあ、転生を始めるからね……」


(⌒▽⌒)ありがとう、神様


「いえいえ、どういたしまして。これも私の仕事だからね……」


アーカムの言葉の直後、不可思議だったものは、淡い光に包まれ、そしてゆっくりと消えていった。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ