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那由多と不可思議

まず。

これはショート連載です。

不定期連載ですので、更新速度はあまり早くありません。

それでも末永くお付き合いください。

 白い天井。

 きれいな壁。

 そして消毒液の匂い。

 いつもの病室のベッドの上で、天童那由多(てんどう・なゆた)はベッドの上についているノートパソコンをカタカタと操作している。

 その横には、高さ30cmほどの丸い球体。


「『それでは、今日はこれで失礼します……おやすみなさい』と。無事にログアウト完了。今日もサポートありがとうね」

傍の球体に話しかける那由多。すると、球体表面に、顔文字がふっと浮かび上がる。


(^^)ドウイタシマシテ


「いやいや、『不可思議』が居なかったら、今日のレイドモンスター狩りは危なかったわよ。でも、なんとか勝てたから良かったものの、もし負けていたらゾッとするわよ。経験値のデスペナルティーなんて払いたくないからね」


那由多のやっているMMO RPGは『Fantasy World LIFE』、ごく一般的なMMO RPGである。

昨今のファンタジー小説で流行りのネット世界に精神をダイブさせて遊ぶものではなく、ごく普通の3Dグラフィックのネットゲーム。但し、VRユニットを外部接続し、専用ゴーグルを掛けることで、視覚的にはダイブしたようになる。

那由多のPCの横にある外部端末は、彼女の両親の勤務先である『ネットダイバー社』の開発した人工知能搭載型電脳端末。無機質な球体で、音声と顔文字でさまざまな情報を与えてくれる。

それに那由多は、可愛い猫耳をくっつけ、不可思議という名前をつけた。


「でもね。最近思うのよ。異世界って本当にあるのかなって……」


(`・ω・´)アリマス


「そんなキリッとした顔で言われても。じゃあ、魔法があれば、私の病気は治るのかな?」


(`・ω・´)トウゼンデス


「なら、不可思議は私の病気が治る方法、探してよ。そして、一緒に異世界に行こう?不可思議のネットワークがあれば、どんなところも怖くないからね」


(^ω^)マカセテクダサイ


──コンコン

すると、だれかが病室をノックする。


(^ω^)サミヤサンデス


「足音でわかるの?凄いね……善おじ様、どうぞ」

那由多が扉に話しかけると、室内に一人の男性が入ってくる。

歳にして70はゆうに超えている男性。

着物姿にBorsalinoの帽子を被った老人は、帽子をひょいと外してニイッと笑う。


「那由多ちゃん、体の調子はどうだい?」


彼、三三矢善サミヤ・ゼンは、久しぶりに会った姪御に優しく問い掛ける。

彼は豊平区にある接骨院の会長を務めている。昔は小さな接骨院だったご、やがて規模が大きくなり、近くにある程よい土地を購入して、接骨院を移転した。

今はほとんど実務には出ず、後進育成と、接骨院の二階にある猫カフェの経営に忙しいらしい。


「最近、また薬が変わりまして。量も増えたんですよ、でも、食事制限が無くなって、好きなものが結構食べられるようになりました……」

「おお、そうか。なら、今度はちゃんと食べ物を買ってきてあげよう。何かリクエストはあるかい?」

「たい焼き。養殖でない天然のやつが食べたいの」

たい焼きに養殖も天然もあるのかと問いかけたい善。

すると、不可思議が善の方に向き直る。

──ピッ

すると、全身のディスプレイに地図が表記される。


(`・ω・´)ココデス


「へぇ。なんで天然?」


(`・ω・´)ココノ焼台ハ、一枚デ一匹シカ焼ケマセン、ソレニ……


つまり、一枚の焼き台で複数のたい焼きが焼けるのが養殖、そうでない、一丁焼きという焼き台一枚で一匹しか焼けないのが天然らしい。

それだけ一枚一枚丁寧に焼いているという証拠であると、不可思議は淡々と説明した。


「分かった分かった。それなら、今度はそれを買ってきてあげる。しかし、不可思議は、本当に凄いなぁ」


その性能に思わず驚く善。

彼の知る外部端末には、たしかに人工知能を搭載しているものは数多くある。

けれど、主人である那由多の心を先に読み取るように、命令もなく、直ぐに情報を引き出して説明する。

まるで人間のような先読みと言うか心配りをする人工知能を、善は見たことがない。


「不可思議は、お父様とお母様が私のためにって作ったくれたのです。確か……」


(`・ω・´)ワタシノコードネームハ『アーカム99』デス。検索エンジンハ、アーカム社オリジナルノ『深淵の書庫アーカイブ』ヲモイチテマス


「あー、分かった分かった。アメリカのアーカム社とネットダイバー社の共同開発したシステムだろう?賢作もよくもまあ、こんなの作ったよな」


那由多の父親である賢作の名前が出た時、那由多は少し暗い顔をする。


( *`ω´)ゼンサン、ソノ名前ハイケナイ


「あ、っと、済まんな。まだ賢作はアメリカなのか」

慌てて頭を下げる善。

すると那由多はコクリと頷いた。

「仕事が忙しいって。でも、お母さんは東京本社だから、月に一度は札幌に帰ってきてくれるよ?」

「そっか。なら、その分叔父さんが遊びにくるとしますか」


(`・ω・´)天然ノ鯛焼キヲオ願イシマス


──プッ

キリッとした顔でそう告げる不可思議に、那由多と善はおもわず笑ってしまった。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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