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11―地下牢


 これまでのライドの話をまとめると、トトが居るだろうと推測される森には大鬼(オーガ)を討ち取った灰色の大きな(ウルフ)の使い魔と、その主が共に居るらしい。場所は森といっていたが、俺の知る限りの地理を頭の中で地図として描いてみる。

 今居る荒野に在る町を視点として捉え、ここから歩いて三日ほどの距離まで南下していくと貴族の若い男と邂逅した丘があり、その丘と町の間にあったのは荒野だけ。

 さらに先には俺が転移していた草原に、そこから見えていた森林地帯。南方面は草原や森林地帯があると言う事までしか把握できていない。


 東は歩きながら視界に映った景色だけだが、荒野が続いていただけの荒れた大地だったはずだ。北も見えていた範疇では東と似たような有様だったし、これと言って想い描く地図は何もない平面ばかりだ。


 西の方角は他の三方とは違い森が見えていたのを覚えている。荒野の先に森がある不自然さに蜃気楼でも見えたかとも思ったが、ロロアも「なにかあるよ」と言って森の方を指差していたからな。

 二人とも森に気を取られていてすぐには気づかなかったが、人工的に作られた大きな壁が見え、それが町だと知れた時には森の事なんて正直どうでもよくなっていた。

 たぶんライドの森と言うのは西に見えていたあの森の事だろう。

 

 この町から西にある森がトトが居ると思われる場所か。


 そうして脳内に簡易的な周辺地図を作成していると、ふと疑問に思えた事が二つあった。

 オーガの襲撃以前に領主が近衛兵を森に差し向けていたのが確かなら、ギルドも報酬を渡すはずだった使い魔の主の居所を把握できていたはずだ。それがライドの話では所在不明として扱われている。

 これに違和感を感じると、二つ目の疑問が浮かんできた。わざわざ森に近衛兵を派遣した領主だが、なぜその森に魔族の子供が居ると知る事ができたのだろうか。近衛兵を動かすのだから、当時はそれなりの確かな情報を掴んでいたと思える。

 現在はギルドが捜索しても所在を明らかにする事ができなかったトトたちに、過去にはその所在を掴む事ができていた領主。今は何か理由が有り情報が入らなくなったか、或いは意図してその存在を不透明にしているとも考えられるか。

 奴隷として捕らえようと目論んでいた領主とは違い、金銭の受け渡しが目的だったギルドまでもが意図的に存在を隠すとは思えないが、


「聞いてもいいか」


 俺が足を組みながら考え耽る中、隣に座るロロアは食事を口に運ぶのに夢中になっていた。オートミールを食べ終えていたロロアは、焼かれただけの肉に(かじ)り付いたところだった。


「なんだ?」

「なぜロロアの弟が森に居るとわかったんだ?」

「領主がどうやって見つけ出したかは俺も知らないがオーガが現れた頃、その森へ出払っていた近衛兵の一人が森の中にある店で大きな灰色のウルフを見たと言っていたんだ。それに俺の仲間の冒険者、丘で斬り合った剣士がいただろ? そのライアンがこの間戻ってきたときに思い出したように口にしていたんだよ」

「なにをだ?」

「一年程前に、その子と瓜二つの子供が中央広場で買われていくのを見たと」


 トトの話になると途端に食事する手を休めて、ロロアはライドの話に耳を傾けだした。気になるのはわかるが、トトの事となると少しばかり重い表情になってしまうのが気掛かりだ。

 ロロアも疲れているはずだし、この先あまり根を詰める様な事が無ければ良いのだが……


「さっきも言ったが弟は大丈夫だよ。ライアンが見たという子は、たぶん君の弟だけど優しい人たちと共にしているようだから」


 ライドが食事の手を止めたロロアにフォローを入れるが、ロロアが今までにされてきたことに比べれると、自分の目で確かめない限りはその言葉も気休め程度にしかならないのだろう。

 俺はロロアの負っていた傷に奴隷紋まで目の当たりにしている。他人から受けた傷が大きいが故にライドの言葉全てを信用することができなくなっているのかもしれない。


「あのひね……わたしだけ、あのひとにつれていかれたの」


 連れて行かれた?

 そうか、トトより先にロロアが――


「トトは、わたしがまもるっていったのに、トトをおいていっちゃったの」


 ロロアが先に領主の息子に買われ、二人は離ればなれになったのか。


「それからは、うすぐらいとこにとじこめられて、まいにち、こっぷいっぱいのみずと、ぱんだけで、ずっとおなかすいてて、いつもいたいことされて、どれくらいあそこにいたのか、わからなくなって、たべるのもできなくなって、もうここでしんじゃうんだっておもってたの。でも、あそこできいたの」


 俺とライドは静かに語りだしたロロアの話に耳を傾けていた。


 ◇◇◇


 領主の屋敷。その裏庭に石を積み上げて造られた地下への入り口があった。その先は地下牢へと続く階段が伸びており、中はジメジメとした不快な空気が漂っている。

 階段を下りた先にある通路は岩肌が剥き出しになっており、通路の右側には鉄格子で閉ざされた五つの牢屋が並んでいた。その最奥の牢の一室に、一年程前から監禁されている少女が居た。


 この五つある牢屋には少女が一人閉じ込められているだけで、他には牢番の二人しかいなかった。

 定期的に牢の中を確認していた牢番は少女の異変に気づき、持っていた槍の柄で柵の中で冷たい石床に伏していた少女を小突いた。反応の無い少女を見ながら、


「おい、こいつ死んでるみたいだぜ」


 大柄な体躯をした牢番の男が伸ばした槍を手元に戻すと、階段を下りたすぐ側に置かれている待機机に腰を下ろしている細身の牢番に声を投げかけた。


「あ? 今朝は生きてたぞ」


 通路に響く牢番たちの声。足を小突かれても反応を示さない少女は、ついに力尽きたと思われていた。


「今晩、日が落ちてから捨てに行くか」

「前のガキは俺がいったぞ。次はお前がいけよ」


 細身の牢番が確認のため通路の奥へと足を運びながら、大柄な牢番に投げ掛けられた言葉に対し、次はお前だと言い張り、細身の牢番が牢の前まで来ると続けて「こりゃあダメだな」と伏せていた少女を見ながらそう言った。

 骨と皮だけの痩せ細った少女の居る牢の前で、二人の牢番が愚痴を溢しながら会話を続けていた。


「これを片付けたらまた新しいのがくるんだろ? きり無えよな」

「そう言や、これを売っていた奴隷商がこの魔族の子供(ガキ)と瓜二つのガキを売っていたみたいで、何度か捕らえに行っていたみたいだぞ」

「売っていたのは一年も前だろ? こいつも毎日のように痛めつけられてよく生きてるよな。その売られていたガキはこいつの兄妹か何かか?」

「どうだろうな。そっくりなんだから双子か何かじゃねえのか?」

「牢に放り込むならこの牢にしてこいつの屍を拝ませてやりてえな。考えただけでもおもしれえな! 兄妹の死体と同じ牢屋でどれぐらい正気でいられるのか見物だ」


 大柄な牢番の高笑いが岩壁の通路に響いた。


あそこ(中央広場奴隷市)で奴隷を買っていくのは常連の奴らばっかりだろ。奴隷商にいって言い値で買い取るとでも言えば連れてくるんじゃないか?」

「前にオーガが現れて町を襲っただろ、そん時に当時の奴隷商は死んじまったよ。それにそのガキを買った奴も旅人のような身形をしていたらしい。なんでもその旅人風情が競り値(せりね)の倍を提示して即決で買っていったらしいぞ」

「へっ、こんなガキに身銭はたいて買っていくなんざ、領主様の他にも物好きがいるんだな」


 そう言うと、大柄な牢番は槍の柄で石床に伏している少女の頭を揺らしてみせた。


「こいつの死体を早くそのガキに見せてやりてえな。おい、お前の家族が見つかるかもしれないみたいだぜ。ここに連れてこられたら、そいつはどんな目に合わされるんだろうな」


 石床に伏したままの少女を見ながら、大柄な男は不気味な笑みを浮かべた。その姿を見ていた細身の牢番は「お前の下劣さも相当だろうよ」と、付き合いきれねえと言った表情で待機机のある側に向って歩き出した。

 大柄な牢番は檻の中を覗き見ながら槍を手元に引き戻した時、少女が指先が動いた様に見え、


「おいっ! こいつ生きてるぞ! 今少し動いた」

「さっき散々小突いてもピクリともしなかったんじゃないのか?」

「気のせいか。まぁ生きてる限りはここから出られる事はねえか」


 大柄な牢番も少女の監禁されている牢を横目に細身の牢番の後を追い、入り口を見張るために階段を上っていった。


「……トト」


 衰弱しきっていた少女は冷たい石床の上で伏しながら死んだと思われていた。少女には動けるほどの体力も残っておらず、辛うじて意識がある程度だった。

 そんな状態でも先ほどの牢番の話を聞いていた少女は、悔しさと後悔が入り混じり堪えていた涙を石床に流しながら、ただ小さく呟く事しかできなかった。


「まま、ぱぱ。だれか……たすけて」


 その日、少女は檻の中から姿を消した。


「それでめがさめたら、もりのなかにいたの」


 目覚めたら、あの森林にいたのか。


 いったい、どうやって牢から出られたのか。その牢番達が逃がしたとも思えないな。

 以前聞いた話で、てっきり領主の息子から自力で逃げだしたと思っていたが、ロロアにもなぜ自分が森にいたのか、わかってはいないようだ。

 ただ弟の傍に……そのためだけに衰弱した身体で一歩ずつ、あの草原まで歩いてきたのか。俺が居た場所までは一日では着けなかっただろうに。あの時、俺が居なければロロアは死んでいただろう。偶然か必然か、この子を助ける事が出来て良かった。


「ごめんなロロアちゃん。仲間の代わりに謝罪させてくれ」


 ライドはロロアの話を聴き終えると、立ち上がり「すまなかった」と言って頭を下げた。


「なんであやまるの?」


 いきなりライドが立ち上がり頭を下げてきた事に、ロロアは困惑した様子で俺の顔を見上げてきた。俺もなぜ関係の無いライドが謝罪しているのか理解できず「なぜライドが謝るんだ?」と尋ねてみる事に。すると、


「ロロアちゃんにはどうしても謝りたかったんだ。仲間の二人が戻ったあの日、凄腕の剣士にやられたと言ってライアンが連れ帰った領主の息子の姿を見た時、二人が無事だった事に俺は感謝した。冒険者稼業をしているんだ、当然強い魔物や相手の力量を測り間違えて死んでいく奴もいる。俺の仲間は現にカザミの強さを測り間違え剣を向けた。殺されていても仕方の無い事をしたんだ」


 そこまで口にしたライドは、一呼吸置くと、今度は俺に向かって深々と頭を下げた。


「仲間を見逃してくれてありがとう。本当に感謝している」

「俺は礼を言われるような事はしていない。どうしてもと言うならライドの謝罪を受け入れるからさっさと座ってくれ」


 俺は鎧姿で立ったまま話をするライドに早く座ってもらいたかった。

 他の冒険者が集まる酒場でライドが頭を下げている姿は目立ってしまい少々居心地が悪い。他の冒険者たちの視線が俺たちに向いている事が背中で感じ取れたからだ。ようやく腰を下ろしたライドは話を続けた。


「カザミなら俺の仲間を握り潰すなんて造作もなかっただろう。エミーラはカザミと対峙したときに、心臓を鷲掴みにされた思いだったと言っていた。戦えば、無事では済んでなかったはずだ」

「人を殺すのは本意ではないからな。誰であろうと向かって来るなら容赦する気はなかったさ。あの二人は退いたから相手にしなかっただけだ」

「俺の仲間は報酬に目が眩み領主に加担した。捕らえられればその子がどんな仕打ちに合うかは容易に想像できてたはずなのに……すまなかった」


 ライドはロロアに視線を向けたあと、俺の顔を見直してテーブルの上に両手を付き、深々と頭を下げた。

 そうだな、考えもしなかった。牢で死を実感したと言っていたロロアに、あの領主なら次は間違い無くロロアの命を奪っただろう。あの二人も領主が何をするかぐらい想像できたはずだ。それでも尚、加担したんだ、あんな奴らは殺しておけばよかったか。


 ライドの言葉で、本心では今からでも殺してやりたい気持ちになった。それでも今はロロアも無事だった事だし、生かして還したからこそトトの情報が入ったようなものだ。今回だけは大目にみてやるか。


「気にするな、だが次はない。それだけは覚えておいてくれ。それにライドには食事(ここ)をご馳走になっている身だ。もうその事はいいから頭を上げてくれ」


 あの日、俺は怒りで領主の息子だという男を殺しそうになったが、子供の前で人殺しなんて事はしてはいけないと、理性が俺の怒りを静めたのを覚えている。

 ロロアを抱いてあの場から離れた後、俺は眠る事ができずに荒野で一夜を明かした。


「そう言ってくれると、抱えていた荷が下りた気分だよ」

「それで、トトのいるだろう森の話を聞きたい」

「この街の西側に森が見えていただろ?」

「あぁ、草原の向こう側ではないほうだよな」

「そうだ、そっちは森林地帯になっていて街から見て南に位置する。あの森林地帯を抜けて、さらに一月程進むと魔族の住む国との国境があるそうだ。魔族の国は海に面していて、とても栄えていると聞いたことがある。行った事はないがな」


 いつか魔族の国へ行き、ロロアが暮らした森に両親の墓を建ててやらないとな。会えはせずとも、そこに居る。そう思えるだけで少しは悲しみから救ってやれたらと思う。

 何よりもまずはトトに会いに行こう。それがロロアの願いだからな。


「西の森も見たところかなり広大だったが、めぼしい所在はわかっているのか? 近衛兵が何度か赴いていたんだろ」

「それなんだが……オーガの一件と重なるように、あそこは只の森ではなくなってしまったんだ」

「見た限りだと、よくある森にしか見えなかったが?」

「いったい何があったのかはわからないが、あの森には突然地下迷宮(ダンジョン)が現れたんだ。前に何度か近衛兵が向かっていた所は、森の中腹にある開けた場所に小さな店があったそうだ」


 そう言ったライドは険しい表情を浮かべた後、重い口を開いた。


「今は使い魔の姿を見たと聞いていた店も、そこに居た彼らも、忽然と消えていなくなってしまった。入れ替わる様に店が在った跡地にはダンジョンの入り口が出現している」


「ならトトたちはどこへ!」


 俺は大きな声を出してしまったらしく、店にいる他の冒険者が俺たちのテーブルに視線を向けた。ライドの言っていた問題とは、この事(ダンジョン)だったのか。


 隣に座るロロアも、驚いた様子で俺の顔を見上げながら服の端を握り締めてきた。言葉を口にはしなかったが、湧き上がる何かを必死に堪えている様子だった。

 俺はロロアのその表情を見ると少し冷静になれた。ロロアが押し黙り冷静に話を聞いているんだ。俺が取り乱したところで好転しない事はわかっていた。


「すまない。大声を出すつもりはなかったんだ。それでトトたちは無事なのか?」

「俺にもそこまではわからないんだ。ただ、そうなる以前はその店に居たはずだ。消えてしまった店に今も居ると思っている。申し訳ないが、ここからは俺の推測なんだが続けていいか?」


 今にも泣き出しそうなロロアの表情を見たライドは言葉を紡ぐのを止めて、俺の顔を見ながら確認をとってきた。そう言われロロアに視線を送ると、ロロアは黙って頷いた。まるで「大丈夫だよ」と言われた気がした。


「続けてくれ」

「店のあった場所に現れたのがダンジョンの入り口だ。たぶんダンジョンが現れる際にダンジョン内に呑み込まれたんではないかと、俺は考えている」


 領主もギルドも、トトたちの情報が掴めなくなったのはそう言う事だったのか。突然ダンジョンが現れ、出現場所がトトたちの居た店。そんなピンポイントでダンジョンが現れるなんて、冗談みたいな話じゃないか……


「ダンジョンってのは、そう唐突に出現するものなのか?」

「いや、俺もなぜダンジョンが現れたのか知らないんだ。そもそも、今ある無数のダンジョンは古代の遺物だと聞いている。それが突然あの森に現れたんだ、なにが起こっているのかギルド(俺たち)もさっぱりさ」

「そうなのか……俺もダンジョン内に呑み込まれた可能性は高いと思う。確認する手は一つしかないだろうな」


 口許に握り拳を置き、眉間に皺を寄せて想像(イメージ)を働かせていた。ダンジョンが現れたという事自体が俺の想像の範囲外だったが、こうなれば確かめに行くしかないだろう。


「行くのか? ダンジョンに」

「行って確かめるしかないからな」

「なら、俺も同行させてくれないか?」

「冒険者ならパーティーを組んでダンジョン攻略でもすればいいんじゃないか? 俺は単に迷子のトトと、共に呑まれてしまった犬と飼い主を探しに行くだけだ」


 そう言ってロロアの顔見ると、ロロアも黙って頷いていた。ダンジョンに一緒に潜る気なのか? それはさすがに危険だろうと思っていると、


「この街の冒険者は全員あのダンジョンに一度は潜ってはいるさ。中には帰ってこなかった奴らもいる……街の冒険者でどのパーティーよりも先へ進んだのは俺とその仲間たちだ! 攻略できる自信はあった。だが潜ってみると魔物の強さは別格で、地下七階層までがやっとだったんだ。あの穴の中はどこまで続いているのか検討もつかない。それでも、あそこに恩人たちが囚われてしまっているのなら、俺も助けたい……力になりたいんだ!」


 この世界の冒険者の強さがどの程度なのか、俺には把握できていないがライドのパーティーはきっと、この街では知れ渡った冒険者たちなんだろうな。筋骨隆々の上半身裸男も顔色を歪ませて踵を返していた事だし。

 少し気になるのは剣士ライアンだったか? たぶんあれは別としても他の仲間が精鋭なのだろう。

 VRではソロが主流だった俺はパーティー戦はあまり経験していないからロロアを守りきれるか不安だ。だから根は大丈夫そうなライドに、ダンジョンに潜る間はロロアの事を任せようと心の隅で考えていた。

 正直言って、俺も異世界初ダンジョンにソロで挑んでいいものかと不安はある。でもそれ以上に、こんな子供を危険な場所へなんて連れていけるはずがない。


「わたしもいく、かじゃみといっしょにトトさがす」


 俺の考えとは裏腹に、ロロアはそこにトトが居るのなら。と言いたげに力強い眼差しを俺に向けてきた。

 ロロアの願いはもうすぐ届きそうなんだ。一人待つなんて事は(じっとなんて)していられないんだろうな。わかったよ。何があろうと守ってみせるさ。こうなればライドも一応連れて行くか……


「なにがあるかわからないし、危険かもしれないんだ。それでもいくのか?」

「うん」


 コクリ頷き、覚悟を決めているようだ。


「わかった。ロロアもくるなら人手は多いほうがいい。ロロアは戦えないからライドの盾で守ってやってくれ」


 俺の言葉を聞いたライドは、俺の頼みを受け入れてくれると同時に、同行できる事に対して感謝している様にも見えた。そんなライドは胸を叩いて自信有り気に口を開いた。


「任せてくれ! そうと決まれば俺がダンジョン内で知り得た全てを伝えておこう」


 ライドの話は長引きそうなのか、空いたコップを見て飲み物を注文してくれた。どの様な危険があるのかライドに聞けるのなら、ダンジョンについて詳しく聞いておくの(掘り下げて)もいいだろう。



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