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人気の少ない深夜帯のラボ。
PSIアンドロイド開発研究所の一画にある部屋から明かりが扉から細く漏れている。
そこに1人、PCと向き合い疲れた表情で仕事をする東条薫子がいた。
飲みかけのコーヒーマグを手に取り、中に残ってたコーヒーを飲み干すとため息をついた。
「あー、やっと終わった。」
「お疲れ様です先輩。」
振り向くとそこには、後輩の斉木詩織が立っていた。
「あーら、まだいたの?。相変わらず仕事熱心ね〜。」
「先輩こそ、ここ2週間くらい帰ってませんよね?。」
「もーね、帰るのが面倒臭いのよねー。」
「先輩らしいですね。」
ものぐさなセリフに少し呆れたのか、詩織は苦笑いをする。
2人は大学の頃から仲だ。
ロボット工学を専攻していた仲間達と作ったサークルの勧誘で弟の『悟』が連れてきたのがきっかけだ。
「犯人、まだ捕まりませんね。」
「んー?、そーねー。」
先日、開発実験中の新型アンドロイドの機体が1体研究所から盗まれるとゆう事件が起きた。
その開発に2人も関わっていた。
「まるで他人事みたいですね、先輩は。」
「そんなことないわよー。心配してるわよ?。」
「そうですか...。」
詩織が薫子に近づき顔を覗き込む。
不意をつかれ驚いた薫子が、逃げるように椅子を後ろに引く。
「もー、なによー。」
「先輩じゃありませんよね?。」
「なにがー?。」
薫子は少し困った顔で笑いながら椅子から立ち上がり、新しいコーヒーを入れに行く。
それを遮るように詩織が前に出てきた。
「新型のアンドロイドの機体を持ち出したの、先輩じゃありませんか?。」
「まさか、何のために?。」
「理由は分かりませんが...、でも、あのラボのロックの解除は開発主任の先輩しか出来ないんですよ?。」
「ものすごい泥棒が開けたのかもしれないじゃない?。」
「有り得ません。ここのセキュリティーはそんなやわなものではないんですよ?。」
詩織が真剣な眼差しで薫子を見つめる。しかし、そんな事は意にもせず薫子はコーヒーメーカーの元に行きコーヒーをマグに注ぐ。
「理由も、証拠もなく人を疑うのは良くないわよ詩織〜。」
「先輩!。」
マグに入れたコーヒーを飲み干すと、薫子は部屋を出ていった。
「はぁ...。」
深くため息をつく。
詩織には確信があった。犯人は薫子だ。
確かに、防犯カメラには薫子の姿は映っていなかった。警備システムにも薫子が犯人だとゆう証拠は残されていなかった。
しかし、詩織は薫子が何か隠してるとゆう事が分かる。
長い付き合いだ、互いに異変があればすぐ気づくほど2人は仲が良い。
薫子は普段嘘などつかない。自分の非もすぐさま認め、謝る性格なのだが今回は違う。
何か隠したい時の笑い方。
詩織にはそれが分かる。しかし今回の薫子はそれを認めようとしない、明らかに何かを隠している。
いったい何のために...。
ついたままの部屋の明かりを消し、詩織も部屋を後にした。