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あれから、5分おきに伯母に電話をかけているがまったく出ない。
部屋の中にはイラつく私と、裸でうろつく試験アンドロイドが1体。それと、それを梱包していた大きな箱が横たわっている。
「はぁ...。」
もう、ため息しか出ない。止めよう。
このままかけ続けても不毛なだけだと、薫子伯母さんとの話し合いは諦めた。
アンドロイドが居た方に目をやると姿が見えない...どこに行った!?。慌ててリビングを見渡すが姿はない。
急いで玄関の方へ見に行くが、ロックは外れていない。
風呂場、トイレ、クローゼットを見たが居ない。まさか...。
急いで寝室を見に行くと、そこにはアルバムを覗いているアンドロイドが居た。
「ちょっと、勝手に人の部屋に入らないでよ!。」
「だって、優希忙しいそうで暇だったんだもん。」
アンドロイドは唇を尖らせ、まるで子供のように拗ねてみせた。
暇だった?、まるで人間みたいな事を言う変なアンドロイドだ。
「勝手に動き回らないで。部屋にも入るな、物にも触らないで。」
「えー。」
「...とにかく早く部屋から出て。」
「ねーねー、遊ぼうよ優希〜。」
「私のことを『優希』って認識してるって事は人事データが既に入っているのね貴方。」
「うん、優希のこと知ってるよ。」
「こっちに来て。」
アンドロイドに、リビングのソファーに座るように促す。
「調べるから動かないでよ。」
「何を調べるの?。」
首にあるUSBに小型のプログラム解析機を取り付ける。
タブレットに解析データを送りながらプログラムのパスワードを調べていく。
調べだしてすぐに、解析不可能のエラーが表示される。どうゆう事だ?。
いくら調べようとしても、解析不可能の表示が出される。
何で...。
「.........。」
しばらく俯き考え込んでいると、アンドロイドが私の顔を覗き込んできた。
「顔色悪いよ、大丈夫?。」
「...いくつか質問に答えて。」
「なに?。」
「まず、貴方の機体番号は?。」
「PSI0856870039。」
「機体の製作された場所は?。」
「PSIアンドロイド開発研究所エストラボ。」
「機体の製作責任者は?。」
「PSIアンドロイド開発研究所、アンドロイド機体開発研究部主任『東条薫子』博士。」
「貴方のプログラムの開発者は?。」
「...わからない。知らない。」
「は?。」
「わからない。」
やはり何かがおかしい。
「貴方が製造された目的は?プログラムの内容は?。」
「えーと...わからない。」
「おかしな事言わないで。使用目的のわからないアンドロイドなんて聞いたことがない。」
「だって、本当に分からないんだよ。」
「なら、貴方は何のためにここに来たの?。何故私がモニターに選ばれたの?。おかしな事ばかりだ。」
「それは...。」
「質問、『私』は誰?。」
「PSIアンドロイド開発研究所保安プログラム開発部開発職員『東条優希』。
18歳女性。未婚者、両親は他界しており親権者は父方の姉『東条薫子』氏。」
「試験アンドロイドのモニターは、開発研究所の関係者及び近親者はできない決まりなの、不正を避けるためにね。
なのに何故私が選ばれたの?。」
「俺は、父さんと母さんに言われてここに来ただけなんだよ。」
「父さんと、母さん?。」
「そう、『優希』のそばにいてあげてほしいって。」
「それは、貴方のプログラムの開発者の事なの?。」
「...。」
訳のわからない事ばかりだ。
開発者不明のプログラム、使用目的のわからないアンドロイド。
このアンドロイド本当に...。
「...頭痛い、寝る。」
考えるのに疲れ、寝不足もあり、辛くなってきた。
「じゃー、一緒にねよ。」
「断る!。」
ムカつきのあまり、勢いよくアンドロイドの頭をぶっ叩いた。