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プロローグ
雨が降ると思い出す、あの日の思い出。
私の、8歳の誕生日。
何ヶ月も前からこの日だけは必ずそばに居て欲しいと、仕事が忙しい両親にダダをこねた幼い自分。
だけど、やはり両親はその日も仕事が入り私は泣いて嫌がった。
『すぐに帰ってくるから。』
いつも家を出る時に父が言う言葉。
『ごめんね、いい子に待っててね。』
泣きじゃくる私の頭を優しく撫でながら母が私に言い聞かす。
その日は朝から酷い雨で、肌寒かったのを今でも覚えている。
それが両親との最後の記憶。
次に出会ったのは、病院の遺体安置室だった...。
あんなに温かった両親達の体は、無残に傷つき冷たくなっていた。
居眠り運転のトラックとの接触事故だったと言う。
車のトランクには私宛のバースデーカードとプレゼントが入っていた。
泣いて両親を呼び、起こそうとするがピクリともしない父と母の手。
嫌だ嫌だと泣きじゃくる私を、叔母がひっしに抱きしめた。
今でも思い出す、冷たい記憶。
私の心は、あの時から冷たく閉じられた。
1人でいよう。失うくらいなら。
もう二度と、あんな思いはしたくない。