作中神話要素解説
今回は少ないので『D-CLUB』の分をちょっと載せています。
◇赤マント【都市伝説・怪異】
おそらく日本の都市伝説でも一、二を争う傑作的存在
その原型は幾つもの噂や事件、あるいは妖怪の複合存在である。
現在はほぼ学校の怪談のトイレ妖怪だが、これは『赤い紙と青い紙』の属性であり、『赤い紙と青い紙』は京都のカイナデと言う便所妖怪(厠神)がルーツではないかと言われている。
一方、通り魔・殺人鬼の属性は実際に起きた明治の誘拐殺人事件が原典的モチーフではないかと言われている。
これが通称『青ゲットの殺人事件』である。
1906年福井県2月11日
この日、一家三人が惨殺(一名は行方不明)され、その最有力犯人が青い毛布を頭から被った男とされた。この男が虚言で一人一人連れ出して殺害したと警察は判断する。
青い毛布は雪避けだったが、犯人が不明となる原因ともなった。
遺体のうち二人は川の底から発見されるも、犯人は捕まらなかった。凶器は現場の木製の橋の一部を切る事ができる事から、斧だったのではないかと推測された。
後年、松本清張がこの事件をネタに『家紋』と言う短編を書いている。
この事件は迷宮入りしたのだが、この後なぜか資料が変化し、無い筈の証拠品が増えたり犠牲者が減ったり青毛布が赤毛布になったらしい。伝言ゲームの失敗であり、すでに都市伝説化したのである。
更に、別ルートで昭和1940年(昭和十五年)、関西でそのものずばり『赤マント』と言う紙芝居がお上に禁止回収処分を喰らう。ただし、この作品は別に殺人鬼の話でも人さらいの話でもない。赤マント姿の仙人の話である。しかしこれが『赤マントの怪人』に変質し、東京に上陸したと言う説もある。
また、憲兵に対する恐怖心が生んだ、と言う漠然としすぎる説。
特高が共産主義者を弾圧する行動。
などなど、社会情勢も影響を与えたとされる。
この辺りの研究は様々な方々が行っているので興味があれば覗いてみる事を勧める。
いずれにしても明治期からの都市伝説が融合し、更に古代の妖怪まで合体した、まさにハイブリット怪異なのである。これを傑作と呼ばなくて何と言うのか。
まあ『女性をさらい暴行して殺害するトイレ妖怪』と言うのはどうにも、それは妖怪じゃなくエロゲにはよく居る変質者なのだが。
近年屈指の赤マントは二十年ほど前『地獄先生ぬ~べ~』に登場したAだろうか。
幼いジャンプ読者にトラウマを与えたとも言われるそれが、新しい赤マント像に一役買った可能性も否定はできない。そう言えば最近復活していた。
クトゥルフ神話で赤マントはそう言う現象に見える何らかの旧支配者の暴威である、とすると面白いかもしれない。
◇偽警官【犯罪者】
警官を騙る事それ自体が軽犯罪である。更に犯罪行為を重ねた場合、罪はもちろん重くなる。昨今流行の振り込め詐欺で警察を騙る行為があるが、この場合は詐欺の上に罪状が乗っかる事になるだろう。ただし証明されないと難しいが。
更に言うと、警官のような服装をして表を歩くと、これもアウトだ。
警備員などが警察に酷似した制服を着る事は禁止されているのである。
ミニスカポリス? そんな婦警はいないので問題無い。ただし別件、例えばわいせつ物陳列罪で捕まる可能性は否定できない。
この時、『私』が遭遇した偽警官は食屍鬼である。彼らは時に人の社会の中で姿を誤魔化して存在する事がある。
目的は、隣人が手に入れた『本』、『屍食経典儀』だった。
人間社会に居る食屍鬼は、この魔導書で仲間を増やそうとしたりする。
ただし、『屍食経典儀』自体は食屍鬼関連ではそれほど大したものではないらしい。
◇深きものの巫女【クリーチャー】
私の短編『D-CLUB』に登場する深きものの血を目覚めさせる力を持つ女性。
エキゾチックな美女で、通称は人魚姫。彼女と交わる事で薄まった血は目覚め、肉体の変質も加速する。
深きものの血を目覚めさせる方法は色々あるのだが、性交を娯楽として共有する事でコミュニティを形成する、と言う身も蓋も無い目的もある。
ただし、作中の隣人は精神の方が遅れたため、悩み、そして悲劇を迎える。
そう言う例も稀に起きる為、可能な場合は深きものの女性がパートナーに着く事がある。
元ネタは矢野健太郎『邪神伝説シリーズ ダークマーメイド』のキャラ。
なので、『D-CLUB』の人魚姫と同じ人物である事は否定しない。
◇銀の小鍵【???】
またの名を魔鍵ランドルフ。冗談である。
ドリームランドに渡る為の免罪符的アイテム。つまりドリームパスポート!
これを使えば基本無条件で幻夢郷に行ける。
幻夢郷は何らかの神の力を借りなければ無事に渡る事ができない(私の設定ではそう言う事になっている)。
銀の小鍵とはマジックアイテムでも無ければ、アーティファクトですらない。
神々の権能の限定的な一部分なのである。
この場合、銀製の小鍵を媒体として力を宿させる秘術を使う事になる。
ドリームランドは食屍鬼の住む場所でもある。その地に渡ろうとしたとしても不思議は無い。
◇屍食経典儀【魔導書】
ダレット伯爵が編纂したオカルト知識のマニア向け書籍、と言うのが本質のような気もする魔導書。主に屍食、死体姦と言った冒涜的行為を伴う禁忌の知識を取り上げている。中には食屍鬼に関する知識もあり、この魔導書を手に食屍鬼への道を歩もうとする人物も居る。
前述の通り本来マニア向けウンチク本なので魔導書として機能するレベルの物を入手するのは物凄く困難で、日本語翻訳版なんぞどこから持って来たのか。思いつく限りでは東京の某骨董品店くらいしか無い。最近看板娘が一人になった。いや、もともと一人だったか?
余談だが、もし食屍鬼になりたいのなら、断然『食屍鬼写本』を勧める。
一部の食屍鬼が崇める偉大なる旧支配者、納骨堂の神モルディギアンに対する信仰と儀式が記されているのだが、何と一定条件で食屍鬼化が自動確定する便利グッズだ。普通の人間ならまず不可避である。
◇肉【アイテム】
ここまで書けば、隣人が手に入れた肉が何の肉か分からないとは思わない。
が。
一応R15指定していないのでヒントだけ並べる。
1 妲己
2 スウィーニー・トッド
3 ロビンソン・クルーソー
4 ウェンディゴ症候群
ところで、貸しロッカーに〇肉とか、コインロッカー系の都市伝説そのものである。
◇グールディーパー【クリーチャー】
深きものの因子を持つ者が食屍鬼に転生しようとすると稀に発生する合体事故的ハイブリッドクリーチャー。またの名を『愚劣なる狂獣』。
その姿は食屍鬼や深きものよりも二回り近く大きい。これは深きものの無限成長性が先に出た物である。また、身体機能は両者を遥かに上回る。余りの急速的肉体膨張に背中が裂けて血まみれになる。これが赤マントに見えた由来である。
ただし、理性はゼロ。クトゥルフ神話の奉仕種族としてはそれなりに理性を持つ深きものや食屍鬼の知性も引き継がず、頭の中身はほぼ獣と言って良い。
しかも、深きものからは種族維持本能。食屍鬼からは食欲を引き継ぐと言う、完全にダメな方向に暴走する。
つまりどう言う事かと言うと、主に女性を襲い、暴行し、殺害し、食べる。
ちなみに、深きものや食屍鬼よりも凶悪な戦闘力だが、両者同様に武器次第で十分撃破可能だろう。
連続殺人事件はこの怪物を殺した時点で終結した。
表に出せなかった事もあるし、この事件を神話的事件として隠蔽した集団も存在する。
◇隣人の手帳【魔導書?】
この手帳に書いてある内容を調べた場合、正気度チェック。成功の場合1。失敗の場合1D6を喪失する。
すでにクトゥルフ神話技能を習得している場合は1%入手。
更に、この手帳にはある種の救済の呪いがかかっている。
読み込んだ人物はアイデアで判定。成功の場合は食屍鬼に関する知識欲が芽生える。
この手帳から特定の呪文を習得できるわけではないが、食屍鬼関連の情報の理解が驚くほど速くなる。
この症状は普段は影響を出さないが、不定の狂気が発生した瞬間、「食屍鬼になりたい」と言う感情が爆発する。
かゆうま。
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