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高層マンションにSTOP!  作者: 嬉野三太郎
反対運動の進め方
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何をやったらいいのやら

 会を作っても一体何をしたらいいのか誰もよくわからなかった。とりあえず、市役所に窮状を訴えてみよう。こういうことで市役所に行ったが具体的な方策はつかめなかった。


 今思えば、前節でのべた「中高層建築指導要領」を厳密に適用させる努力が有効だったのだが、当時はもっぱら窮状を理解してもらうことに終始していた。 反対運動はそういったお願いの行き詰まりからスタートしたわけだが、役に立ちそうなことはなんでもやって見るということが基本ではある。


 業者が説明会をするから、なるべく町内の人に多く来てもらって抗議しよう。そのために「百原通信」を発行して、全戸に配布しよう。反対の意思表示をする幟旗を立てよう。ホームページも作ろう。そんなことから始めることになった。


 地域住民というのは会社や、学校と違っていろんな人がいる。それが弱みでもあり、また強みでもある。さまざまな能力を持った人たちがいる。ある人はホームページを一味違った形で立ち上げた。コミカルな表現で反対運動を表現した「マンション様のお通り」は、業者を痛烈に批判して住民の中で評判になった。


 公式なホームページとは別にして、業者からクレームもついたが、会としては知らぬ存ぜぬで通した。個人ブログを作って街作りへの思いを綴った人もいた。「百原通信」は会の立ち上げに中心的だった人ではなく、むしろ、中心メンバーによる暴走を心配するくらいの人たちが編集を引き受けた。


 文章を書くのが得意な人もいて、さまざまな嘆願書や抗議文を作った。定年退職した人たちは平日に市役所へ出かけてお願いするなどを引き受けた。看板つくりの名人も現れた。


 運動の中で実に多才な様々な能力が発揮されるようになっていった。日頃、同じ地域に住んでいるといっても、お互い名前も知らないような付き合いだったのだが、こういった反対運動の中で、知り合うことが出来、いろんな隠れた特技を発見する喜びもあった。


  連絡用のメールリストを早期に作ったことが、その後の活動に非常に役に立った。毎日何通ものメールが流れて、情報が伝わり、またいろんな意見の議論が行われた。メールリストが住環境を守る会の大動脈になった。


 会がスタートしたからといって、物事がただちに進展するわけはない。調べてみたら、この地区が「第一種中高層住居専用地域」であり、高層マンションが建って当然のようなことになっていることがわかった。


 法改正で第二種住専地域はほとんど自動的に中高層地区にされてしまっていたのだ。これでは、十四階建ての防ぎようもない。タワラコーベンは胸を張って「合法的な建設ですのでスケジュールは進めさせてもらいます」と言い放った。


 当初、誰もが業者の良心に訴え、住民の苦境を理解してもらえば何とかなるかとも考えたが、なかなかそんなに甘いものではないことも解ってきた。市役所から注意してもらえば考えを改めるかもしれないとも思ったが、結局は市役所も徹底して市民の味方になってくれるものではなかった。会社の株主は、社長に直訴は、銀行は、と考えたが、結局住民が困っているという事だけでは、確かに共感を呼ぶのであるが、現実の力にはならなかった。


 抗議文などで効果があったかと思われるのは、建築確認会社への訴えである。建築確認をするのは、現在では民間会社であり、確認書を出さないことには儲からないし、厳しくして受注が減るのを恐れるだろうから、正義感に期待はできない。しかし、あまりいい加減な確認をしたのでは、耐震偽装事件でも経験したように、社会的信用を失い、やはり受注を失う。住民からの訴えがあれば、相応に慎重な確認をしてくれる可能性はある。


 この時、具体的な懸念事項を挙げておくことが大切だ。月葉百原計画でも、隣地まで五〇cmしかなく、一箇所しか地盤調査をしていないなど建築確認の上で問題になる所を指摘した。緑地面積にコンクリートの淵石まで入れているとか、都市計画審査が不十分であとから問題になる点も指摘した。住民から建築確認会社に指摘しがあったにも関わらず審査が不十分だったら、確認会社としての責任が問われると脅しておくことも必要だ。


  実際、隣地まで五〇cmで、一㍍近くの段差があれば、どこに土留壁を作るのかも問題だし、切梁式の場合つりあいや自立式の場合の矢板の変位も、周辺の地盤沈下を引き起こす可能性があるから、問題になる。土塁矢板の引き抜きをどうするのか、狭小位置でのクレーンやスラッシュタンクの配置も難しい。建築確認はこういった工法上の問題点もチェックする必要があるはずだ。


 結果的に、建築確認が出るのにニヶ月以上かかった。通常の審査スピードよりかなり遅いので、おそらく一度差し戻されて、出しなおしをしたと思われるが、それを確認することはできない。


 住民が困ることを訴えても、世の中は動かない。法律は必ずしも住民の味方ではない。だから裁判を起こしてまで争ったこれまでの多くの闘いも多くは結果的には敗北に終わっている。最初からとてつもない困難につきあたりながら運動はスタートした。


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