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高層マンションにSTOP!  作者: 嬉野三太郎
高層マンションを考える
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都市住宅計画のあり方

  これまで、不当な高層マンション建設との闘いを書いてきた。ここで少し、都市住宅のあり方について議論してみたい。私たちは高層マンション建設に反対して闘ってきたわけだが、高層マンション全般が悪であるのかと言うと、そうは言えない。やはり、都市の空間は限られたものであり、有効な使い方として高層マンションも一つの方法だろう。遠くまで通勤しなければならない人々が多いという社会構造が問題ではあるのだが、現実に多くの人たちが駅から電車で通勤しなければならないという状況を考えれば、駅の近辺などは高層マンションが建ってもしかたがないと言える。駅の近辺は商用地であることが多く、実際には他の住民の妨げになることは少ない。もちろん無制限ではなく公園や公用地との兼ね合いを考えた都市計画が必要だろう。ベッドタウンではなく研究学術都市である月葉の場合、駅近といえども高層マンションで埋め尽くされるべきでないのは当然である。


  駅近くは一応マンションが許容されるとして、駅から少し離れた、しかし一応駅まで歩けるような所はどうだろう。これが、現在多くのところでマンション紛争が起きているところだ。この地域は一応駅まで歩けるといっても、日常的に自動車の使用が頻繁にならざるを得ない。ここまで高層住宅を広げてしまったために、自動車が道にあふれ、日常的な渋滞で都市機能自体が大きく損なわれてしまった結果も方々に見られる。そもそも商店街などは、その後背に住宅地の広がりがあってこそ成り立つのであって、電車で家に寝に帰るだけのマンション住人だけではシャッター通りを生み出すしかない。「寝場所」以上の都市機能には少なくともこのような地域での一般住宅の広がりが必須なのである。規制を怠ったために住民にも、商用地にも不幸な結果をもたらしている町がいかに多いことか。このような所はやはり戸建て住宅を配置すべき場所である。


  駅から少し離れた場所にマンションが立ち並んで紛争が起きるのは、駅へのアクセスに需要があるからで、実際に駅近だけではマンション用地がたりないと言うことだろうか。実はこれにもかなり疑問がある。駅近が必ずしも埋まり切っていないことからもわかるように、単に駅近より少し土地価格が安いことを狙っただけのものであることが多い。少し安めの価格で、あたかも駅近であるかのような販売が行われているが、実質的なメリットがないとすれば、ブームが過ぎれば真っ先に買い手がなくなるマンションかもしれない。


  では、駅近以外にどこにマンションを建てればいいかといえば、もう少し駅から離れた徒歩三〇分といったような地域と言うことになる。現在はこのような所に○○ニュータウン分譲地などといった戸建宅地開発が行われている。もちろん不便であるため価格が安い。実際、住む人も子どもの通学などで苦労する場合が多い。バス路線の充実を訴えて運動も起きているが、採算性の障害に阻まれてなかなか実現しない。


  マンションは大きな人口があるのだから、駅までの交通手段も確保しやすい。幾つかのマンションが集まれば、バス停を作って駅までのバスを走らせても採算がとれる。一戸建てではそうは行かない。ついでにいえば、手近な買い物場所や緑地・学校も準備出来る。もちろん一つのマンションだけでは難しいだろうが、幾つかのマンションが集まればもちろん可能だ。自治体がしっかりした都市計画を持ち、マンション業者を指導して、連携を作れば充分実行することができる。都市公団などが準備した大規模ニュータウンなどではそのようなことが現実に行われている。


  現在のマンション業者すべてにこのような都市計画への参加を期待出来るかと言えば、そうとも言えない。私たちが闘ってきたタワラコーベンなどの例を見ればわかるように、あまりに質の悪い業者が多いからである。逆に言えば現在のシステムは質の悪い業者が生き残り、質の良い業者が駆逐される状態なのだと言える。


  最大の問題はマンションディベロッパーと言うのは、販売した製品に何の責任ももたない売り逃げ御免商売であると言うことだ。普通の物品は製造が完了してから、消費者が現物を手にとって買うかどうかの判断をする。製造もしていないものを販売することは許されていない。ところが、マンションに関しては、着工した段階で販売することが許されてしまっている。建物は建築会社に発注し、資金は購入者から集めれば、ディベロッパーはただ売って利益を得るだけの会社である。売った後、管理は管理組合になるし、居住者の利便性についても、建物の質についても、何の責任も残らない。例えば、機械式駐車場で人身事故が起こった場合を考えて見よう。管理責任はマンションの理事会にあるのだが、理事会ないし住民は機械式駐車場の設計にも関与していないわけで構造欠陥に対して責任の取り様がない。もちろん駐車場メーカーは仕様を承認する相手に売ったもので運転責任は買い手にあると主張するだろう。マンション業者には完成して、実際に部屋の様子を見せることが出来るまで販売を許すべきではない。マンション住人は仮入居して、欠陥や不備を充分認識した後、自分たちが責任を取る部分と、ディベロッパーが将来に渡って責任を持つ部分を明確にした契約をする制度にすべきだろう。


  これはマンション業者の経営を圧迫するものであるかと言うと、そうとは限らない。このようなことで、良い業者とそうでない業者の選別が行われ、真面目な業者にとってはむしろ自らの信用をブランド化する機会とも言えるからだ。悪質な業者が業界から淘汰されることは業界にとっても好ましいことであるはずだ。売り逃げ御免の現状では、悪質に振舞った方が勝ち残ることになってしまう。行政も巻き込んだ街作りも悪質業者が駆逐されて初めて可能だともいえる。

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