頻発する高層マンション問題
百原一丁目に高層マンション問題が持ち上がったのは実は二回目である。先行すること一年に穴空工務店(仮名)の九階建てマンション「サーカス百原」が建てられている。このときも強い反対運動があったが、百原一丁目の一部に留まった。反対運動が広がらなかったのはまだ住民の危機感が小さかったことがあるし、建設の場所が、百原一丁目としては飛び地と言っても良い、遊歩道で隔てられた位置にあったこともあった。反対運動にかかわる人たちには、住民エゴと中傷されても引かない強い思いがあったが、あくまでも被害者の闘いにとどまり、月葉の街づくりとして運動を広げる視点が弱かったように思える。裁判も起こし、強固に闘ったが結局敗訴してしまった。
しかし、こういった闘いは、月葉に都市計画の重要性を喚起し、高度地区指定をもたらす大きな原動力となった。これらの先行する反対運動の街づくりへの貢献は大変大きかったと言える。 マンション反対運動は個々の局面だけで見て単なる紛争に終わらせず、やはり自分たちの街をどう作って行くのかと言う視点が重要だろう。
百原一丁目より、数ヶ月早く動いていたのが、五の宮四丁目の「ヴィバーズ五の宮」である。ここは幟や看板を多用し、毎週のように協栄工務店の営業所にデモをかける果敢な宣伝活動を展開していた。ネット上での宣伝も強力で、どう検索しても本体の宣伝よりも反対運動のHPの方が上に出てくるくらいだった。一度決まりかけた施行業者に着工をキャンセルさせるという成果をあげ、反対運動が施行業者の決定にまで十分影響を与えられるという事実を示してくれたのが、私たちの運動にも大きな支えとなった。結果はともかく、声をあげていくことが大切だ、自分たちの街は自分たちで守る。そういった気迫に満ちた運動は素晴らしいと思う。
「ヴィバーズ五の宮」は結局建設されてしまったが、マンション業者は苦い水を飲まされることになった。部屋が売れないのである。その結果、とうとうディベロッパー自体が倒産してしまった。あまりに強引な建設を行ったマンションは敬遠される。住むのは人だ。近隣住民といざこざを起こしてまで住みたいと思わないのが当然の人情だろう。だまっておれば悪徳ディベロッパーのマンション建設は進んでしまう。例えマンションが建ってしまったとしても、それが損失をもたらせば、以後の建設には歯止めがかかり街作りには大きな成果となる。このことは知らされなければならない。近隣住民との調和を欠いた建設は結局利益にならないことを思い知るべきだ
梅園のNSマンション、並木のミックスガーデン、など他にも争いが起きているなかで、百原一丁目にもタワラコーベンが十四階建てのマンションを計画することになった。二〇〇六年九月一九日、百原一丁目の真ん中にあったコーポ百原、通称丸善アパートの前に「建築計画のお知らせ」と言う看板が立った。地上十四階地下一階と書いてあるのを読んで住民は驚いた。こんな小さな敷地で、しかも裏通りといってもいい住宅街の真ん中に、月葉市最高の高さと思われる十四階建てが建つとは夢にも思わなかったからだ。空き地なら新築工事もわからないではないが、ここには三階建ての鉄筋コンクリートのアパートがすでにある。それをつぶしてまで十四階建てを立てるというのである。十四階で隣地境界まで五〇cm。他の計画に比べても、あまりにひどい。マンション業者の横暴は際限なくエスカレートして行くように思われた。




