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高層マンションにSTOP!  作者: 嬉野三太郎
突然のマンション計画
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駅が出来て変わる街

  最初は国立の研究機関ばかりであったが、やがて民間企業の研究所も作られ、徐々に人口が張り付いて来た。デパートや商業施設が作られ、民間企業に働く人たちも増えだした。町村合併で「月葉市」が誕生し、高速バスが東京駅との間に十五分間隔で走るようになると、月葉はもはや辺境の地ではなくなって来た。そして二〇〇五年になると、月葉レール(TR)が開通して大変交通が便利になった。東京まで四五分になったことは、住民にとって、東京に出かけることが大変楽になった。物事には二面があり、これが同時に月葉に危機をもたらすことにもなった。駅がなかった月葉の中心部には、商業施設だけでなく大きな公園や図書館、文化施設とそして公営の駐車場が配置されていた。大学や研究施設、医療施設への広がりがあり、ベッドタウンとは少し異なるユニークな都市中心部であった。ここを基盤として知性の輝きを持った街の発展を期待された。「月葉スタイル」と言われる新しい様相である。「月葉スタイル」と言うのは一言で言えば「都会感覚の通じる田舎」とでも言えばいいのかと思う。実際に、田舎でもない、従来的意味での都会でもない、新しい文化を担うような芸術家たちが集まるような様子も見え出していた。


  月葉レール(TR)は住民に多大な利便性と同時に多くの通勤人口を呼び寄せた。月葉は突如としてマンションブームになってしまった。一度東京への通勤圏となってしまうと、学術都市のスタイルを保持することすら難しい。駅周辺には容赦なく高層のマンションが建ちだした。それに伴って商業施設も数が増えた。駅に隣接した公園は、高層ビルの日影になってしまった。駅近の土地としては月葉の地価は安い。マンション業者の目にとまらないはずがないのだ。マンションの乱立は、駅近辺に留まらず、中心街区から離れた住宅地にも押し寄せ始めた。こういったマンション業者の手にかかれば、学力テストの成績が全国一だとか、地域の学校の評判が高いことまで売り物になった。


  当然ながら月葉の各地でマンションに反対する運動が巻き起こった。それは、もはや単に高層マンションとその周辺の住民との利害関係の争いではなかった。月葉を東京から四五分離れた三流のベッドタウンにしてしまうのか、あるいは学術都市としてのスタイルを保持して、調和ある発展を目指すのかの争いであった。学術都市は様々な問題を抱えているが大きな可能性も持っている。まったく何もない辺境の地の時代から街をこれまでに育て上げた学術都市の住民は、ここで可能性を捨て去ることはできない。そういった思いが、マンション業者にとっては、予期せぬ強い抵抗をあちこちで引き起こすことになった。

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