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高層マンションにSTOP!  作者: 嬉野三太郎
工事車両を通すな
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体を張って工事車両を止める

  車両制限令に関しては解体工事が始まる前日、十二月五日に、はっきりと月葉市道路課での法解釈も得られた。業者にもその旨伝えたが、案の定、反応は無かった。おそらく六日早朝から、大挙して大型工事車両がやってくるだろう。一度通行を許してしまえば、なし崩し的に違法通行が慣例化する。ここはなんとしても工事車両を撃退しなければならない。全戸にビラをまき、明朝六時に集合を訴えた。

幹線道路から百原一丁目に入るのは八m道路である百原通り一本しかない、百原通りから工事予定地に通じる道の入り口は三ヶ所ある。公言している工事車両の経路は東大通に一番近い手前の道だから、この道の入り口で「幅二・一九m以上の車の無許可通行は違法です」と書いたプラカードを持って立ちはだかる。蹴散らされた場合を考慮して、後方には工事現場への曲がり角に住民の車を止めて半ばブロックしてある。百原通りからの入り口は三ヶ所だから、できれば三ヶ所とも同じような阻止線を張る。一箇所で第一阻止線を突破されたら、第二阻止線である車のところに下がり、そこへ三ヶ所から全員が駆けつける。大体こういった作戦であった。


  朝六時はまだ暗い、寒さで身が引きしまる。日ごろ勇ましい事を言ってみても、やはり私たちは普通の市民だ。大型トラックに乗った解体屋を前に、実力阻止などと言うことはやはり恐ろしい。かといって怒鳴られて蜘蛛の子を散らすように逃げ出したくはない。ともかくこの場合まず人数が力だ。どれだけの人が集まってくれるか不安だった。プラカードとハンドマイクを持って集合場所に行くとすでに何人かの人が出ていた。明るさが増すころには相当な数が集まったので、三隊に分かれて配置することにした。三隊はトランシーバで連絡を取り合う。


  七時頃になって一台目の毎日重機(仮名)の六トン車が現れた。東大通から左折して百原通りに入り、すぐに右折して住宅街に入ろうとした。道に飛び出し、プラカードを示して、ハンドマイクで侵入しないように呼びかける。運転手に車両制限令を書いた紙を渡す。トラックの後ろに廻った二人がトラックの幅を計り、二・四mあって違法であることを確認する。そしてまた違法な通行をしないように呼びかける。しばらく躊躇する様子だったが、やがてあきらめたのかそのまま直進していった。トランシーバで連絡したが、他の二ヵ所の要り口も阻止線が引かれていると見て取って通り過ぎていった。


  なんとか一台は阻止した。次にもう一台来たが同じように阻止した。少し手馴れて来て、プラカードで車を止め、さっと手際よく婦人の二人組が、車幅をメジャーで測る手順がリズミカルに動くようになった。三台目は四トン車だったがやはり二・一九m以上だった。何人かが乗った乗用車が来たがこれは違法ではないので通した。対策屋の二人もタクシーで乗りつけ、合法的な工事の妨害は許されないなどと言ってきた。道路課に出した意見書に車両制限令について詳しく解説してあるのでこのコピーを渡すと、こちらを睨み付けていった。現場で何人かが協議している様子だった。


  乗用車で乗りつけた解体屋の棟梁(専務)が恐ろしい形相でやってきた。「てめえ、俺たちを追い返そうってのか。」殴りかかってきたら、証人は一杯いる。「そうです。帰ってください」内心怖かったが、相手の目を見て一応毅然と答えた。彼もにらみつけながら現場に引き返していった。


  そのとき、トランシーバが鳴った。一番奥の入り口で、引き返して来たトラックが強引に入ろうとしているということだ。真ん中の隊の人たちはとりあえずそちらに駆けつける。こちらの入り口は正規ルートでもあり、まだ大型車が来るかもしれないので、空けるわけには行かない。どうも、奥の入り口での攻防が長引いているようだ。トランシーバで警察がやってきたと連絡があった。業者が呼んだらしい。こちらは、あらかじめ警察に道路使用許可を取っておいたから、抗議行動自体には問題がないはずだ。


  八時半ころになって、奥の入り口から援軍を要請してきた。警察への説明が要るらしい。大体来るものは来た時間なので、一部が残って道路法に詳しい説明要員は奥の入り口に廻った。パトカーが三台くらいと、大型トラックが三台止まっており、住民側もかなりの人数が集まっていた。


  警察官多数を前に車両制限令の解説をすることになった。警察署の交通課長まで来ていたが、車両制限令を知らないようで、警察の通行許可書無しに四トン車がここを通行するのは違法だと言うと、「通行禁止箇所でもないのに通行許可は出しようがないよ」といった調子だった。条文から「車幅二・一九m以上は自動的に通行禁止なのです」と説明した。違法な通行ならば市民がこれを阻止するのは合法的である。九時になって、市役所に連絡がつき、法解釈に間違いのないことが明らかになり、警察の説得で業者は引きあげることになった。


  業者は、せっかく運んで来た資材を、全部持って帰るのは悔しかったのだろう。百原通りに駐車して、荷物を手運びし出した。百原通りは駐車禁止道路だ。これで、自分たちが呼んだ警察に駐車違反処分されると言うおまけが付いてしまった。


  業者が引きあげたあと、有志で用意してくれたお汁粉やトン汁の振舞があった。やはり、疲れたが、トラックを追い返せたということで、住民の運動はさらに勢いがついたことは間違いない。当日の参加者は五〇人くらいになった。翌日も同様のピケを張ったが、もうトラックはやってこなかった。市役所に通行認定の申請をしたということで、許可が出るまでは通行がないということになった。


  そして、大型車が通れないと言う状態は年明けまで続いた


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