工事協定をめぐって
私たちの要求はマンション建設の中止であるから、なんとか工事を止めたい。しかし、業者側の譲歩は見られず情況はだんだんと進んで行き、いずれ工事が始まってしまうように思われた。子どもの通学や騒音など工事にまつわる不安も大きい。工事を規制するには工事協定による取り決めが必要だ。こうなると工事協定を結ぶことと工事反対の原則を貫くことの矛盾に突き当たるようになった。工事協定に触れずに工事が始まってしまったら、工事に関してはフリーハンドを与えてしまうことにもなりかねない。かといって、工事協定の内容についての議論に終止しすれば、工事を行うことが前提となってしまう。
工事協定を結べば、工事の問題がすべて解決するかといえば、そうではない。通行時間などの規制がかかるかと期待した向きもあったが、何回かの説明会を通して、全く期待できないことがわかって来た。「やりたい放題やります」と言う協定では何の役にも立たない。同様に抽象的な内容を並べて、なるべく努力しますなどと言う協定も役に立たない。 通例では、工事会社側が協定書の原案を示してそれに住民側の要望で修正を加えると言うことになり、あまり実質のない協定書になってしまい、しかも業者はその協定に多少は違反することを繰り返す。
住民側の主張を盛り込むためには、先手を打ってこちらから協定書を作って提案すべきだという意見と、工事協定を持ち出すこととは工事を認めることになるという反対論でかなり議論は沸騰した。
結論として、あくまでも工事反対の立場を崩さないことで、中身は形式も文体も工事協定書なのだが、ひとまずは「要求書」と銘打って提出することにした。業者側から工事協定を提案するにも先に住民側から示された雛型があれば、それを無視して勝手な雛型を作ることは出来なくなる。案の定タワラコーベン側から工事協定の提案が出され、あれもこれも骨抜きにする内容になっていたが、一応住民側の要求書を下敷きにしたものではあった。協議の出発点に住民側の主張がありそれに業者側が妥協を求めることになるから、俄然交渉は有利になる。
両者の隔たりは大きく、結局、正式に工事協定が調印されることはなかったが、住民側の提案で、両者一致した部分は協定が成立しているものとするということが確認された。住民側は取れるところだけ全て取るということに成功したと言える。
実は、このなかには「道路法・道路交通法の規定は厳密に遵守すること」と言う一文もいれてあった。わざわざ「厳密に」という文言が入っているのはあとで述べる車両制限令を用いて工事車両の通行を阻止するためであったのだが、タワラコーベン側は気づかず、自ら出した提案にもそのままの文言を使ってしまったのである。




