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幟(のぼり)と看板

  マンション反対運動で必ず出てくるのがのぼりと看板だ。住民の怒りを表し、マンション建設の不当性を社会に訴える手段として欠かすことができない。我々は実に多数の幟を立てた。住宅地に十四階であり、隣家より五〇㎝であり、行政指導を拒否する駆け込み着工であるから、町中の怒りを買っていることを知らしめねばならない。合計二五〇本の幟が百原一丁目中にはためいた。


  看板はいわば意見広告であり、フレーズや見栄えに工夫をこらした。木で枠を作り、プラスチック板の切抜きで、文字を作る本格的なものを建てた。多くのマンション反対運動で、手書きのみすぼらしい看板が建てられるが、我々のものは、本物だった。住民には実に多彩な才能があふれている。看板を担当した人の探究心と技量には誰もが驚かされた。そして、看板の数も三十枚以上になった。


  百原一丁目の反対運動は月葉でも最も強力な反対運動として認識されるようになったが、これは看板と幟の質と量によるところが大きい。そしてまた、この看板や幟を毎日見ている住民は、逆にこれで元気付けられる。住民運動の気力を高めるためにも役に立つ。


  もちろん看板や幟の効用は内部的なものが主ではなく、本来の目的がある。購買者にも強い影響を与えるから、マンション販売にはダメージであり、売れなければ当然のことながらマンションは建たない。しかし、我々はまず建築業者への影響を考えた。


  建築業者も反対運動の強力な所で建築したくないはずだ。契約前に現地も調査にくるはずだから反対運動がどの程度なのかは気にする。おそらく幟や看板がその指標となるだろう。建築工事の引き受け手が無ければそれだけ工事は遅れる。引き受ける場合も、反対運動は建設会社のコストを引きあげるから、工事価格交渉が難しくなる。結果として工事を遅れさせることになることは間違いない。実際、看板や幟の効果は少なくなかったと評価している。


  どこにも負けない立派な看板を作ろう。どこにも負けないほど、たくさんの幟を立てよう。どこにも負けないだけ広い地域に幟をたてよう。そう考えて運動を進めた。一軒一軒尋ねて廻り、のぼりや看板を立てるために協力を依頼する地道な努力が続けられた。のぼりを建てるために住民の一人一人と話すことも大きい。同じ反対でも多くの人と話し合っての反対には重みが備わってくる。


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