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友達がヤンデレに洗脳されている

作者: 鈴木

ちょっと息抜きに。

「ヤンデレって病むくらい相手を好きになるってことなんだよね?それってすっごく素敵じゃない?デレって入ってるくらいだから優しくて甘いんだろうなぁ。私もそんな恋人が欲しい~!」


そんなことを言ったら友達はひどく困った顔をして言った。「そんないいものじゃないよ」って。まるで体験したことがあるかのような口振りに私の中の好奇心がむくむくと顔を出す。


「例えば?」

「……そうだなぁ。例えばメールを五分以内に返さなきゃ三日間携帯を取り上げられたり、電話に出なきゃ一週間一人じゃ外に出してくれなくなったり、かな?」

「えっと……………それは大変だね?」


思わず言葉に詰まってしまった。だってこんなにリアルだとは思わなかったし………どうしよう。


「あっ、違うよ!これは友達が体験しただけで、えっと、だから……」

「うん、大丈夫だよ。わかってる」


相変わらず嘘を吐くのが下手だなぁ。可愛い。


「そういえば葉月の彼氏見たことないけど、どんな人?」

「どんなって……私にはもったいない人かな」

「へぇ、惚気か。羨ましいなこのやろー」

「あっ、違うの!…ごめんね?」

「いいのいいの」


あぁこれは彼氏もヤンデレるはずだわ、なんて思う。決して美少女とは言えないけれど私と違って化粧気のない肌は綺麗だし(確か日焼け止めも化粧水も使わないって言ってた。ちょっとむかつく)、幼い顔立ちは加護欲をそそる。


「葉月の彼氏か。……会ってみたいな」


面白そうだし。どんな面してるのか見てやりたい。


「会う?」

「え?」

「多分呼んだらすぐ来てくれると思う。ほら私GPSついてるし」

「何それ初耳」

「え、あっと……今時の携帯にはついてるよね」

「そうかな?」

「そうだよ」

「そっかぁ」


ほんとわかりやすいんだから。

葉月の取り出した携帯にはストラップ一つついてない。つけないのか聞いてみたら葉月は笑顔で答えた。


「だって私は彼のものだから」


よく意味はわからなかったけど、洗脳って恐いなと思いました、まる。




葉月の彼はそれはそれはひどく魅惑的な人だった。

私の語彙力じゃ彼の魅力は表しきれないけど綺麗という言葉が一番似合う気がする。陳腐な言葉でごめんね。色っぽさを兼ね揃えた童顔という奇跡が目の前にあった。


「初めまして、葉月の彼氏の塚原涼司です」

「あ、はい。初めまして。私は中原紗枝です」


人懐こそうな笑顔に気分がよくなる。なんだ、いい人そうじゃん。そんな考えはすぐに消されることになった。

塚原君は口を開けば葉月のここが可愛いだの、この前こんなことをしただの、普段の葉月はどうなのかだの、とにかく葉月のことばかりだ。正直耳にタコである。


「ごめんね紗枝」


いよいよ顔に出ていたのかもしれない。こそっと謝ってくれた葉月に大丈夫だよと笑顔を返す。ちなみに涼司くんはお手洗いだ。


「ねぇ葉月」

「うん?」

「涼司くんって家ではどうなの?」


さっきの口振りからしておそらく同棲しているはず。案の定そうだったようで葉月は右耳朶を触った。これは葉月の恥ずかしい時の癖だ。


「うんとね、優しいよ。私が買い物に行く時もついてきてくれるし、私が何の心配もしなくていいように携帯も管理してくれてるんだ」

「はぁ?」


バっと慌てて口を塞ぐももう遅い。葉月は目を丸くさせて不思議そうにこちらを見ている。


「…はぁーんと羨ましいな!」


流石に無理があるだろ私!ほんとをはぁーんとって何そのギャグ、寒い。


「紗枝は面白いね」


……有効だったようである。




そして一ヶ月後、結婚式の案内状が届いた。もちろん葉月と涼司くんのものである。慌てて切った封の中には招待状とは別に私宛と思われる写真が入っていた。うん、すっごくバカップルっぽい。

撮られた場所は部屋、手元にはケーキ。まぁまだそこまでならよかった。ただ葉月の肌があまりに白かったのが気になる。前から白いとは思っていたけどこれはおかしい。なんか青白いし、日に当たってない感じがする。


「……久しぶりに会いに行ってみようかな」


そんな私の気遣いはただのおせっかいだとも知らずに、すっかり洗脳された大切な友達へメールを送った。

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