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ひとりぼっちの勇者たち  作者: 長月イチカ
屋上の隅のビリーバー
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42/53

◆5


◇ ◆ ◇


 ふいに胸が熱くなった。

 ひかれるように顔をあげると、そこはさっきまでの部屋ではなくて、学校の屋上。

 そこには17さいのあたしと、それから日向さんが居た。

 日向さんはフェンスに背を預け、空を仰いでいる。

『学校の屋上、来たことある?』

『……何度か』

 夜なのだろうか。辺りは暗い。

 星の明かりも見えないほど。月の存在も感じられないほど。

 真っ暗だった。

 日向さんはあの部屋にあった学ランを着ていて、あたしも制服姿だった。

『ぼくは毎日のように、ここに来てたよ。明日こそは何かが変わるって、信じながら…願いながら。だってなんとなくほら、天国に近いでしょ? だから神様に、届くんじゃないかと思って』

『……なに、を…?』

 日向さんはやわらかく笑う。

『…“ぼく”以外の誰かに、なることを』


 もしも“奇跡”が起こるなら、自分以外のモノになりたかった。こんな自分とは正反対の、もっと、もっと──…もっと。

 あたし達に起こったのははたして“奇跡”なのだろうか。

 それとも、別の。


『あたしも…なれるなら、なりたかった…』

『……』

『あの日、ここで、この屋上で…あたしはただ、何も感じないように、傷つかないように、自分を必死に守ってた…なるべく世界の隅っこで、小さくなって、うずくまって…でもそれで今まで、大丈夫だった。どんなことがあったって、何されたって、平気。だってそう、信じてきたから。あたしはあたしを、自分自身を、ちゃんと大丈夫だって、信じてた…』

『でもそれも、なくしちゃったんでしょう…?』

 日向さんが一歩、あたしに近づく。あたしの足は動かなかった。

『痛みを、傷を、思い出して。それできみは、生きていけるの? これからもずっとそれを抱えて。傷も痛みも、きっと絶えない。これから先も、きっとずっと。ここはそうゆう、世界だから。それは永遠に、変わらない。こんな理不尽で残酷で卑劣な世界で…きみはひとりで、生きていけるの…?』

 生きていくしかないって、わかってた。だってそれがあたしの、罰でもある。

 お父さんはそこに居るかもしれない。だけどきっとあたしはそこには行けないから。

『ぼくも、そうだよ…ずっと、信じてた。大丈夫だって。まだやれるって…そう、信じてた。…だけど、ダメだった。そうしたらぼくはいつの間にか…こんなところまで、来てしまったよ』



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