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作者: 日下部 龍

出されたお題を基に百分間で物語を作ろうと言う企画で生み出された小説の一つ。お題は「偶然と必然」と「流亡」。

 鮮やかな夕日に染められた、見渡す限りの荒野を二人の人間が歩いていく。男と少女は、共に日差しから身を守るためかマントを被り、その風貌ははっきりとしない。マントは砂埃にまみれ、所々に小さな裂け目があり、また所々には縫った跡もあり二人の旅の長さを物語っていた。

「ねえエド、次の国にはまだ着かないの。」

「ん、どれどれ。ざっと後二日ほどの距離だな。そうだ、アーニャ、疲れていないか、もう夕方だしそろそろ野営の準備をしようか。」

 アーニャの呼びかけに、エドの方は背負った鞄の脇から地図を取り出し開くと、首に下げたコンパスとを見比べ確かめながら答える。アーニャは頷くと、元気よく駆けて行った。エドも、まばらに生えた木の根元に落ちている枯れ枝を拾い集めていく。

「エド、見つけたよ、こっちこっち。」

 そうしていたエドのもとに、遠くからアーニャの声が聞こえてきた。そちらに向かうと、そこには地図にも載りそうにないほど小さな川が流れていた。水はそれなりに綺麗に透き通っており、飲むのにも大きな問題はなさそうだった。

「おう、じゃあ今日はここで野営をするか。」

 エドは鞄をおろし、そこからいくつかの物を取り出すと、薪に火を点け、川から汲んだ水を薬缶で沸かし始めた。丁度、太陽が地平線の向こうに吸い込まれるのが見え、辺りは薄暗さを増していった。

 二人は塩胡椒で味付けされた野草と塩漬け肉のスープに、硬いパン、薬缶で沸かした熱いお茶で夕食を済ませると寝袋を広げ、交代で見張りをしながら眠ることとした。

 エドはアーニャのすやすやという寝息を横に、薪を火にくべながら過去を思い出していた。


 エドが国を追われたのはもう五年も昔のことだった。理由は、今でもはっきりと覚えている。親殺しの罪を着せられたのだ。勿論、自分にそのような覚えはなかった。必死に弁明もした。ただ、気が付けば国外追放の処分を受け、高い壁を隔てた向こう側にいた。勿論、何かものを与えられることなども無く、食料も何もない中生き延びようと死に物狂いで彷徨い、一つの国に辿り着いた。ただ、よそ者を歓迎する国は滅多に無く、その国も数日滞在した後は飛び出してしまった。

 そして流亡の身であちこちを訪れ、今から一年ほど前、アーニャを拾った。彼女は不思議なことに国と国のちょうど間の辺りをみすぼらしい恰好で歩いていた。その時は過酷な生活ゆえか、今よりもずっと痩せてぼろぼろで、自分が追放されたばかりのときの様だった。もうあと少し、このままの生活を続けていたら、きっとその命を散らしてしまっただろうというところで、偶然か、或いはそれは必然であったのか、エドに拾われたのだった。彼女は一体何故そうして国の外をさまよっていたのか、それは皆目見当もつかないことだったが、今こうして二人で旅をしている。


 気付くと随分時が経っていた。アーニャが起き出し代わりに彼は眠りに就いた。


 翌朝、朝の早いうちから、二人は荷物をまとめ次の国を目指し、再び歩を進めるのだった。

「今度こそ私たちを受け入れてくれる国だといいね。」

 アーニャの、不安を勇気づけるような言葉と共に。

 キノの旅っぽいと言われてしまいました。

 そのつもりは無かったのですが、読み返してみると確かにそれっぽいなぁと思わされます。


 後、「塩分とりすぎ」とか旅暮らしの割に食事が豪勢とか言われましたがその辺は笑って許してください。

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