大切な命を持った僕たち
ある日、それは唐突に起こった。
「沖田が……自殺した?」
「うん……原因は、いじめだって」
「そ、そうか……」
クラスメイトに沖田という男子生徒がいた。その沖田が昨日、この高校の屋上から飛び降りたらしい。
理由は、いじめ。数人のグループが沖田を虐めていた。
だが、そんな事実をクラスメイトは誰一人知らなかった。ただ一人を除いて……
「なんてことしちまったんだ、俺は……」
集団を率いて沖田を虐めていたのは、俺自身だ。
俺は退屈な高校生活に嫌気がさし、イタズラを考えた。5、6人の男子生徒を集めて誰か一人を対象にイタズラをすることを提案した。
その対象が沖田だった。
だが、イタズラは次第にエスカレートし、いつしかいじめへと発展していた。
その末路が、沖田の死……
俺は、罪の意識に苛まされた。
沖田の辛い表情を見る度に快感を得た。だからやめられなかった。
だけど、沖田が死んだことによって心が改まった。
「よう、次は誰にする?」
仲間は、罪悪感なんてこれっぽっちもなかった。
俺はこいつらを止めなきゃと想い、いつのまにか殴りつけていた。
「沖田は死んだんだぞ!もうやめろ!」
「なんだよ…お前が始めたことだろうが」
仲間の男子たちは俺の近くから去った。
だが、それは悲劇の始まりだった。
仲間たちが、俺にいじめを仕掛けてきた。
俺は、沖田が感じた辛さを自分も味わうべきだと、ずっと我慢してきた。
だけど、我慢は限界に達していた。
「母さんは黙ってろ!」
ストレスがたまり、いつしか母にもきつくあたっていた。
ホントは駄目だと想っているのに……
そしていつしか……沖田のように死にたいと想い始めていた。
気がつくと、高校の屋上にいた。
このまま飛び降りて、楽になろう。そう考えて、身体を投げ出そうとした。
そんな俺を止めたのは、親友だった。
「自殺なんか間違ってる!」
「死んで楽になりたいんだよ……」
そんな俺を親友は強引に抑えた。
「お前も、沖田も間違ってる!」
親友は俺の頬に拳をぶつけた。
「死にたいなんて想ってる人はみんな馬鹿だ!」
「なんでそういいきれるんだよ!」
「じゃあ理由を教えてやるよ!」
そう言うと、親友は俺の胸ぐらを掴んだ。
「死にたいって想ってる奴には一つわかってないことがある。それは、てめぇが死んで哀しむ人が必ずいるってことだ」
その言葉を聞いて、俺は号泣した。
大粒の涙を流した。
「俺だって、お前が必要なんだ」
親友の言葉は、俺に生きる意味を教えてくれた。
自分のために生きているんじゃない。
俺は、俺たちは、人は、誰かのために生きている。
「お前は、誰かを幸せにしたいって前言ってたよな」
「あ、ああ、確かに言った」
「だったら、絶対死ぬな。それだけでおめぇの母ちゃんも、俺も、哀しんで不幸になる」
そっか……まるで名言みたいだな。
だけど、その言葉すっげぇ嬉しい。




