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かつて戦場だった場所

「すみませーん……あの、すみませーん、あれ、空いてますか―!」


 この、ファルシオンって呼ばれる場所はまるで隕石落下地点研究所みたいだな。クレーターをそのまま使ってるのは機能性のためじゃない、この場所への執着を感じる。

 それはそうと、入り口のシャッターを何度か叩いたけど返事がないな。どうしよ、帰れないしなあ。シュナクさんも何か教えてくれればいいのに――


「ああ、そう言う」


 背後から迫っていた頭が何故か二つある犬の化け物に襲われる。

 地面に叩きつけられながらもギリギリ鼻っ面と顎を開いて食われないようにした。

 なのにこいつ、口の中に顔がある……あの時のサソリみたいだな。

 とりあえず横にぶん投げて、体の土を払うが、足を掴まれた。土の中を潜る蜘蛛に人の手が引っ付いたようなモンスター。ああ、まっずいな。

 仕方がなく、スキルに課金する。使えるのは、たった三階だ。

 ワンスキル、レア、瞬間断裂

 俺の周りから、斬撃が四方八方へ飛び交った。なるほど、一定時間、俺に危害を加える存在に対して自動で反撃する。

 つっよ。レアスキルってこんなに強いの? ヤバいなぁ。

 足場と背後を斬撃が飛ぶが、ついでに俺の行く手も阻むシャッターも破壊する。けたたましい音が鳴るが、別に構わない。

 こんな雑な歓迎をしてくる上に、四天王に狙われるんだ、碌な場所でいのは間違いない。

 持ってきておいた、ウィンドブレイカーに袖を通した。さて、探そうか、面倒臭い先輩を。


「っと、マジか」

「ふっ、ん!」


 いつの間にか現れた黒髪青メッシュ斧少女。

 斧を斬撃が弾いたらしいが、完全に見えなった。しかも見えてからも俺の死角を執拗に狙ってる。プロの動きじゃねえかよふざけやがって。

 気づいたらまた消えているが、背後で斬撃が攻撃を弾いた。

 殺気の怪物は反撃で刻まれていたのに、彼女は反撃すら弾いている。凄腕だ。


「ふ、はっ!」

「なあ、先輩……赤髪の酒飲みを見なかったか? 俺の先輩なんだ」


 答えは、背後への攻撃。

 今回は見える状態で気やがった。身構える俺の腹へタックル。斬撃も俺が近すぎて発動しなかった。

 マウントポジション。俺の上に載って、斧をくるくる回しながら、叩きつけられる。

 ギリ、間に合え、ガチャガチャ!

 ワンスキル、レア、剥落の護符発動。

 如何なる攻撃も一度だけ弾く盾を体全体に張ることができる。どんな弱い攻撃でも割れるが、こちらの攻撃が当たれば盾は復活する。

 瞬間断裂と同時併用することで、守りだけは馬鹿厚い上に、初見じゃ突破の方法なんて分からない。良かった、3分の1レアだ。レアつんよすぎる。


「おっけーだ。奥にいるんだな。進ませてもらう」


 答えない。その上消える。次に出てきた頃には呼吸法を伴った痛烈な一撃がぶち当たる。

 当たれば致命的な一撃の明確な隙や避けるっていう回答を正面から否定する。先頭において強すぎるスキルだな、透明化は。


「俺は分析が好きなんだよな。お前、何で攻撃の瞬間、出てくるんだ? しかも、全部背後だ」


 周りの盾が割れると同時に、見えない斬撃がオートで反撃。俺が攻撃を当てなかったせいで、剥落の護符は直に効果を失う。

 それでも、スキルひとつを使ってでも、確信したことは多い。

 正直、スキルなしじゃ俺は戦えない。対して強くない。だから、理屈と頭で、戦う。


「お前は頭がいい。俺の見えない斬撃のスキルを見て、真っ先に接近して回答を出した。だから、きっと全部意味があるんだ。攻撃の時に姿を見せる事、背後に回る事、全部」


 答えはない。喋らないってのも、実は答えてるようなもんなんだ。自分の情報を与えず、こっちが答えを出す前に畳みかけて仕留めきる。

 逆を言えば、答えられたら簡単に防がれちまうってことだ。

 俺はスキルに頼り切りながら、避け続ける。さも、余裕である風を装って。

 ぶっちゃけ、瞬間断裂を越えられたらもう無理だ。当たるしかないし、当たればまず死ぬ。

 導き出せ、答えを――


「つ……いってえなあ。ちょっとは話そうぜ、お前はなんで、先輩を連れ去った?」


 腕を斬られた。こいつ、見えない斬撃のパターンをある程度読み切ったか、もう時間がねえ。だったらもう、最後のピースは、手前の運で掴み取れ!

 最後のガチャガチャ、回します。

 ワンスキル、煙幕

 煙がモクモク出るスキル……神は俺に、煙に撒いて逃げろっておっしゃるのか……いや、そうか。


「見えたぜ」


 煙幕発動。

 一応、煙が動いてあいつの姿を確認できるかどうか見たが、こいつ、透明と言うよりたぶん透過に近い。影も落とさない完璧なステルスだ。でもまあ、別にいい。

 当初の予定通り、俺はただ――


「女を殴る趣味はない」


 背後に迫っていた少女の両肩を掴んで地面に叩きつけ、同時に手から斧を盗み取った。

 馬鹿みたいに重いが、首筋に刃の部分を押し当てるくらいなら、俺にも出来る。


「お前のスキルは、息を止めている間は透過できるってもんだろう? それを隠すために、大きく息を吐いた呼吸法を使った戦闘方法。少しでも違和感を消すために、背後を取った。出て来なきゃいけないのは、持っている物も透過するせいで当てられないからだ」

「ぺらぺらと……よく喋る!」


 隠し持っていたらしい短剣を、肋骨の隙間に刺される。

痛え……味わったこと……は、ある。詳しくは避けるが、労災が降りなかったことに怒りを覚えて痛みはもう、忘れた。

俺はわき腹から短剣を引き抜いて、その辺に捨てた。斧だけは、もらっとこう。

クソ、スキルは全部使っちまったし、今のは俺の不注意だな。瞬間断裂が発動しない超近距離に来ちまった。


「動くなよ。女子供な殴らねえ主義だ」


 じゃないと、この世界じゃ生き残れない。前の世界も、明確な殺意と害がないだけで、適応しなければ死ぬのは同じだ。

 ただ、死に対しての受け止め方の違いでしかない。

 よろめきながら、シャッターの方へ向かう。やば、口の中に血の味がしやがる。


「行かせると――」

「おい、二度は、言わねえ」

斧を片手で振り下ろして、少女の足の間に叩き刺した。

 尚も反攻に出そうな雰囲気ではあったが、痛み分けだ。武器を背に持ちながら、俺の後を追うようだった。

 別に道案内をしてくれるわけじゃないしいつ刺されるか分かったもんじゃなくて怖い。

 とりあえず真っ直ぐ突き進むと、大きめな部屋の扉が見えて来た。何か男の話し声が聞こえて、思い切り扉を引いた。

 ガラッと言う音がガシャンと言う音に変わった頃、血塗れのミュイさんが見えた。


「……何やってんの、お前」


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