終章の一 四天王って何してんのう?
「いらっしゃいま……今、店長はいませんよ?」
留守になって人のいないたびうさぎ。シエンが一人だけ厨房で作業をしていただけのお店。店の外にはclauseと共に既に売却済みの札がかかっていた。
シエンは中の荷物を片付けているところだった。店長であるアストが死のうが戻ってこようが、どっちにしろ動けるように。
そんなシエンの下に現れたのは、和装を服に身を包んだ袴姿の男性。紫紙の短髪で、右側からおさげが一本垂れていた。美しい表情に右目の下には泣き黒子。
中世的な顔立ちで女人のようにも見えるが、背の高い美しい男性と言う印象だ。
「ああ。店長がいないから来たんだよ。シエン」
「……計画は進んだみたいで何よりですが、私の方では何もすることはありませんよ」
「いいさ。常に彼の動向を私に伝えてくれればそれでいい。彼には文字通り、女神様が付いているからね」
「あの、それもちょっと良心が痛むんですが」
「断れる立場にないだろう。君は四天王第四位を固辞した人間なのだから」
「それを言われると痛いですね……分かりました。でも、あなたもそろそろ表に出ないと、店長がブチ切れたら怖いですよ」
「そうだね。だから次は私が相手をしないといけないかもしれない。ユーヴェン君のお陰で目的は果たせる。魔王様を、蘇らせる」
「戦争をするんですね、また。大きな。エンゼ・ミュート」
「ああ。楽しみじゃないか。世界を今度こそ壊す戦争を、始めよう。最後に立っているのはそう、私たち、四天王だ」
「何でもいいですけどね、気を付けてくださいね。店長は強いもんで」
「分かっているさ。私たちは四天王だ」
「四天王ね……今、何してるんですか?」
「さあ、なんだろうね」