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第十一話 灰色の世界

 私、毎日何してるんだろう。学校に行って授業受けて、家帰って寝て。


 なんてことない変わらない日々を過ごしているのに色がなくなったみたいに全部が灰色。毎日歪んでいる視界に濡れる枕。夢を見るのが怖くて眠れない。両親から心配されるけど大した返答はできなくて。学校を休んで精神を療養されることを進められたが学校には行きたかった。話さなくても、話せなくても優吾くんを見ていたかった。


 周りから痛々しく見えても。


「日和? 移動教室だよ?」

「……うん」


 野依はそんな私に根気強く付き合ってくれて。少し経てば世界に色がないのに変わりはないが人と言葉を交わすことができた。ご飯だって、食欲がないけど心配させないように食べることができた。体重落ちた? って聞かれることは多いけど保っているほうだと思っている。


 私のなんてことない日々は自分で壊したしそれが儚いものだってなくなって気が付いた。どれだけ文句を言っても仲良くしてくれるって信じてた。勝手に裏切られたような気分になって被害者ぶってる。


「日和! 今日パンなんだろ? 俺のと交換しない?」

「メロンパン、食べられないの?」

「そうそう! 急いでたから間違って買っちゃってさ……お願い!」

「……いいよ。カレーパン特に食べたかったわけじゃないし」

「ありがとな! 助かった!」


 次第に野依以外とも普通に話せるようになった。立花くんから始まって朱音先輩、吉柳くん。クラスのみんな。今ではもう前と変わりない。優吾くんは後ろの席にいるのにいないかのよう。私の心の中からは薄れているはずなのに世界が色づくことはなかった。


 どうしてかなんて、私には分かっているはずなのに分からないフリをした。





「期末終わったー! 日和は夏休みなにして過ごす?」

「特にすることはないかな……バイトもしてないし」

「なら家泊まりに来ない⁉ 日和とお泊り会してみたいって思ってたの!」

「野依のご両親が大丈夫なら……」

「なら決まり! 楽しみすぎる!」

「なら俺は夏ちょっと遠いけど海の家でバイトするつもりだから遊びに来ない⁉ 仕事終わって抜けれるように調整するし!」

「いいじゃん! 日和はどう?」

「楽しそうだね。いいよ」

「よっしゃー! シフト入ってる日また言う!」

「夏いっぱい予定立ったね!」


 二人が気を遣って夏、私を色んな所へ連れ出してくれてることに気づいた。夏休みまであと二週間。期末試験も終わり、もう夏まであと一歩。


「何々、みんなで夏の予定立ててるの? 僕も入れてよ」

「吉柳! えーどうしようかな~」

「うわ。仲間外れするつもり? 日和ちゃん野依酷くない?」

「日和頼るのずるい!」


 いつの間にか吉柳くんが来ていた。最近吉柳くんと野依が仲が良い。よく痴話喧嘩しているしそれに私と立花くんが巻き込まれることが多々あった。仲良し四人組の優吾くんの立場はいつしかなくなり、吉柳くんに代わっていた。私はそれを咎めるつもりも指摘するつもりもない。忘れるきっかけになればいいな、なんて客観的に呆然と考えるだけだった。


「じゃ朱音含めてみんなでプール行かない? 海行くならプールも行けるでしょ?」

「お、それいいじゃん! 俺プール行きたかった!」

「海の家で働くのに? 浮気じゃん」

「その言い方! ズルすぎる!」


 いつしか立花くんも含めた痴話喧嘩が始まり、私は思わず笑いが零れた。


 すると会話が途切れ何事かと思うと三人は目を大きく開き、何かに驚いているようだった。首をかしげると野依が泣きそうになりながら私を抱きしめた。


「日和は、日和のペースでいいんだからね。無理しちゃダメだよ」

「……うん」


 築き上げてきた友情に嘘はなくて。私は良い友達を持ったな、と思った

 それと同時に、今だ私は人に無理と気遣いを強いているのだと思った。早く元に戻りたい。早く優吾くんのことを吹っ切れたい。そう思えば思うほど優吾くんとの日々を鮮明に思い出す。たった二ヶ月も一緒にいなかったのに学校のいたるところは思い出しかなくて。振り返るたびに苦しくなる。水無月さんと一緒にいる所を見ても、もう何も思うことはないのにまだ涙が溢れる。どうすればいいか、無理をしないでどう気持ちを持ち上げればいいか私には分からない。


「野依」

「どうしたの?」


「私。私、早く優吾くんのこと忘れたい」


 みんなが息を飲む。私は人に縋ることでしか忘れることができない。その決断がいいのか悪いかなんて分からない。でも私には信頼できる友人に頼ることしかもう、できなかった。

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