異世界転生でちょうどいい難易度の人生を送りたいので、神様に丸投げする。
異世界転生にあこがれて、世界最強に、億万長者に、権力にあこがれて、暇さえあれば妄想にふけるような生活を送っていた。
しかし、いつも行き止まりにぶつかる。
全て満たされた先が思いつかないのだ。
世界最強になれば、自尊心が満たされて心安らかに暮らせるのだろうか。
億万長者になって、金を湯水のように使えば欲求に悩まされることはないのだろうか。
何もかも思い通りになる世界で、次の思い通りをいつまで思いつけるだろうか。
威光を放つ老人が問いかけてくる。
「手違いで転生させてしまう詫びに、願いを一つ叶えてやろう」
何度もシミュレーションしてきたが、納得のいく答えは未だ見つかっていない。
そんなわけで目の前の神に、上手いことまとめてもらうことにした。
「病気になるのもけがをするのも嫌だ。飢えるのも嫌だ。だけど無敵とかはなりたくない。あんまり都合の悪いことが起こらないくらいがいい。あと芸術に没頭したい。自分の中に生きる目的をもって暮らしたい。創作をして生きていたい。魔法とかある世界ならそれも使えるようになりたい。せっかくなら魔法も組み合わせて創作活動をしたい。作品がそこそこ評価されたい。めっちゃ有名じゃなくてもいいけど、むしろ界隈で有名とか、ちょっとディープな作者になりたい。一部の人だけ知ってるようなマイナーだけどめっちゃ実力ある作者になりたい。これらのお願いを合計一つ分になるように均等にちょっとずつ叶えてください。」
「いや、お前の意志の問題も含まれてるけどいいんか?まあいいか。じゃあそんな感じにしとくから」
(神様ってツッコミとかするんだ…)
視界がホワイトアウトして、意識が途切れる。
前世の記憶はここで途絶えている。