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姉妹揃って「悪役令嬢」  作者: 文字書きA
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秋の王宮

その年の収穫に感謝して、来年の豊作を願う、秋の祭事。それは毎年、王宮の一角にある神殿で執り行われている。


「天の神よ。貴方様のおかげで、今年は無事、皆に恵みが行き渡りました。来年も、我らに同じだけの恵みをお与えください」


太陽が神殿の真上に来る。司祭の祈りが終わる。それと同時に、訪れた貴族たちに、その年に取れた作物だけで作られた料理が振る舞われる。アメリは、料理も飲み物も取りに行かず、神殿の柱に寄りかかるようにして立っていた。


「見て、アメリ様よ」


「リアム様との婚約を破棄しておいて、よく此処に顔を出せたものね」


「それが、王家の方に招かれたとか。それも、どなたが招いたのだと思う?」


「王妃様ではないの?」


「それが違うらしいのよ。第2王子様が、お父様に頼みこんだのですって」


「まさか……」


令嬢たちの噂話が聞こえてくる。否。彼女たちはわざと、アメリに聞こえるところで話しているのだろう。それが分かっていたから、アメリは涼しい顔で、聞こえていないかのように振る舞った。


「ライウス様は、女性が嫌いではなかったの? あの子だけ例外だなんてこと、あるのかしら」


「王宮に勤めている親戚からの情報だから、間違いないわ。リアム様を袖にして、今度はライウス様を狙うつもりなんじゃ……」


顔を動かさずに、目だけで彼女たちを追う。話に夢中になっている彼女たちには、周囲の状況は見えていない。人の輪から抜け出した男が1人、彼女たちに近づいて話しかける。


「私が何か?」


「ライウス様! いえ、大したことではありませんわ」


「そうそう、ただの噂話ですもの。お気になさらないで」


女性たちは慌てながら、その場から去っていく。ライウスは穏やかな表情のまま、アメリの方に視線を向けた。


「アメリ様。大丈夫でしたか?」


アメリはその問いには答えず、ため息と共に言葉を吐き出した。


「……女性がお嫌いだというわりに、手慣れていますのね」


「それは……どういう意味ですか?」


素知らぬ顔のライウスを冷めた瞳で見つめながら、アメリはお互いにだけ聞こえるように、声を抑えて説明した。


「あの方々は噂好きで、片方はスペクルム男爵家のご令嬢です。王宮に勤めているというのは、ニテンス・スペクルム様のことでしょう。ニテンス様は税を管理する場所で働いていますが、そこは王宮の表側。表の方が裏の、それも王様と王子様の話を盗み聞きすることなど、本来ならば不可能です」


「では、彼女たちの話は嘘だと……?」


「いいえ。嘘をつくにしては、具体的すぎる内容です。ニテンス様は実際に、話を聞いていらしたのでしょう。王宮に勤める方の配置を1日だけ変えることなど、あなたにとっては簡単なことでしょうから」


「僕が? 何のために、そんなことをする必要があるのですか?」


「あら。だって、あなたが助け舟を出せたのは、スペクルム家のご令嬢が()()、あなたに関する噂話をなさっていたから。そうでしょう?」


アメリは、面と向かって指摘した。ライウスはそれを受けて、少しだけ、笑みを深めた。

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