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ねこねここねこ(前編)

お久しぶりのSSは、本編最終話と王妃殿下のお茶会(番外編)の間くらいの時系列です。

書籍版に合わせて、公爵家の家名が登場します。

また、今回登場するリゼットの友人は、書籍版でちらっと存在だけ出てくる、猫を飼っている友人です。

と、書籍版の要素がちらほら出てきますが、書籍版未読の方にも問題なくお楽しみ頂けます。

 王城の夜会から十日ほど経った昼下がり。

 リゼットは一人、とある子爵家のタウンハウスを訪れていた。


「本日はお茶会にお招きいただきありがとうございます、セリア様」

「こちらこそ、我が子爵家に足をお運びくださり光栄ですわ、シャトラン公爵夫人」


 応接間でリゼットを出迎えたのは、リゼットと同じ年頃の貴婦人。

 畏まった挨拶を交わした二人は、次いで顔を見合わせ、揃って親しみのこもった微笑みを浮かべた。


「以前のようにリゼット様とお呼びしても?」

「ええ、もちろん。その方が私も嬉しいです」


 リゼットは笑顔でうなずく。

 セリアはリゼットが以前から親しくしている、一つ年上の友人だ。

 三年ほど前にお茶会で知り合い、猫好きという共通点からすっかり意気投合した。

 セリアの実家の子爵家ではマカロンと名付けられたブルーグレーの雌猫を飼っていて、リゼットは時々セリアの屋敷を訪ねてはマカロンと遊ばせてもらっていた。それは実家で猫を飼うことが許されなかったリゼットにとって、大好きな猫と触れ合える貴重な機会だった。

 けれど、セリアが長年の婚約者であった子爵家嫡男に嫁いでしまうと、それまでのように気軽に会うことはできなくなってしまった。

 二人は先日開かれた王宮の夜会で久しぶりに再会し、今日のお茶会開催の運びとなったのである。

 メイド達がテーブルにお茶とお菓子を並べて退出すると、さっそく気兼ねない友人同士のお喋りが始まった。


「それにしても、本当にご無沙汰してしまって……」


 セリアが申し訳なさそうに眉尻を下げる。


「セリア様がご結婚される直前にお会いしたのが最後だから……もう一年近くになるのですね」

「結婚と同時に夫の家の領地に行って、冬の間はそちらで過ごしておりましたの。久しぶりに王都に戻ってきてから、リゼット様の噂を耳にして驚いてしまって。ジェローム伯爵令息様との婚約を解消してシャトラン公爵様とご結婚されたと聞いて、いったい何がどうなっているのやらと……」

「私自身も同じことを思っていました……」


 当時の急展開を懐かしく思い出し、リゼットは小さく苦笑する。

 ルシアンとの婚約解消、そして突然の王家からの婚約打診。

 気持ちの整理もつかないまま、リゼットは気付けばシャトラン公爵アルベールの妻になっていた。


「ご連絡を差し上げたいとは思ったのですけど、公爵家だなんて雲の上すぎて……。それに、シャトラン公爵様といえば、その……」

「人嫌いの変わり者、と噂されていましたものね」

「……そう、だから大丈夫なのかしらと心配していたのですけど……まったくの杞憂でしたわね!」


 セリアがキラキラと目を輝かせる。

 そういえばセリアは猫も好きだが恋の話も大好きだったと、リゼットは思い出す。


「夜会でのお二人の仲睦まじいご様子といったら! デザインを合わせた衣装で寄り添っていらっしゃるお姿、本当に素敵でしたわ。皆さま例外なくお二人に見惚れていらっしゃいましたわよ。もちろん、わたくしもですわ!」

「ありがとうございます。私には勿体ないような素敵な旦那様なのです」

「あら、シャトラン公爵様があんなに見目麗しい方だとは知らなかったから驚いたのは本当ですけれど、素敵だったのはリゼット様もですわ! 以前から可愛らしい方だと思っていましたけれど、さらにお綺麗になられて。うふふ、やっぱり素敵な殿方に愛されると、女性は変わるものですのねぇ」

「あ、愛されてるだなんて、そんな……」


 リゼットは気恥ずかしさにポッと頬を染める。


「そんなことない、だなんて言わせませんわよ? リゼット様を見つめる公爵閣下のあの甘〜いまなざし! 愛おしくてたまらないって、お顔に書いてありましたもの! ……だけど意外でしたわ。リゼット様、以前から公爵様と親交をお持ちでしたの?」 

「いえ……お会いしたのも結婚式の場が初めてだったくらいで」

「まぁ、それなのにあんなにお熱いご関係だなんて、なんだか運命的なものを感じますわね! お互いに一目惚れだったとか?」


 セリアは興味津々といった様子で身を乗り出す。


「そんなことは全く……」


 初めてアルベールに会った時、なんて綺麗な人だろうとは思ったけれど、一目で恋に落ちたかと言えばそんなことはなかった。あの時のリゼットは、不安と緊張でそれどころではなかったのだ。

 アルベールの方も、リゼットに特別な好意は抱かなかったはずだ。なにしろ結婚式の直後に、「君を愛することはできない」と宣言したくらいなのだから。


「初めはほとんど会話もなくて……」

「あら。では何がきっかけで仲良くなられたの?」

「きっかけは……」


 それははっきりしている。夜な夜なリゼットの部屋を訪れた黒猫アルとの交流だ。

 その可愛らしい姿を思い浮かべるだけで、リゼットの口元は自然と緩んでしまう。


「黒猫さんとのふれあいで――」


 言いかけて、リゼットは慌てて口を噤む。

 その黒猫の正体が実は夫アルベールで、そうとは知らずにもふもふしまっくった結果仲良くなれただなんて、友人相手と言えども説明できるわけがない。

 だが、猫好き仲間のセリアが「黒猫」の単語を聞き流すはずはなかった。


「まあ! シャトラン公爵邸では黒猫を飼ってらっしゃるのね!」

「えっ、いえ、飼っているわけではなくて……。あっ、住んではいるのですけど……」

「ん……? よく分からないのですけど、勝手に住み着いているということ……?」

「い、いえ、住み着いているのとも違っていて……」


 ますます首を傾げるセリアから視線を逸らし、リゼットは強引に話題を変えることにした。


「猫といえばセリア様、マカロンちゃんはお元気ですか? 確かお嫁入りされる時に連れて来られたのですよね? もし良かったらお会いしたいです!」

「あら、もちろんですわ! 久しぶりに撫でてやってくださいな」


 セリアの愛猫マカロンの話を振ると、セリアは上機嫌で話に乗ってきた。


「すぐに連れて来させますわね。それに、ふふっ、ちょっとしたサプライズもありますのよ」


 セリアの指示を受けて、メイドが一人、応接間を出ていく。

 まもなくメイドが、一匹の猫を抱きかかえて戻ってきた。光沢のあるブルーグレーの被毛に、エメラルドグリーンの大きな瞳。気品溢れるその猫こそ、セリアの愛猫マカロンである。


「お久しぶりです、マカロンちゃん。相変わらず美人さんですね……えっ⁉ わっ、わぁぁ……!」


 マカロンを抱いたメイドに続いてぞろぞろと入室してきた三人のメイド達。彼女達の腕の中を目にしたリゼットは言葉を失った。


少し長くなったので、前中後編で分けることにしました。

中編後編も今日中に投稿する予定です。


なお、今年10月からゼロサムオンライン(https://zerosumonline.com/detail/nekomede)にてコミカライズの連載がスタートしています!

漫画を担当して下さっているのは、まつ春先生。

本日、最新話の第3話が公開されたばかりで、今なら第1話から第3話まで無料でご覧頂けます(アプリDLや登録なども一切不要です)。

最高に可愛いリゼットと黒猫、そして麗しいアルベール(ただし時々挙動不審)を、ぜひご覧頂けたら嬉しいです♡

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