第八話【神の遊びと尻拭いと異世界転移】
「へっへっへー、コレでまたバランスが人間側に傾くぞ~♬︎」
ニヤニヤと笑いながら消えた三人を観察しているのは見た目は10代の少年だ、しかし上から下まで真っ白の少年は人間とは程遠い存在である。
「大体さ世界なんてぶっ壊して作り直してまたぶっ壊してってのが面白いんじゃん!ジジィ共は分かってねぇよ!ちょっと昔、地球の日本って所から転移させたり転生させるのが流行ってたし、強そうな奴居ないかなぁって思ってたのに居ねぇし、ダメもとで電脳世界? の方を覗いて見たら、なんか強そうな奴が居たから、アイツらに頑張って貰ってアッチのバランスぶっ壊して貰わなきゃな~」
そう言ってアハハハハと高笑いする少年の後ろから、同じ様に上から下まで真っ白の老人が現れ少年の首に手を掛ける。
「遂に禁忌に手を出したか、愚か者め…」
「ジ、ジジィ…」
「異世界からの魂の転送は歪みが生じる事は知っておるな?」
「な、なんの事だよ?」
「知らぬと思っておるのかこの愚物、禁忌に手を出した貴様をこれ以上生かす事は出来ん、ここで消えて少しでも傾いたバランスを戻すエネルギーになるのだな。」
「ざけんな! 俺はこれからあの玩具達で…」
白い少年がそう叫ぶも最後まで言い切る事無く老人によって消滅させられてしまう。
消えた少年の事を残念だと感じつつも先程まで少年が見ていた映像に目を向ける。
「三人も送っておったか… コレではまた人間の比重が重くなり最終戦争が起こってしまう… ん? これは… うむ、ここにおる者達で何とかバランスを取ってもらう事としよう。幸いこの者たちは地球の者達ではなさそうじゃし、所謂データのような物のようじゃしな…」
そう老人は言うとその場所から忽然と姿を消した。
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「成功だ! 聖戦士召喚が成功したぞ!」
そんな声で将は目を開く。目に入って来たのは見るからに西洋のお城のエントランスの様な場所と自分達を囲む甲冑を着た兵士と魔導師のような見た目のオジサン達、そして、貴族と思われるような華美な服を着た集団だった。
「何だ? イベントが始まったのか? メッセージウィンドウ… は出てない…」
「歓迎致しますぞ!異世界の聖戦士様方!」
将がイベントが開始した旨の通知があるはずとメッセージウィンドウを探すも見つからず、目線を動かしていると、抑揚に両手を広げ近づいてくるちょび髭のオジサンが目に入る。
「申し訳ありません、無礼を承知でお伺いします。ココは何処でしょう?」
「おお! 聖戦士様! ココはゼノギア国で御座います。この度、聖戦士様方には魔族共から我々の国を救って頂きたく古の術式を使い異世界よりこの世界にお越し頂いたのです!」
「まさかの異世界転移…」
ちょび髭のオジサンの言葉に絶句していると、その騒ぎにようやく他の二人も目を覚ます。
「何が起こったんだ…」
「んん… ここ、何処?」
「おお! そちらの聖戦士様方もお目覚めになられましたな!それでは、コレから説明をさせて頂きますので謁見の間へとお越しください!私めは陛下をお呼び致しますゆえ!おい!聖戦士様方を謁見の間へとお連れするのだ!」
ちょび髭のオジサンが周りで待機している甲冑を着た兵士にそう命令すると、オジサンはそそくさとエントランスから去ってゆく。
何が起こっているのか分からない二人と異世界転移に頭を痛める将は兵士に促され謁見の間へと向かうことになった。
案内を受け、謁見の間で待っていると、何やら怒鳴り散らすような声が近付いて来ていた。
「馬鹿者! 異世界召喚の秘術は世界のバランスを崩すから絶対にするなと、そう厳命しておっただろう!」
「しかし陛下!このままでは我々人間は魔族に良いように蹂躙されますぞ!」
「ソレをこの世界とは無関係の人間に丸投げし、責任を追わせる事を恥ずかしいと思わんのか!誰の決定だ!」
「ビ、ビセス宰相殿です!」
「あの腐れ宰相め!今度こそ爵位剥奪と流刑にする!今直ぐ奴を捕縛し地下牢に繋いでおけ!」
「は、はっ!」
そんなやり取りが聴こえ、国王はマトモそうな人で将は安心した。
「大抵の異世界転移、転生物の国王ってクズばっかだからな、国王陛下はマトモそうだ…」
将がそう独り言を零すと同時に謁見の間へ白いワイシャツと紺色のズボンを着た、見た目はとても王様には見えない、寧ろ休憩中のサラリーマンに見える金髪碧眼の40代の男性が現れた。
「このような格好ですまぬな、我が国の阿呆がそなたらに迷惑を掛けた事、まずは謝罪をさせてくれ。」
「えっと、あのー…」
元同級生の男が変な事を口走る前に、将は跪き片膝を立て頭を下げながら、目の前の見た目サラリーマンの国王に話しかける。
「陛下、許可なく口を開く無礼をお許し下さい。私はススムと申す者です。先程の方からココが異世界であり、我々は魔族と戦う為に召喚されたと聞きました。」
「う、うむ。」
「しかしながら、ソレは陛下の、いえ、この国の総意では無いと聞こえました。」
「う、うむ。」
「でありましたら、我々を元の世界に帰して頂きたく思います。」
「あー… それなのだがな…」
国王のなんだか申し訳なさそうな返しに将は不安になり、そんな将をメグミと元同級生の男は、取り敢えずココは将に任せようと静観する事にした。
「誠に言いにくい事ではあるのだがな… 実はだな…」
「成程… 呼び出す事は可能ですが、元の世界に還す事は出来ないのですね…」
「聡いな、その通りだ。重ね重ねすまぬ、謝っても許されることでは無いが術式が成ってしまった以上、ワシらにはどうすることも出来んのだ…」
国王のその返事に元同級生の男が立ち上がり叫ぶ。
「ススム! コレ、ゲームのイベントじゃねぇのか!?」
「はぁ… アチーブメント達成メッセージもメニューウィンドウも開かん。 つまりゲームの世界ではない。それ以上騒ぐな。」
「いやいや! ちょっと待てよ! んじゃ何か!? アイツらは勝手に俺らを誘拐しといて、それは部下が勝手にやった事だから仕方がないゴメンねって事かよ!」
「おい、貴様、相手は世界は違えど一国の主だ不敬罪で死にたいのか?」
「でもよ!ススム!」
「お前がココで喚いた所で事実は変わらん、ならば少しでもこの世界で生きやすい環境を作るべきだ。そんな事も分からんのかこの単細胞め。」
「んだと!」
「や、やめようよ… 皇君も羽堂君も…」
国王の目の前だと言うのに喚き出す元同級生の名前がスメラギだと聞いて「あ、そう言えばそんな苗字だったな。」等と将が零すと
目の前にいた国王が目を見開き将を見つめている事に気付いた。
「あ、陛下、申し訳ありません!頭を上げる許可を頂いていないにも関わらず無礼を!その上、騒ぎ立てた事御容赦下さい。」
「いや、良い… 良いのだ… それより、そなた、名を聞かせてくれるか?」
「私、ですか?」
「うむ…」
「で、では、恐れながら名乗らせて頂きます。性は羽堂、名は将と申します。」
将がそう名乗ると、目の前の国王は膝から崩れ落ち涙を流し始めた。
国王の突然の反応にどうして良いかわからず三人があたふたし始めると、国王は待機していた兵士に、将以外の2人を客室に案内するよう指示を出し、将と二人きりになれるようにする。
訳もわからず兵士に退室させられる皇とメグミ。メグミは残される将を心配そうに見つめながら部屋を退室させられた。
二人残った謁見の間。
将は未だにグズグズと泣いている国王にどうしたものかと悩みつつ、このままでは埒が明かないと、声を掛ける事にした。
「あの、陛下…」
「ススムよ… 羽堂 正蔵と言う名前に聞き覚えは無いか?」
「は? はっ! 正蔵は私の亡くなった祖父の名ですが、何故それを陛下が?」
「私の前世の名前だ…」
「…えっ?」
「大きくなったな… 将。」
「え… 爺ちゃん?」
「うむ。爺ちゃん、転生して国王やっとる。因みに婆ちゃん王妃な。」
「マジかぁ… 異世界転移よりも、そっちの方がビックリだわ…」
事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだが、これは奇を衒しすぎだと思い、将は何故こんな事になったのかと頭を痛めながら微妙な笑顔を国王に向けるのだった。
思いの外反応が芳しくないというのも有りますが
少し区切りの問題で6日分の更新は2話でお許しください。




